毎週月曜日更新

毎週月曜日更新

タグ一覧

管理組合に聞く 管理組合運営を「自分ごと」として捉える 〜恒陽藤沢マンション〜 前編

管理組合

高度経済成長期に大量に供給されたマンションは、築40年を経過して3回目、4回目の大規模修繕工事を迎えるところも増えてきました。マンションを「終の棲家」と捉える人の割合も増えているという調査結果もあり、マンション管理組合の様相も変わって来ているようです。「マンションは管理を買え」という言葉もありますが、マンションの管理組合運営はどのように行っていけば良いのでしょうか。

今回は、築45年を迎える「恒陽藤沢マンション」管理組合の皆さんにお話をうかがいます。大規模修繕工事だけでなく、マンションの管理そのものの運営について、参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

こんな人におすすめ
● マンションにお住まいの方に
● マンションの管理組合運営に興味のある方に
● マンション理事会活動に参加される方に

(聞き手:建装工業 MR業務推進部 大塚麻里絵)
※2013年の大規模修繕工事では恒陽藤沢マンション大規模修繕工事の現場担当者として工事管理に従事していました。

目次
1. 恒陽藤沢マンションの管理組合運営を初めてご覧になった時の感想
2. 理事長になるまでの経緯と理事選出方法
3. 建物管理に積極的に取り組むようになったきっかけは

1. 管理組合の運営の様子をご覧になって、最初はどのように感じましたか。

平沼:私は今から7年前の2014年に転居してきました。当時、築37年が経過していましたが、大規模修繕工事と窓枠サッシ交換工事終了後できれいだったのが購入の決め手でした。当初は日中に他の住民と会うことも少なく、最初の1年ほどは『ここは静かな人が多いのかな』と思っていました。管理組合の活動も、集会室で会議をしているのを見かけるぐらいで気にしていませんでした。転居2年目に理事になった時に、活発な活動の内情を知って驚きました。維持修繕の工事をどこまで理事会や施設計画委員会がオペレーションしているのかは、実際にその活動に参加してみないと分からないものです。これは、当マンションでの居住年数に関わらず言えることです。

管理組合

(写真右から)
● 平沼 様(前理事長)
● 吉田 様(前副理事長)
● 高橋 様
● 有吉 様
● 高木 様
● 竹内 様

2. 理事や理事長の選出はどのように行われるのでしょうか。

平沼:私が初めて理事になった6年前の2015年は、転居2年目の新人だったので断り切れずに理事になったような形です。理事の役職や担当は話し合って決めますが、その年は前年理事長が再任されました。
理事1年目には、施設計画委員会を担当しました。委員会に理事として参加し、施設・設備の点検などに立ち会いました。理事2年目に1年間、理事長を何とか務めました。2度目の理事になった2020年は、6月に理事が欠員したため、補充の理事になりさらに理事長となりました。
理事は任期が2年、毎年半分が入替となります。このマンションは団地によくある形の建物ですので、各階2戸×5階の10戸が全部で12階段分あります。そのうち10の階段から3年に1度1名ずつ理事を選出します。理事長の決め方は年によって色々です。
理事会の構成は、理事長、副理事長、会計、書記、施設計画委員会・住民代表会・自主防災会・顧問会議の4つの委員会の担当理事で各1名ずつの計8名でとなっています。

高橋:当初は、理事の役割は輪番制で回ってきていました。これが途中から変わり、推薦制が取り入れられるようになりました。

有吉:理事の選出方法だけでなく、入れ替え方法も変化し、全てのメンバーが一斉に入れ替わる方法ではなく、半分ずつ入れ替えて引継ぎがしやすい現在の方法に落ち着きました。

平沼:理事会とは別に顧問会議という委員会があり、ここが理事選出にかかわる業務を行っています。顧問会議が理事を選出する階段を選出し、理事の決め方に関してある程度の手引きをしたら、そこから先は各階段がそれぞれのやり方で理事を選んでいます。輪番制に近かったりご年配の方に考慮して選出したりと、階段ごとの事情が反映された方法になっています。

竹内:私のところの階段は輪番制になっています。ですから、過去の理事経験履歴もきちんと蓄積しています。マンションはホテルではありませんので、お金さえ払えば良いというものではないと思っています。それぞれがマンションを管理する責任を負っているのです。

有吉:理事を経験することで初めて分かることが沢山あるので、積極的に理事をやってもらいたいと思っています。

高橋:管理規約にも、区分所有者は理事になる責任がありますとしっかり書いてあるのですが、中にはそれをご存じない方もいらっしゃるのが実状です。

管理組合

2013年大規模修繕工事の現場確認(手摺交換工事)の様子
大規模修繕委員の皆様にも積極的に足場にのぼっていただきました

3. 建物管理に積極的に取り組むようになったきっかけは

恒陽藤沢マンションは、2013年に建装工業にて大規模修繕工事を、2021年には屋上防水工事と駐輪場更新を中心とした外構工事を施工させていただきました。2013年当時から感じておりましたが、お住まいの皆様に工事に対して積極的な方が多く、今もそうした体制を続けていらっしゃいます。建物管理に積極的に取り組むきっかけになった出来事はあるのでしょうか。

高橋:新築当初から30年近くは、委託した管理会社にお任せで、提案された工事や修繕をそのまま実施し、工事費用も精査していませんでした。建物の維持管理に関心が薄かったので、進め方も計画的でなく、修繕積立金が溜まると溜まった分だけ工事をやってしまったりしていました。見積内容と実際の工事内容にずれがある時もあり、徐々に気が付いていきました。

竹内:当時、管理会社に全てお任せしてしまっていて、そうした体制にしてしまった私たち管理組合側にも責任があったなと感じました。

高橋:そこで『管理会社任せでいてはいけない』と管理方法を改善する方向を模索し始めます。自分たちで長期修繕計画を作るため、施設計画委員会の前身である「長期修繕計画委員会」を発足します。アンケート調査、コンサルタント探しなどを経て、2009年に管理組合主導の長期修繕計画を作成しました。

平沼:今は、施設計画委員会は10名程度で活動を行っています。当時も当委員会が中心となって、長期修繕計画の策定を進めていったと聞いています。管理組合主導で、設計事務所に協力依頼し、工事内容の検討・施工会社選定・検査など納得のいく工事を実施し始めました。自分たちで選んだ施工会社さんなので、遠慮なく希望をお願いできて信頼関係も深まります。その後も長期修繕計画にしたがい、工事の優先度を検討し限られた修繕積立金での実行に努力して取り組んでいます。

高橋:更に、NPO湘南マンション管理組合ネットワークに加入し、より多くの情報が得られるようになりました。各種セミナーへの参加に加えて、他のマンション管理組合さんがどのように管理組合運営をされているのか聞くこともできて、良い情報源になっています。2013年に建装工業さんが施工した大規模修繕工事は、こうした活動を経て実現した工事でした。信頼できる設計事務所の先生にも出会えたので、合意形成のための技術的な説明などは設計事務所にお願いしています。この方法の方が、説得力もありますので皆さんの合意が得やすいです。

平沼:湘南マンション管理組合ネットワークの活動には、定期的に参加しています。年に1度の総会に加えて、月1回程度開催される各種セミナーにも参加しています。当マンションに関わりの深い内容でセミナーが行われる時には、2〜3人で参加しています。その内容を施設計画委員会に展開しています。

有吉:今から40年以上前のことを考えると、当時このマンションを購入された皆さんは、20代後半から30代半ばの働き盛りの方々でした。自分の住んでいるマンションの管理のことまで考える余裕がなく、管理会社に任せきりになってしまうというのも分かります。今はそうした皆さんが70代を迎えられて、自分の時間を持てるようになったことが大きかったと思います。

竹内:私も高木さんも、このマンションには新築当初すぐに入居した訳ではありません。私は今から20年ほど前にここに入居しました。その後、理事の会計になってはじめて長期修繕計画の内容を見ました。そこでは築45年頃に赤字になる予測となっており、これは大変だと思いました。その時に「長期修繕委員会」を発足し、工事内容の検討や施工会社さんの選定に熱心に取り組みました。工事に精通した方もいて、そうした方がちょうど定年退職を迎えられる頃でした。

平沼:団塊の世代の方々に尽力いただき、こうした積極的な管理組合活動に転換できたのではないでしょうか。

大塚:大規模修繕工事を施工していた時には知らなかった、恒陽藤沢マンションの変遷を辿ることができました。似た経験をされたマンション管理組合さんも多いのではないかと思います。後編では、実際に維持修繕工事を行う場面での管理組合の様子や、マンションの今後の展望をご紹介します。

後編記事はこちら
『管理組合い運営を「自分ごと」として捉える〜恒陽藤沢マンション〜 後編』

■あわせてお読みください
● タワーマンションの排水管更新工事に挑む!〜ザ・シーン徳川園〜 前編
● タワーマンションの排水管更新工事に挑む!〜ザ・シーン徳川園〜 後編
● 住民主体による大規模修繕工事とコミュニティ活動でマンションを100年持たせる取り組み 〜労住まきのハイツの事例〜(前編)
● 住民主体による大規模修繕工事とコミュニティ活動でマンションを100年持たせる取り組み 〜労住まきのハイツの事例〜(後編)


《この記事のライター・インタビュアー》
大塚 麻里絵
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築士・一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2021年12月27日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

おすすめコンテンツ