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長期優良住宅化リフォーム工事を実施した管理組合様の本音とは?

補助金
マンションの修繕に、「長期優良住宅化リフォーム工事」が、近年の持続可能な社会の実現:SDGs等で、注目されています。また、補助率1/3、補助金額の上限金額100万円/戸(評価基準型)は他のマンション修繕工事の補助制度と比較し、補助率が高く・上限金額も大きいので魅力的です。今回は実際に当社が1年半前に、長期優良住宅化リフォーム工事の補助金を活用して耐震改修工事・大規模修繕工事を行った管理組合様に施工後のインタビューを行いました。
補助金

インタビューは、写真の通り座談会・アンケート方式で、6丁目住宅団地の住民方々11名様(工事に関係した専門委員会、管理組合理事、自治会の方々等)にお集まり頂き、施工当時の事を思い出して頂きながら進めました。皆さん、当時の御苦労・喜びなどを思い出しながら、語って頂きました。

目次
1. マンションの概要と工事内容
2. 工事前の合意形成・補助制度の活用・施工中のトラブル回避
3. 工事後の感想

1. マンションの概要と工事内容

東京都町田市の郊外に建つ鶴川6丁目団地です。1968年竣工・築53年・RC造・30棟・5階建・780戸の大型団地です。当社が行った工事内容は、耐震補強改修工事・大規模修繕工事(防水改修工事、省エネ対策となる外断熱・玄関扉更新工事等)です。
当社が施工を行う前に、Low-Eペアガラスによるサッシ改修工事を行っていました。工事にあたっては、町田市の分譲マンションの耐震化促進助成制度の活用と国土交通省の長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助制度を活用しています。工事完了後、クリエイティブリフォーム賞を2021年度受賞致しました。

2. 工事前の合意形成・補助制度の活用・施工中のトラブル回避

〇工事前の合意形成
修繕積立金が十分に有り、それに助成金、補助金をもらえる目処がたち、総工事費の不足分は低利の住宅支援機構より借入金で賄われた事が、スムーズな合意形成を得た事の最大の理由。構想から5年掛けて、助成金、補助金をもらえるように準備し、住民に耐震補強の必要性、外断熱の快適性、省エネ性の説明会を丁寧に何度か開催し、合意形成を行なった。
本工事の前の、サッシ改修工事を行う時の方が、住民合意を得るのに大変だった。その前例が有ったから、スムーズに対応できたと思う。今回の合意形成を得るのに苦労した点は、耐震補強改修工事において、設計者からの概算予算と施工者からの見積金額と比較すると、タイプ別で補強工事費の乖離が大きくなり、合意形成に苦慮したが、住民集会を3回程度行い、丁寧に説明した。「より良い建物を残していきたい」との意見が多かったのと、助成金・補助金の活用が、合意形成を後押しした。
組合運営活動で、各種専門家が多くいたことで、円滑に計画を立案でき、建替えはせずに住み続けることを選択し、修繕に特化して議論が出来た事も大きな要因だった。

〇補助制度の活用
[当社施工前のサッシ工事について]
サッシ改修工事の助成金の利用がとにかく大変だった。電気・水道・ガスのデータを工事前1年間・工事後2年間を全て揃えなければならなかった。サッシは5階部分と妻壁部分が助成金対象外となり、限定的な使用となったため、管理組合内の公平性を担保する為、各戸に案分した。書類作成はとにかく大変だった。

[長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助制度の利用について]
ガイドラインは有ったが本は分厚く、説明会に行っても理解できなかった。補助金は管理組合だけで申請することが出来ないので、施工会社と一緒に行うしかない。認定・実際に補助金を得るまでドキドキした。棟別管理となっているので、補助金が出なかったら大変と言うプレッシャーが有った。申請の労力は、とにかく大変だった。戸建住宅は簡単だが集合住宅は難しい。
※今回の工事で当社は、円滑に進むように、断熱等級等を自社で計算したので、コンサルに依頼するより、インスペクション費用は大幅な低減となった。

〇工事中のトラブル回避策
工事中は、施工者とは別に管理組合様の事務所を設置し、理事が交代で常駐することにより、住民対応が十分に出来、結果としてトラブルを未然に防げたと思う。
※施工中、管理組合様の事務所で諸問題の解決がなされたことにより、施工者は施工に専念できたことで、工事をより円滑に進める事が出来た。

3.工事後の感想

〇空室率・建物の価値の変化
町田市の空室率は全体的に悪化していると聞いているが、当マンションでは、空室率は少なくなった。モダンな室内リフォームを行い、若い人の入居が増えた。他の団地より競争率が高く、購入価格も上がってきている。耐震改修・サッシ改修工事・外断熱工事を行ったので、内部のリフォーム工事を行えば、住みやすいと好評だ。エレベーターが無いので、特に4〜5の階段昇降が大変だが、エレベーターの設置は難しいと思っている。

〇外断熱の効果
サッシを交換した時の方が、効果を劇的に感じることが出来た。サッシを交換した時、遮音性能が上がった事、風及び雨の吹込み等が無くなった。しかし、温度差が大きくなり、結果として結露が増えたと聞いている。その後、外断熱工事を行って、特に北側の壁で結露が少なくなった。外断熱にして、冬場は室温が1度上がった。玄関を開けたら、暖気を感じるので非常に暖かくなった。外断熱が無いと内部の温度環境も悪いと感じる。外断熱することにより躯体蓄熱がなされている実感が湧いてきたことが最大の良い点であると思う。
※外断熱工事を行う事により、コンクリートが外気に直接触れない事により、紫外線・風雨等から守られ中性化は大幅に抑制され、躯体補修費の低減等でランニングコストが低減できると考えている。

〇耐震工事の効果
耐震工事を終了してから、数度、震度3〜5の地震を体感したが安心感が有った。

〇その他
玄関扉の開閉がスムーズになった。エネルギー低減がSDGsに直結すると感じる。所得税の控除や住宅ローンの金利引き下げ等の優遇措置を受ける事が出来た。階段の水溜りが改善され、快適になった。耐震改修工事と大規模修繕工事を一緒に行えて良かった。

〇工事について
[工事中の苦労]
工事前の助成金・補助金について、調べる事に苦労した。支払った金額以上は助成金・補助金を受領出来ないので、自己資金が大事だった。(借り入れにより不足工事費の特別徴収せず)自己資金を拡充できたので、合意形成がスムーズにできた。活動費は手弁当で行っていて苦労したが達成感はひとしおだ。
外壁色の決定までのプロセスは、管理組合専門員会と色合いについて何度も検討を重ねた。町田市から勧められたワークショップを活用し、区分所有者に色の決定等の説明ができるようになり、合意形成に問題が無く良かった。色合いが良く良かったと感じている。

[当社に対して]
営業段階からの付き合いで工事完成まで4年となった。工事は良かった。現場に常駐していた3人、特に女性係員の人当たりが良かった。会社全体で、団地再生の熱心な取組を感じられた。保証期間しっかりと対応してもらいたい。

〇他のマンションにお住いの方に長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助制度の工事を勧めますか?
工事そのものは勧めるが、資金力が無いと実現は難しいと感じる。補助金のハードルの高さも問題で、施工業者のバックアップが必要だ。

終わりに

インタビュー中に保証期間のご確認の声を頂きました。保証期間中しっかりとご対応し、よりご満足いただける様に致します。

■あわせてお読みください。
・第11回マンションクリエイティブリフォーム賞を受賞しました。
・住まいながらの耐震補強を実現 「トーカンマンション王子」における大規模修繕工事


■この記事のライター
吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者

※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2022年3月14日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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