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どうなる修理費の負担。マンションにおける責任分界点とは?

マンション 責任分界点

マンションでは共用部分と専有部分が混在しているため、責任問題が生じることがあります。特に排水管の責任分界点は建物や管理組合規約によって異なり、発生場所によって保険適用範囲や修理負担が変わるため、知っておくことは大切です。
今回は、責任分界点について詳しく説明し、補償に深く関わるポイントを紹介します。
また、2021年に改正された「マンション標準管理規約」におけるマンションの配管の修繕に関する変更点についても解説します。

目次
1. 維持管理や修理、保険、補償に関わる責任分界点とは
2. 排水管は誰のもの? 建物ごとに異なる、排水管の責任分界点
3. マンション標準管理規約の改正で専有部分の配管も修繕の対象に?

維持管理や修理、保険、補償に関わる責任分界点とは

マンションの維持管理には「自分が行うべき範囲はどこまでか?」といったことや「不具合が発生した場合の費用負担は誰が担当するのか?」などの疑問が生じます。マンションでは共用部分と専有部分が混在しており、排水管の責任分界点などは建物や管理組合規約によって異なります。不具合が発生した場合の保険適用範囲や修理負担などにも影響するため、責任分界点を把握することは重要です。そこで、まずは、所有の区分である『共用部分』と『専有部分』、責任の所在を分ける『責任分界点』について説明します。

●共用部分と専有部分
マンションには、共用部分と専有部分があります。

共用部分とは、各住戸の所有者が共同で使用する部分のことを指します。一般的には、廊下やエレベーター、階段、駐車場など、居住者が共同で使う箇所が含まれます。責任の所在は管理組合にあり、修理費用も管理組合が負担します。
一方で、居住者が専有すると思われがちなドア(外側)やインターホン、窓ガラス、バルコニーなども共用部分に該当します。さらに、法定共用部分には電気配線も含まれます。

専有部分とは、区分所有者それぞれが単独で所有している部分で、住戸の内部空間が該当します。専有部分は、住戸所有者の所有物であり、責任の所在は区分所有者にあり、修理費は区分所有者が負担します。なお、バルコニーや専用庭、専用の駐車場は居住者が専有部分のように使うことができますが、これらは共用部分です。

●責任分界点とは
責任分界点とは、建物の所有者と住戸所有者が、維持管理、設備の修理、保険・補償などについて、それぞれが負う責任の範囲を定めたものです。
一般的に、給水管やガス管、電気配線においては、各住戸のメーターは各企業の所有であり、共用の給水管である給水立管からメーターまでが共用部分、メーターより先の部分が専有部分として扱われます。

※トイレに紙を大量に流してしまったというような、明らかに居住者の過失や故意が認められるものは責任分界点に関わらず居住者の負担となる場合もあります。

排水管は誰のもの? 建物ごとに異なる、排水管の責任分界点

マンション 責任分界点

排水管は床下に設置されているため、専有部分ではないと思われがちですが、マンションの構造によっては専有部分に該当する場合もあります。排水管は劣化や不具合を容易に発見することができないため、注意が必要です。
マンションにおける排水管の共用・専有の区分は建物ごとに異なります。一般的には、構造躯体コンクリートで構成された「床スラブ」が境界となることが多く、その排水ルートによって区分が決定されます。

昨今マンションでは、縦方向に設置されている共用の排水管(立管)から分岐した横方向の排水管(横引管)が「床スラブ」の上を通っていることが一般的です。そのため、横引管は専有部分として扱われます。

一方、古い建物では、共用の排水管(立管)から分岐した排水管(横引管)が「床スラブ」の下を通る「スラブ下配管」というタイプがあります。この場合、立管から分岐した排水管(横引管)はコンクリートスラブを突き抜けてシンクなどの設備へと通じており、コンクリートスラブ下の部分は共用部分として取り扱われます。

一般的に、床スラブ下の配管は一般的には共用部分と判断されます。共用の排水管(立管)から枝分かれしている部分は、居住者が使用する部分ですが、床スラブ下配管の場合、コンクリートスラブに埋め込まれている排水トラップや立引鋳鉄トラップなどは共用部分として取り扱われます。また、コンクリートスラブに埋め込まれていない床スラブ上の排水トラップ、防水パン、浴室に施したモルタルなどの防水処理から上は専有部分として取り扱われます。

マンション 責任分界点

マンションにおいて、排水管の共用部分と専有部分の判断は、床スラブ上配管か、床スラブ下配管によって異なります。ただし、管理組合の規約もまた、マンションごとに異なるため、最終的にはお住いのマンションの管理規約を確認する必要があります。

マンション標準管理規約の改正で専有部分の配管も修繕の対象に?

マンション 責任分界点

排水管など床下にある部分は、普段は目に見えない場所であり、そのため劣化や水漏れの兆候に気づきにくい場合があります。しかし、実際に詰まりや水漏れなどが発生すると、上下階の居住者間で深刻なトラブルを引き起こす可能性があります。したがって、定期的な点検やメンテナスが必要となり、管理組合が主体となって高圧洗浄などを行う場合があります。この場合、「共用部分と構造上一体となった部分」として取り扱われ、費用は管理組合が負担することが一般的です。

また、2021年に改正されたマンション標準管理規約では、専有部分と共用部分の配管更新(取替)工事が修繕積立金による拠出で一体的に行えるようになりました。これにより、管理組合がより効率的に配管更新(取替)工事を進めることができるようになりました。

ただし、中には専有部分の排水管を既にリフォームした居住者がいるかもしれません。その場合は、管理組合との調整が必要になります。具体的には、リフォーム済みの排水管をそのまま使用するか、または管理組合が行う配管更新(取替)工事に合わせて改修するかなどの判断があります。
このため、改正標準管理規約では、共用部分と専有部分の配管を同時に交換することについて、長期修繕計画に記載することや管理規約の修繕積立金に関する規定を追加することが定められています。また、自費で修繕した区分所有者に対しては、管理組合が定めた条件で補償するなど、十分留意する必要があることも示されています。これにより、区分所有者が自主的に排水管などの修繕を行った場合でも、管理組合とのコミュニケーションを通じて、公平な対応が期待しやすくなりました。

これから区分所有者が自主的に排水管などをリフォームする場合は、管理組合に事前に報告するなど、管理組合とのコミュニケーションを密にすることが、より大切になりますのでその点にはご注意ください。

今回は、マンションの共用部分や専有部分、そして『責任分界点』についてお伝えしました。普段は目に入らない床下の排水管については、多くの人が「共用部分で自分には責任がない」と思っているケースが多いかもしれませんが、建物の築年数や管理組合の規約によって責任の所在は異なります。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。
マンションの管理や修繕に関する知識は、快適なマンションライフを送るために欠かせません。KENSO Magazineではこれからも役立つ情報を提供できるよう努めてまいりますので、引き続きよろしくおねがいいたします。

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■この記事のライター
熊谷 皇
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。建築環境工学(温熱環境、省エネ等)を専門とする技術者。国土交通省 住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校等の講習会講師、日本建築ドローン協会(JADA)のWG等の委員を歴任。

(2023年10月2日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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