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マンションの洗濯物干し問題 風を有効に活用する裏技とは?

マンション

洗濯してもすぐに溜まってしまう洗濯物。マンションにお住まいの方にとって、ベランダでの洗濯物干しは毎日の悩みの種かもしれません。今回は、マンションのベランダを最大限有効に活用して、衣類やタオルなどを効率よく乾かす方法と、干す際の注意点をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

目次
1. マンションはベランダに洗濯物は干してもいいの? 知っておきたい使用時の注意点
2. 時短速乾のミソは「風」! ベランダでの効率的な外干し術
3. ベランダのスペース不足はこれで解消! 室内干し併用でさらに干せる!

マンションはベランダに洗濯物は干してもいいの? 知っておきたい使用時の注意点

ベランダ

マンションのベランダは、「専有部分」ではなく「共用部分」です。つまり、マンションにお住まいの皆様が共同で利用する部分であり、居住者専用のスペースではありません。そのため、ベランダに物を自由に置いたり、自らの判断で改変したりすることは、原則として制限されています。

●法律や管理規約で禁止されていること
消防法に基づく省令では、マンションにおいて火災などの緊急事態が発生した場合は、二方向の避難経路を確保することが義務付けられています。一つは、玄関の外の共用廊下を通って非常階段から避難するルート。そしてもう一つが、各戸のベランダを通って避難はしごなどを使い地上へ降りる避難ルートです。

もしベランダに物干し竿や植木鉢などを置いていると、避難はしごや避難扉が塞がれてしまい、火災発生時などに避難や消火活動の妨げになる懸念があります。そのため、多くのマンションでは、容易に移動できないものをベランダに設置することを管理規約で禁止しています。管理規約の細かなルールはマンションごとに異なりますので、「何を設置してはいけないのか」を必ず確認するようにしましょう。

また、高層マンションでは、一般的に管理規約で洗濯物の外干しが禁止されています。これは、強風で洗濯物が飛ばされ、通行人にけがをさせてしまったり、走行中の車に落ちて事故に繋がる危険性があるからです。さらに、高級感を重視するマンションでは、建物の外観を損なわないように、洗濯物のベランダ干しを規約で禁止しているケースもあります。

●例外的に使用が許されていること
国土交通省が公開している「マンション標準管理規約」には、「専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められない」と記載されています。
※参考:マンション標準管理規約(国土交通省)

ベランダは共用部分でありながら、「専用使用部分」という位置づけになっています。そのため、居住者がある程度の範囲で自由に使うことができ、物を置くことが全面的に禁止されているわけではありません。
ただし、緊急時の避難経路を確保するため、避難ハッチの周辺や防火扉の前には物を置いてはいけません。また、マンション大規模修繕工事の際には、ベランダにある物をすべて片付ける必要がありますので、撤去できないものは設置しないようにしましょう。

洗濯物については、まずマンションの管理規約で「外干しが禁止されていないか」を確認してください。管理規約に違反すると、トラブルが生じる可能性があり、注意が必要です。

もし外干しが禁止されていなければ、風で洗濯物が飛ばされないように洗濯バサミなどでしっかりと固定するなど、安全に配慮して干すようにしましょう。

※ベランダについては、こちらの記事もご覧ください。
マンションの屋外空間の呼び名、ベランダ・バルコニー・テラス、違いは何?

時短速乾のミソは「風」! ベランダでの効率的な外干し術

ベランダ

マンションの限られたベランダ空間で、洗濯物を効率よく乾かすにはちょっとした工夫が必要です。時短乾燥のポイントは、風の力を最大限に活かすことです。それでは、ベランダでの外干しをより効率的にするための具体的なポイントを見ていきましょう。

●風の通り道をつくる:洗濯物の適切な相互間隔の確保
つい、狭いベランダにたくさんの洗濯物を詰め込みたくなりますが、それでは風の循環が滞り、乾燥効率は著しく低下してしまいます。まるで都市計画における風の道のように、洗濯物相互間に意識的にスペースを設けることが、効率的な乾燥への第一歩です。ハンガーホルダーなどを活用すれば、一定の間隔を保ちやすく、風がスムーズに通り抜ける「風のプロムナード(遊歩道)」をベランダに作り出すことができます。

●生地の重なりを最小限に
洗濯物の生地が重なる部分は、風が通りにくく、なかなか乾きません。特にバスタオルやシーツのような面積の大きなものを干す際は、あえて長さをそろえずに干すことで、生地の重なる部分を減らし、風がより多くの面に触れるように工夫しましょう。

衣類についても同様です。例えば、パーカーのフードをピンチハンガーで持ち上げて空間を作ったり、ワイシャツやポロシャツの襟を立てることで、生地の接触面積を減らし、風通しを向上させることができます。このような少しの工夫で、空気の流れに気を配ることが、乾燥時間の短縮につながります。

●「タオルを振る」は理にかなった乾燥法
吸水性が高いタオルは、干す前に数回振るという単純なアクションが、時短速乾に寄与します。遠心力で余分な水分を飛ばすだけでなく、洗濯と脱水で寝てしまった繊維を立たせ、タオルの表面積を増やし、通気性も向上します。その結果、風が繊維の奥まで届きやすくなり、ふっくらとした仕上がりになるのです。振り回すという単純なアクションが、実は繊維素材の特性をよく理解した乾燥法といえるでしょう。

●アーチ状のピンチハンガー活用術
ピンチハンガーを使用する場合は、アーチ状に干すことを試してみてください。両端に丈が長いものを、中央に向かって徐々に丈が短い物を干すことで、ベランダに自然な風の流れを生みだしやすくなります。両端の長い衣類に風を受け止め、アーチ下部の空間を風が通り抜けることで、全体が効率よく乾きます。洗濯物の配置もまた、乾燥効率を左右する重要な要素なのです。これらの工夫は、単に洗濯物を早く乾かすだけでなく、限られたベランダという空間を最大限に活用するための、知恵と言えるでしょう。ぜひ、日々の洗濯に取り入れてみてください。

ベランダのスペース不足はこれで解消! 室内干し併用でさらに干せる!

前項で、洗濯物の乾燥効率を高めるためには、第一に風通しの確保であることをお伝えしました。しかし、マンションのベランダスペースには限りがあり、洗濯物の適切な相互間隔を保ちながら多くの量を干すのは、現実的には難しい場合があります。このようなときは、室内干しを上手に組み合わせることで、より多くの洗濯物を効率的に乾かすことが可能になります。

●天気によって外干しと室内干しのバランスを変える
天気がよい日や気温が高い日は、厚手の衣類や寝具などをベランダでしっかりと外干しし、比較的に薄手の衣類を室内に干すという使い分けが有効です。一方、天気が心配な日は、厚手の物の洗濯を避け、はじめからすべて室内干しにしておけば、せっかく洗濯した物を雨で濡らすリスクを回避できるため安心です。また、近所にコインランドリーがあれば、適宜活用することも有効です。

●室内干しグッズを活用する
特に梅雨時期や夏季は、室内の湿度が高くなりがちな時期の室内干しは、生乾きの原因となるだけでなく、気になる臭いを発生させる原因となることもあります。そこで重要となるのが、室内の空気の流れを積極的に作り出すことです。エアコンの除湿機能や、扇風機、サーキュレーターなどを活用し、室内に「風の流れ」をつくることで、洗濯物の水分を効率的に蒸発させることができます。
また、限られた居住空間において、洗濯物の干し場所の確保は重要な課題です。カーテンレールを活用した室内干しは、カーテンへのカビ発生やカーテンレールが壊れたりするリスクを伴い、推奨できません。最近では、折りたたみ式のスタンドタイプ、天井や壁面を有効活用できる突っ張り棒タイプ、壁に取り付けるワイヤータイプなど、多様な室内物干しグッズが登場しています。お住いのマンションの居住スペースやライフスタイルに合わせて、最適な室内干しツールを選んでみてください。

■おわりに
今回の記事では、マンションにおける洗濯の悩みを解消し、より快適な毎日を送るためのヒントをご紹介しました。まずは、お住まいのマンションの管理規約を確認し、ベランダでの洗濯に関するルールをしっかりと把握することから始めましょう。その上で、洗濯物を効率よく乾かすための基本である「風の道」を意識し、外干しと室内干しを上手に組み合わせるのがおすすめです。
そして、室内干しをより快適にするための頼れるアイテムたちも積極的に活用してみてください。サーキュレーターや除湿機、省スペースで使える物干しなど様々な便利なグッズが登場しています。
マンションでの洗濯は、ちょっとした工夫とアイデア次第で、ぐっと快適でスマートなものに変えられます。今回ご紹介したヒントを参考に、自分らしい快適な洗濯スタイルを見つけてください。

■あわせてお読みください。
マンション部屋干しのポイント〜干しかた編〜
いやなにおいにさようなら。部屋干しのポイントは?
マンション部屋干しのポイント〜お洗濯のしかた編〜
マンションの屋外空間の呼び名、ベランダ・バルコニー・テラス、違いは何?
カメムシがマンションで大量発生? カメムシの発生時期と産卵、いつ、どこに?


■この記事のライター
□熊谷皇(くまがいこう)
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境工学(温熱環境、省エネルギー)。国土交通省住宅の省エネ基準検討WG委員、日本産業規格JIS A 9521(2017)技術コンサル、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校の講師を歴任。日本建築ドローン協会(JADA)WG委員。

(2025年5月26日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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