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日本最古の管理組合支援団体 NPO日本住宅管理組合協議会に聞く 管理組合がこれから目指すべきもの

NPO日本住宅管理組合協議会
「NPO日住協」の略称で知られている、特定非営利活動法人 日本住宅管理組合協議会(以下、NPO日住協)は、日本で最古の管理組合の支援団体です。
今回は、NPO日住協の活動内容の詳細や管理組合の現状、そして今後について、川上湛永会長と上地光男理事長にお話を伺いました。
(聞き手:KENSO Magazine編集部 [リボンハーツクリエイティブ株式会社])

特定非営利活動法人 日本住宅管理組合協議会
川上湛永 会長(写真右)
上地光男 理事長(写真左)

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目次
日本のマンション管理の方向性に影響を与える存在に
大規模修繕工事の仕組みを確立。今後も居住者と業界の良い関係づくりに貢献を
「自立」した運営姿勢が管理組合を強くする
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日本のマンション管理の方向性に影響を与える存在に

――NPO日住協の成り立ちを教えてください。

上地:当協議会の設立は昭和44年10月のことです。当時の旧日本住宅公団分譲の団地でベランダの落下事故や頻繁な漏水といった問題が起こりはじめ、居住者から放ってはおけないという声が上がるようになりました。当時のサラリーマンにとって分譲マンションを手に入れることは夢である一方で、それを提供する業界側の体制や建築技術はまだまだ未熟だったのです。

川上:一つひとつの管理組合では立場は弱いままですが、団結することで欠陥マンション問題にも立ち向かうことができます。そこで、東京・神奈川・千葉・埼玉県内の管理組合の有志が集まり、消費者の立場で交渉を重ねて問題解決に当たったのが始まりです。日本における先駆けで、以来、半世紀の間、リーマンショックなど苦しい時期もありつつ、自主性を持ち、会員の管理組合や業界のさまざまな企業に支えられてきました。

――現在、会員数はどのようですか。

上地:管理組合数は140弱ですが、戸数では3万戸以上となっています。全国規模の団体である全国マンション管理組合連合会(全管連)には20団体が所属しておりますが、その中でNPO日住協は大規模な団地のウエイトが高いことを特徴としています。他の民間分譲の管理組合が平均40戸なのに比べ、NPO日住協の会員管理組合は平均260戸という規模になります。

それというのも、東京には日本のマンションの4分の1があるといわれます。そうした首都圏にあるという意味では、NPO日住協が日本のマンション全体の方向性に影響を与えることもあるでしょう。大きな責任を感じます。
NPO日本住宅管理組合協議会

大規模修繕工事の仕組みを確立。今後も居住者と業界の良い関係づくりに貢献を

――この50年で、マンション管理はどのように変わってきたでしょうか。

上地:近々ではアスベスト問題が再燃しておりますし、今後は民泊利用の増加に伴い、管理上の問題が出てくるでしょう。大きな課題としては、大規模修繕にあたっての不適切なコンサルタント問題があり、NPO日住協としては、居住者にとっての不本意かつ不利益な行為から守るため、啓発に努めております。また、管理組合の運営サポートも活動の大きな柱です。

たとえば、理事会の運営も年1回の総会だけでなく、日頃から回覧板やアンケート、WEBサイトなどを通じて情報開示や居住者からのヒアリングを行うなど、さまざまに取り組まれている管理組合の事例が、NPO日住協には蓄積されています。それらを活かしてアドバイスを実施しています。

川上:理事会はマンション管理運営の基本であり、エンジンというべきものですが、昨今は居住者の高齢化もあり、以前にも増して理事のなり手がおらず、どちらの管理組合でも課題となっています。本来は10〜13戸に1人は必要ですが、引き受けていただけたとしても高齢で、実動できるのは一部の理事のみということが少なくありません。そのような中でも、総会と違って議決を行わない「住民説明会」などを適宜開催することで、住民同士のコミュニケーションを活性化できている例などがあります。

また、大規模修繕工事の際は、最初に工事説明会は行いますが、修繕の進行とともにいつの間にか工事を終えているものです。しかし、工事中にもコンサルタント会社、施工業者、住民の3者の意見交換会をもつと、トラブルや不信、不満を防ぎながら工事を進めていけます。こうした運営上のノウハウやヒントを、多くの管理組合にアドバイスできればと思っております。
NPO日本住宅管理組合協議会
――そうした啓発や支援は、NPO日住協の重要な役目ですね。

川上:そもそも「大規模修繕工事」というものを提唱したのはNPO日住協であると、われわれは自負しているのです。今から40年ほど前、NPO日住協発足から10年くらいですが、ベランダの落下や大雨の後の漏水などが多発した当時は、旧住宅公団も塗装や防水の技術レベルが未熟でした。そこでNPO日住協が、優れた技術をもつ施工企業を、建装工業もその一つですが、そうした方々を集めて勉強会・研究会を行っていきました。それが原点となって、日本のマンションにおいて大規模修繕工事が確立したのです。今後も、良い施工企業の方々に育っていただけるような仕掛けに注力していきたいと思っております。

上地:豊富な経験値がわれわれの力です。居住者利益を最優先に考えながら、施工企業や設計・コンサルタントもともにハッピーな形を目指して、持続可能な良い関係を作っていくことが大事です。特に近年はその思いを強くしていますね。

「自立」した運営姿勢が管理組合を強くする

――NPO日住協が50周年を迎える今だからこそ、でしょうか。

上地:そうですね。団体創立日の10月18日に祝賀記念式を計画していますが、会員管理組合をはじめ、さまざまな形で貢献してくださった方々や企業の顕彰も予定しております。そのほか、記念誌の発刊や、マンション居住に関するエッセイや写真の公募も行なっています。50周年のシンボルマーク思いを込めながら活動を行い、次の50年に向けて思いを新たにしています。

特に今、打ち出そうとしているのが、管理組合の「自立」という考え方です。消費者が一方的に不利益をこうむる被害者のように思われがちですが、自主的、自立的な考えをもって管理組合を運営していれば、不適切なものに付け込まれるリスクも低減できるでしょう。そうして、優れた施工企業や管理会社と率先して良い関係を築けるような環境づくりに、NPO日住協として貢献していきたいと考えています。

個々の管理組合にお伝えしたいのは、マンションの管理運営というと負担に思われるかもしれませんが、ご自分の財産を守っていくことを起点に考えればよいと思うのです。億劫、面倒、無関心では、知らぬ間に不本意な方向にもっていかれかねません。誰かがやってくれるだろうという考えではなく、管理組合の「自立」した姿勢を示すことで、自分を含めた居住者全員の財産を守ることにつながるのです。

川上:マンションも、建物自体の老朽化や住民の高齢化、認知症などの問題、地域との関わりなど、さまざまな課題を抱えています。ですが、一人ではできなくても集まればできるというのがNPO日住協の出発点であり、原点です。皆で知恵出し合い、これから来る難局を連帯して乗り切って、自立を基本に置きながらやっていきたいですね。まだ、ほんの半世紀です。100周年に向けて、さらに努めてまいります。

(2019年4月1日記事更新)
NPO日本住宅管理組合協議会

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