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マンション管理計画認定制度 認定取得のポイントとは? 全国初の認定を受けた高島平ハイツ管理組合に伺いました。

マンション管理計画認定制度

【高島平ハイツ 建物全景】

マンション管理適正化法の改正・施行により2022年4月から始まったマンション管理計画認定制度において、東京都板橋区の高島平ハイツが2022年6月16日に全国初の認定を受けました。高島平ハイツ管理組合にインタビューし、取得までのポイント等を伺いました。
(聞き手:建装工業 MR業務推進部 吉田秀樹)

目次
1. 高島平ハイツの概要
2. 建装工業とのかかわり
3. 管理計画認定制度の取得までの道のり
4. マンション管理計画認定を受けて感じているメリット
5. 管理組合としての課題や解決方法
6. 最後に

1.高島平ハイツの概要

管理組合名称 高島平ハイツ管理組合
建物構造 SRC(鉄骨鉄筋コンクリート) 造
総戸数 95戸
竣工年 1974年12月竣工(築48年) ※2022年7月時点
所在地 東京都板橋区高島平9丁目21-1
交通 都営三田線 「高島平」駅 徒歩5分
取材日 2022年6月30日

高島平ハイツはマンションや戸建住宅の建ち並ぶ落ち着いた閑静な住宅街で、北側には新河岸川の流れる水と緑に触れあえるロケーションに位置します。最寄り駅の都営三田線の高島平駅まで徒歩5分と快適なアクセスとなっています。竣工は1974年12月で築48年、地上9階建てで総戸数は95戸となります。敷地内には手入れの行き届いた植裁や駐車場・駐輪場があり、1階住戸は専用庭付きとなっています。
インタビューは、※1前理事長の篠原 満 さんに伺いました。篠原さんは、現役時代大手ゼネコンに勤務され東京湾横断道路の海底トンネル工事に携わっていたそうです。そんな関係で書類の作成や整理はお手の物でマンションの書類整備は全部ご自身でなさったとの事でした。

1 2022年5月定時総会で理事退任。現在は大規模修繕委員長と規約等検討委員を兼務。

マンション管理計画認定制度

【インタビュー風景 左:前理事長の篠原さん、右:建装工業 アフター担当佐藤さん】

2.建装工業とのかかわり

高島平ハイツ管理組合は大規模修繕工事を今まで4回実施しておりますが、建装工業は2007年の第3回目と2019年の第4回目の大規模修繕工事を実施致しました。現在アフターメンテナンスの一環として、第4回大規模修繕工事の3年目の定期点検の実施中となっています。
2022年3月26日(土)に建装工業が自社で大規模修繕工事を行ったマンションにお住いの方々を対象に「マンションセミナー」というセミナーを実施致しました。そのなかで、建装工業 吉田が「管理計画認定制度とマンション管理適正評価制度の紹介」という講演を行いました。篠原さんはそれに参加して管理計画認定制度を知ったそうです。

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【館銘板と光り輝く認定マンションのステッカー】

3.管理計画認定制度の取得までの道のり

[前理事長の篠原さん談]
2022年4月初めに板橋区から管理計画認定制度の案内書が届きました。5月15日の定時総会後の17日、板橋区都市整備部住宅政策課に管理規約、長期修繕計画書、その他書類の保管状況が確認できる写真を持って下打合せにお伺いしました。その場で認定基準チェックリストに沿ってチェックをしていただきました。
最近は管理規約がなく総会や理事会を開催していない、議事録等の記録がない、長期修繕計画の作成・見直しが行われていない、管理組合の経理が適正に行われていない、修繕積立金の滞納額が多い等、管理不全のマンションが増加しているなかで、築50年近いマンションとは思えないくらい極めて適切な組合運営と書類の保管を行っているマンションがあったことに驚かれ、まさしく国が求めているマンション管理を実践していると高評価を受けました。

5月25日、認定を受けるべく板橋区に正式に申請書を提出しました。板橋区の申請基本手数料は26,300円です。管理計画認定の申請パターンは管理会社かマンション管理士に依頼する方法等様々な方式がありますが、当マンションは※2自主管理してきた経験を踏まえ管理組合が直接申請しました。なお、申請の条件として、総会での議決が必要ということがあり、5月15日の定時総会で管理計画の認定申請について承認は得ていたものの、議案として取り上げていなかったことから、急遽6月12日正規の手順を踏んで臨時総会を開催して決議し、区分所有者の承認を得ました。翌日、添付書類の再提出ということでその議事録を提出し6月16日全国で第1号マンションとして認定通知書が交付されました。

2 区分所有者の高齢化により、15年前より管理員業務と収納会計業務を一部管理会社に委託している。

管理規約・長期修繕計画・総会議事録等は下写真のとおり全てファイル化してキャビネットに格納してあります。

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【管理組合事務所 書類キャビネット状況】

[前理事長の篠原さん談]
マンション管理適正化法改正の施行と同時に4月1日から制度を実施する地方公共団体が少ないなかで、東京都板橋区は独自の認定基準を定め4月1日からの導入を公表しています。全国第1号の認定を受けることができたのは、当マンションが板橋区域にあったことと区の担当者が認定に向けて積極的に取り組んでいただけたことだと強く感じています。認定にあたって問題がありそうなところは事前に国と相談し確認していただきました。

長期修繕計画は、昨年9月の国交省のガイドライン見直しに伴い「既存マンションの長期修繕計画期間は、2回の大規模修繕工事を含む30年以上」にあわせて、申請とは関係なく昨年12月に作成し、5月の定時総会で承認を受けたところで、幸運にも恵まれました。

管理規約及び細則等は平成26年に改定したものですが、居住者名簿や区分所有者名簿、要介護者名簿を作成し、個人情報保護法に基づききっちり管理しています。また、管理費の滞納率も評価ポイントにありますが、当マンションでは滞納率がゼロで全く問題ありませんでした。板橋区には、申請について10数件の問合せがあったと聞いていますが、書類が全て揃っていたのは、当マンションだけとの事でした。

4. マンション管理計画認定を受けて感じるメリット

板橋区の制度の案内文書には、認定を受けるメリットは以下のように書いてあります。
・区分所有者のマンション管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなる
・一定水準以上の管理がされているマンションとして、広く公表されることで、市場において評価され、資産価値の向上が期待できる
・一定水準以上の管理がされたマンションが存在することで立地している地域評価の維持向上につながる
・住宅金融支援機構の「フラット35」及び共用部分リフォーム融資の金利の引き下げ等を受けることができる

今回認定を受けて感じた最大のメリットは、今まで自主管理で運営してきた管理方法が間違っていなかったことが確認できたことと、高齢化に伴い理事長の成り手が少なくなってきている現状で、次世代の理事の方々の管理意識が高く保たれ管理水準の維持がしやすくなると思われることです。市場における資産価値の向上や地域評価の向上は管理組合側にとっても喜ばしいことですが、それはあくまで管理会社や消費者側の視点ですので、終のすみ家と考えている者にとっては、個人の固定資産税が下がることやマンション総合保険の掛け金が下がることに期待しています。

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【認定通知書 0001−01号!】

5.管理組合としての課題や解決方法

[前理事長の篠原さん談]
(1)理事の選考方法の改善について
理事の選考方法について不公平感があり、改善のため「規約等検討委員会」を設置し検討を行っています。
現在理事会は9階建ての各階から1名ずつ輪番制で選定した9名の理事で運営しています。理事は80歳定年制をとっているので、80歳以上の方が多いフロアーは回ってくる順番が早くなり、各階ごとにアンバランスが生じてきています。そこで、全95戸を1グループの背番号制とし。輪番制で6名、立候補又は推薦で3名の計9名にする方向で検討を進めています。理事経験者を有効に活用することによって理事会の活性化が図れることも期待しています。

(2)単身高齢者の支援
当マンションでは10年前から高齢者の1人住まいの方を対象にした独自の制度、『元気です。』というシステムを細則で定め運用しています。これは登録した本人が毎日管理員に顔を出し元気の確認をする制度です。管理員への顔出しが無ければ、2日目には管理員がお宅を訪ねピンポンし2日目も会えなければ、3日目に事前に届けている緊急連絡先に連絡をする見守り制度です。関係者の方からは感謝されております。今後ますます高齢化が進むなかで、管理組合として更に何かできることはないか検討を始めました。

(3)修繕積立金と修繕工事のコスト削減
平成4年から修繕積立金の額を値上げしないで、大規模修繕工事を12年毎に定期的に実施し、そのほかにもエントランス改修工事、バリアフリー工事、ペアガラス交換工事等も実施してきました。これらの工事はすべて管理組合主導で行っています。予算書の作成から見積り依頼業者の選定、施工業者の技術提案とヒアリング等を実施して競争原理を働かせて業者選定を行ってきたことが修繕工事費の大幅な削減につながったものと考えています。今後世代交代が進み、本マンションの生き字引のような方々が引退し、管理組合主導で修繕工事を実施できなくなることを懸念しています。

(4)建物の終焉について
昨年12月から、建物の建替えに関する勉強会を立ち上げました。持ち出しなしのマンション建替えは現実的には困難と考えられますが、当面は本マンションの寿命を80年と設定し、次世代のために解体費用の約2億5千万円を確保すべく修繕積立金の中から積立を開始しました。

6.最後に

[前理事長の篠原さん談]
6月16日の国交省HPで「高島平ハイツ」が第1号に認定されたことが公表されました。
公表後、NHKの首都圏ネットワークや日本経新聞社、マンション管理新聞等の取材を受けましたが、比較的認定を取得しやすいとされていた「築浅」ではなく高経年マンションが第1号に認定されたことがマンション業界や管理会社業界で話題になっているとのことです。
私たちは日頃からマンション管理運営を管理会社任せにせず、自主管理できちんとやってきましたので、国の17項目の評価項目と板橋区独自の11項目の上乗せ基準も、そんなに高いハードルとは感じませんでした。全国約686万戸の数ある既存マンションの第1号認定という名誉にあずかったのも、歴代の理事の方々や関係者の管理組合活動に取組む姿勢とご尽力が評価されたものと感謝しています。
これからは、第1号認定に恥じないように適切な維持管理を維持していきたいと考えています。
そして、本マンションの区分所有者と居住者の方々が、マンションライフを満喫できるように尽力する所存です。

■あわせてお読みください。
・マンション管理を見える化! 2つの新制度「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」の違い
・マンション管理組合と自治会の違いとは
・マンション管理会社はどう選ぶ? その見きわめポイントは?


■この記事のライター
吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2022年7月25日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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