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管理組合に聞く 住民主体による大規模修繕工事とコミュニティ活動でマンションを100年持たせる取り組み 〜労住まきのハイツの事例〜(後編)

マンション 管理組合
住民主体の大規模修繕を成功させた大阪府枚方市の大規模マンション「労住まきのハイツ」。
後編では様々なメディアから取材を受けているマンションの活発なコミュニティ活動について管理組合の方々にうかがいました。

(聞き手:KENSO Magazine編集部 [リボンハーツクリエイティブ株式会社])

前編記事はこちら
『管理組合に聞く 住民主体による大規模修繕工事とコミュニティ活動でマンションを100年持たせる取り組み 〜労住まきのハイツの事例〜(前編)』

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目次
「出来る人が・出来る事を・出来る時に」無理をしないがモットー
「くらしの支援」や「プチカフェ」で深まる住民交流
「二つの老い」と付き合うには住民同士の助け合いが大切
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「出来る人が・出来る事を・出来る時に」無理をしないがモットー

マンション 管理組合
――「労住まきのハイツ」では住民同士のコミュニティ活動が盛んとのことですが、具体的に自治活動にはどのようなものがあるのでしょうか。

尾崎:「労住まきのハイツ」には各種イベントを取り仕切る自治会と、自治会が支援する「くらしの支援 かけはし」「あすなろクラブ(老人会)」「子供クラブ」などの団体があります。

木村:自治会の活動は、労住まきのハイツが出来た当初より、夏祭りなどの活動を活発に行ってきました。それから時がたち、子供の減少と共に活動が少なくなってきたところで、大規模修繕工事の問題などがあり、管理組合活動が活発化したという流れがあります。

尾崎:中でも特長的なのが「かけはし」で、発足したのはこのマンションの竣工から25年が経った2000年10月のことです。
当時、高齢化が進んできていたマンション内で「住民同士がお互いに支え合いながら気軽に声を掛け合い暮らしていけるような組織が欲しい」という声が高まってきました。そこで住民の有志によって結成されたのが、くらしの支援組織「かけはし」でした。
これは『「出来る人が・出来る事を・出来る時に」無理をしない』をモットーに、昔の長屋をイメージして作られた助け合いのボランティア組織です。

――「かけはし」と管理組合や自治会との違いはあるのでしょうか。

尾崎:管理組合や自治会と「かけはし」とは全くの別物です。管理組合や自治会ではなかなか細かいことまでは手が届かないということから、住民同士で助け合う組織「かけはし」が立ち上がりました。「かけはし」の名前には、管理組合と自治会をつないで調整するという意味が込められています。自治会からは年間12万円の活動資金を、管理組合からは、集会所を始めとする様々な施設の提供を受けることで活動しています。管理組合・自治会から独立しているために、スピーディーに動けるというメリットがあります。

田中:私は理事会に入るまでは「労住まきのハイツ」の管理組合や自治活動のことをほとんど知りませんでした。
定年退職後は個人的に好きなことをしていましたが、ある時、管理組合の理事長に就任することになり、過去の管理体制の実体を知ることで「私たちが住むマンションの管理は自分たちでやらなければいけない」ということを痛感しました。修繕委員会にも所属して活動を続けていく中で、様々な問題を理解していくことができたと思っています。
これらの活動がスムーズに続けられるのも、他の住民とのコミュニケーションがあるからこそではないでしょうか。

「くらしの支援」や「プチカフェ」で深まる住民交流

マンション 管理組合
――「かけはし」ではどのような活動をされていますでしょうか。

立石:「かけはし」の発足動機は「子どもと高齢者に何かをしてあげたい」ということでした。そして、「かけはし」の活動が住民たちに喜んでもらえたため、やみつきになっていったというのが正直なところです。

当初は活動内容が明確ではなかったのですが、徐々に活動を見直して形にしてきました。具体的には、「子どもたちには思い出になるようなことを作ってあげよう、高齢者に対しては日常生活の支援をしてあげよう」というのが主な活動内容です。

特に依頼が増えてきているのが、高齢者の目の前にある困りごとを支援する「くらしの支援」の活動です。380戸あると色々な専門家も住んでいますので、その分野を得意とする人が困りごとの相談に対応する形です。隠れた専門家が活躍する場でもあるのです。
例えば、蛍光灯の交換や粗大ごみの搬出、水道パッキンやパイプスペース扉の錠の取り替え、網戸の張り替えなど、身近な困りごとを解決する活動が中心となります。工事に近いような困りごとは、次の大規模修繕工事までは時間があるけれど、それまでの間をしのぐぐらいの修理をすることで対応します。最近の困りごと相談の中で多いのは、パソコンやスマートフォンの操作方法です。「かけはし」のメンバーにはパソコンやスマートフォンの操作を熟知している住民もいるので対応が可能です。この方が労住まきのハイツのホームページ作成・運営も担当してくれています。
このような困りごと相談の依頼を受ける際、材料費は別にして1件につき300円をいただいています。ボランティア活動ですのでお金はいただかなくても構わないのですが、無償で引き受けるとお礼をしてくる住民が多いのです。そこで無用な気を遣わなくても済むように、依頼料として300円だけ頂戴するようにしています。このお金は「かけはし」の活動資金の一部になるという仕組みです。

また、毎週火曜日と木曜日に集会所横の藤棚で開催している「プチカフェ」も大盛況で、毎回50〜60人ぐらいの住人が集まってコーヒーを飲みながら会話や情報交換を楽しんでいます。これは、住民同士が顔見知りになるために始めた取り組みの代表的なもので、大成功と言っていいと思います。運営側の女性達にはもちろん負担もありますが、運営側にいることで逆に元気をもらっているという声もあります。
他にも、「歩こう会」「和の輪昼食会」「唄の集い」など、定期的に開催するイベントを主催することで、住民同士のコミュニケーションを図っています。

「二つの老い」と付き合うには住民同士の助け合いが大切

マンション 管理組合
――管理組合内のコミュニティ形成が良好で、日頃から住民同士のコミュニケーションが高いことが大規模修繕工事を成功に導いた要因でしょうか。

森本:そうですね。例えば、週2回の「プチカフェ」には大勢の住民が来るわけですが、そこでは他愛もない話をしながらマンションについての大事な話もしたりするわけです。そうやって日常的にコミュニケーションを取り続けることが、管理組合や自治会の活動を理解してもらうことにつながり、マンションのために自分ができることを実行する原動力になっていくのだと思います。

田中:最初は何かきっかけがあって活動を始めても、その後に活動を継続できるかどうかは、十分なコミュニケーションをとれる状態があるかどうかが重要だと思っています。

木村:何か修繕をしたい部分があったとして、それについて話す機会があれば、色々な案を出すことができます。単独ではできないことも、2〜3人が集まればできてしまうこともあります。あまり行動を起こさない人が、行動を起こす人と話すことによって、実際の動きにつながったりもします。だからコミュニケーションが重要なのです。

――こうした活発な管理組合や自治会の活動が行われていることは、入居を検討している方にはどのように伝わっていくのでしょうか。

尾崎:労住まきのハイツにかつて住んでいた子供世代が、家庭を持って親元の近くに住み始めるというケースが多いです。活動の様子が親から子に伝わっています。その他の若い世代や新しい入居希望者に対しては、特に積極的に広報活動を行っている訳ではありませんが、マンション全体として空室状態が続く部屋は無い印象です。

――管理組合として、課題の解決にはどのように取り組まれていますか。

西田:管理組合の専用ポストを設置して住民の意見を吸い上げているほか、「プチカフェ」などで住民から聞いた要望や意見、雑談などを整理して、各専門委員会の会議や理事会の場で検討しています。この点は他の管理組合と同じではないでしょうか。

田中:管理組合や自治会など、各団体の活動内容を含めて、ホームページに様々な情報を掲載し、住民たちに周知しています。これまでのマンションの歩みをまとめた「40周年記念誌」も見ることができますし、当マンションでは植栽にも力を入れていますので、敷地内に咲く季節の花を伝えるブログなども掲載しています。

木村:かつては駐車場が不足していたため、借りていた土地を購入しようと検討したこともありました。また、相続を放棄されてしまった部屋の管理費等を回収するために、何年もかかってしまったこともありました。これらのやや難解な課題には、管理組合を法人化することで対処することとしました。

竹田:防災対策についても、年1回の防災訓練に加え、防災時の対処法をまとめた「防災マニュアル」を作り、住民がいつでも見られるようにホームページに掲載しています。

瀧:ただ、最近は全国で大雨による被害が多くなっています。このマンションは淀川の近くにありますので、そのことでも万が一の対応を検討する必要があると考えています。

――運営に悩まれている他の管理組合の方へ、アドバイスできることはありますか。

尾崎:それぞれの悩みがあると思いますので、あまり具体的なアドバイスはできませんが、やはり活動の中心となるメンバーを5人から10人程度集めることではないでしょうか。3人でもまだ少ないでしょう。1人だけが頑張るのはとても大変で継続が難しいと思います。その方にもし何かあったら、活動が続けられないということにもなってしまいます。

――「労住まきのハイツ」の管理組合として、今後の展望をお聞かせください。

尾崎:「労住まきのハイツ」としての公式な展望というものはありません。ただ、私としては建物の老朽化と住民の高齢化という「二つの老い」に対し、今後もずっと上手く付き合っていく必要があると考えています。そのためには住民同士のコミュニケーションを大切にして、管理組合の活動をより理解してもらい、全員で協力・助け合いをしていくことが大事なのではないでしょうか。
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「労住まきのハイツ」の住民主体による大規模修繕工事は、管理組合様の日々の努力の積み重ねが実現させたものですが、その成功のベースには、精力的に行われているマンション内でのコミュニティ活動がありました。運営上で大変なことももちろんおありでしょうが、それよりも活動を維持していくことを楽しまれているという印象がありました。
今回は大規模マンションでありながら責任施工方式の大規模修繕工事が成功した貴重な事例をご紹介しました。
労住まきのハイツの皆様、ありがとうございました。

労住まきのハイツ ホームページ
http://www.roujyumakino.com/

(2020年4月6日記事更新)

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