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複雑な立地環境の歴史ある建物「中野ブロードウェイ」、高評価を得た大規模修繕とは

大規模修繕
※この原稿は、2014年12月に建装工業が発行した広報誌「MLだより Vol.17」に掲載された記事の内容を再編集したものです。

目次
1. 日本初の複合施設「中野ブロードウェイ」
2. 複雑な立地環境が持つ問題を解決
3. 入念な仮設計画が導いた「満足ある結果」
大規模修繕

1. 日本初の複合施設「中野ブロードウェイ」

中野ブロードウェイという建物をご存じでしょうか?

昭和41年に誕生した商店と住宅を有する日本初の複合施設で、東京都中野区のJR中野駅から続く商店街から早稲田通りまで、通路を通す形で建設されました。本館建物は地下1階、地上10階建て、全長140m・幅45m、地下1階から地上4階までが商業施設、5階から10階までが住宅となっており、別館としてタワー式駐車場も有しています。

かつては著名人らも居住し、青島幸男氏がここの5階会議室で都知事会見をするなど、歴史を重ねた建物です。時代とともに、店舗出店者の高齢化などから店舗の閉店が相次ぎ、しだいに集客力を失っていきましたが、その後、中古漫画やアニメグッズなどを扱う店が入居し、少しずつ地域文化に溶け込み、拡大していきました。現在は、「オタクビル」や「日本の九龍(クーロン)城」などの異名を持つサブカルチャーの聖地として国内外に知られるようになっています。

居住地としても、中野駅から徒歩5分の好立地に加え、屋上には居住者専用の庭園やプールもあり、高級マンションとしても高い入居需要を維持しています。

この中野ブロードウェイでは、2014年2月から半年をかけ、17年ぶりの大規模修繕工事が行われました。工事は非常に満足できる結果となり、管理組合法人から施工会社に表彰状が授与されました。
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2. 複雑な立地環境が持つ問題を解決

年数を重ねた建物であることから、中野ブロードウェイ管理組合法人はこれまで何度も大規模修繕を経験していますが、施工会社を表彰したのは今回が初めてでした。工事の内容が大きく評価されたわけですが、その理由として「歴史ある建築物と周辺環境のなか、諸問題に柔軟に対処した」ことがあげられています。

今回の大規模修繕工事は、同建物が築48年を迎え、前回の改修工事から17年が経過したなかでのことでした。塗装や下地の傷みの激しさは予想のうちでしたが、施工会社にとって最も問題となったのが本工事のための資材搬入方法と足場組み立てを主とした仮設計画です。

中野ブロードウェイは三方を飲食店街に囲まれ、そのうち二方は人が入れないほどに接近しています。唯一の搬入経路となるメインエントランスは交通量が非常に多い早稲田通りに接しており、そこからの建物の奥行きは約150mにもなります。加えて、ブロードウェイには約400の店舗があり、この店舗の日中の利用客や、周辺の歓楽街に夜間に集まる人々の通行量も加味しなければなりませんでした。

これは、施工会社にとっては過去に例を見たことのないほど困難な立地条件と周辺環境でした。そのため、入念に仮設計画を練る必要があり、着工までの準備期間に4ヵ月を費やして、安全で確実な工事を遂行するための検討を繰り返しました。

【工事概要】
・工事名 ブロードウェイ大規模修繕工事
・発注者 管理組合法人ブロードウェイ管理組合
・工期  平成26年2月〜平成26年8月
・工事概要 下地補修工事
      シーリング工事
      外壁・鉄部塗装工事
      防水工事
      各種金物等補修工事
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3. 入念な仮設計画が導いた「満足ある結果」

その結果、通常のマンション改修では行われない方法で足場を組み立てることになりました。採用されたのは、住居エントランスと商業施設入口が配置されている北側にH形鋼でステージを組んで、その上から足場と荷揚げ用エレベーターを設置するというものです。以前の改修工事では、足場の組み立てに関する苦情が寄せられましたが、この方法はその問題を解決するものでもあり、管理組合法人はこの点を高く評価しました。

また、ブロードウェイの屋上に資材を揚重するには、隣接するビルを越えて行う必要があったことから、小型ながら大きく伸縮し懐の深い特殊なラフタークレーンの使用が求められました。そこで選ばれたのが、関東に1台しかない、最大揚程47m・作業半径32mといった機種でした。

さらに、建物南側の塗装面の劣化も目立っていたため、ゴンドラの吊り方にさまざまな工夫を加え対応しました。
大規模修繕
このように、工夫を凝らし入念に練った仮設計画が今回の大規模修繕工事の成功のポイントになりました。発注者である管理組合法人の評価は、「ここまでやって施工会社は採算が合うのかと思ったほど」というものでした。完璧な仕上がりに非常に満足できる結果となりました。施工会社としても、この結果は大きな自信につながりました。今後はアフターメンテナンスを万全にこなし、引き続き満足ある結果をお届けしていくことが、発注者にとっても施工会社にとっても重要になります。


《この記事のライター》
舘林 匠
北海道出身 飛行機の整備士を目指し、日本航空学園千歳校を卒業後なぜか建築の道へ。
一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士、宅建士をはじめ25の資格を有し、
バイク、ダイビング、DIY、料理など多趣味でちょっと飽きやすい性格。
最近はドローンにはまりプライベート機を3機保有している。
KENSO Magazine編集長 兼 ライター

(2019年4月1日記事更新)

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