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【現場取材レポート】仙台駅前の大型マンション、初の大規模修繕工事が始動! 〜ミッドプレイス仙台タワー&レジデンス、16年目の挑戦〜

ミッドプレイス仙台タワー

仙台駅から徒歩8分という優れたアクセス性を誇る、地上31階・地下1階建ての「ミッドプレイス仙台タワー&レジデンス」。総戸数306戸を擁するこの大規模タワーマンションは、2009年9月の竣工以来、仙台市中心部で快適かつ上質な暮らしを求める人々に選ばれてきました。高層階から望む仙台市街の眺望と充実した共用施設などが魅力のこのマンションは、都市の利便性と快適な住環境を兼ね備えた理想の住まいとして、今なお高い人気を誇っています。
築16年を迎えた今年、いよいよ初の大規模修繕工事が始動。住民の生活への影響を最小限に抑えるため、作業動線を工夫するなど行い、現場では効率的な工事運営を目指した様々な工夫と挑戦を取材してきました。

目次
1. 現場概要
2. 工事業者選定の背景と本工事の特徴
3. 今回の工事で工夫している点
4. 現場ならではの課題と、それを乗り越える工夫
5. 工事竣工までの意気込み
6. 最後に

現場概要

工事名称 ミッドプレイス仙台タワー&レジデンス大規模修繕工事
構造・規模 タワー棟31階建RC・PC造・レジデンス棟12階建RC・PC造・クラブハウス棟2階建RC造・駐車場2階建S造
総戸数 306世帯
所在地 宮城県仙台市若林区新寺1丁目7-1
竣工年 2009年(平成21年)9月竣工
工期 2025年2月1日〜 2026年4月30日
発注者 ミッドプレイス仙台管理組合
工事内容 大規模修繕工事
取材日 2025年7月28日(月)
話を聞いた人 佐々木所長

工事業者選定の背景と本工事の特徴

本工事にあたっては、複数の施工会社による競争入札が行われ、管理組合により厳正な選考が進められました。当社は、全国における超高層マンションの大規模修繕実績(約150件)と、東北支店においても12件の豊富な施工実績を有しており、これまでに培ってきた経験とノウハウが高く評価されました。
とりわけ、今回の現場を統括する佐々木所長は、過去に多数の高層マンション修繕を手がけており、高所作業における安全管理、住民対応、工程調整に精通している点が信頼の決め手となりました。

ミッドプレイス仙台タワー

【レール式ゴンドラで作業中】

対象となる「ミッドプレイス仙台タワー&レジデンス」は、31階建のタワー棟、12階建のレジデンス棟、クラブハウス棟からなる3棟構成。総戸数306戸という規模は、東北支店が今期担当する修繕案件の中でも最大クラスとなります。
また、本物件は仙台駅から徒歩圏に位置し、周辺にはオフィスビルや商業施設、公共交通機関が密集しています。特に東北新幹線およびJR本線がすぐ近くを走行しており、施工にあたっては落下防止や飛散防止に最大限の配慮が求められるロケーションです。資材搬入や仮設計画にも細心の注意が必要であり、そうした難易度の高い現場条件にも柔軟に対応できる施工体制が、当社選定の大きな要因となりました。

今回の工事で工夫している点

〜住民配慮と高度な安全管理を両立させた施工体制〜
今回の大規模修繕工事においては、「住まう方々の安心と快適性を守る」ことを第一に掲げ、工事の各工程に多様な工夫が施されています。まず、仮設計画では、作業員の動線を居住者の動線と完全に分離。当然の配慮ではありますが、より徹底を図るため、作業員がマンションのエントランスを通行しない経路を設定しました。また、31階建てのタワー棟は隣接する建物や歩道に非常に近接しており、落下物や資材の飛散対策において、通常以上に高度な安全措置が必要となります。その一環として、仮設足場の構成にも大きな工夫を加えました。通常であれば、2階部分に仮設ステージを設けてその上にゴンドラを設置しますが、今回は14階まで足場を設けて全面をメッシュシートで養生。これにより、高所作業における落下・飛散リスクを大幅に低減し、歩行者や住民にとっての安心感も高めています。

ミッドプレイス仙台タワー

【タワー棟の施工状況】

さらに、室外機の養生方法にも独自のアプローチを導入。当社が一般的に行う手法とは異なり、室外機の上面にパネル状の銀色反射材を取り付け、上下をゴムバンドで固定する方法を採用しました。この仕様は単なる保護にとどまらず、「冷却効率が向上した」と住民から好評を得ており、中には工事完了後もそのままの養生状態を希望される方もいらっしゃいます。

ミッドプレイス仙台タワー

【室外機養生状況】

また、工程面においても効率化と合理化が進められています。当初14カ月を想定していた工期は、下地補修・防水・塗装を3班体制で同時進行させることで、1カ月の短縮に成功。全体の工期は13カ月に再設定されました。

ミッドプレイス仙台タワー

【下地補修作業中】

屋上に設置された意匠性の高い装飾物の施工方法です。この部分のシーリング打ち替え工事においては、特殊な仮設足場を組むことなく、外壁修繕に使用する特注ゴンドラを活用。これにより、仮設資材や人員コストの最小化、安全性の確保、作業時間の短縮といった多方面での効果が得られました。

ミッドプレイス仙台タワー

【特注ゴンドラの突りょう】

さらに、住民への情報提供も全てデジタル化されており、KENSO-TV・KENSO-WEBシステムが活用されています。これにより、「自身の棟だけ確認したい」「全体の進捗を知りたい」といった各世帯ごとのニーズに即した情報提供が可能となり、住民との円滑なコミュニケーションにもつながっています。

ミッドプレイス仙台タワー

【エントランスに設置したKENSO-TVシステム】

なお、足場と躯体の接合方法についても、工夫が施されています。従来のオールアンカー工法に代わり、今回はあと施工アンカー工法を採用。これにより、施工時の振動や騒音を抑えられるだけでなく、外壁タイルの貼り替え枚数も削減されるという副次的なメリットも生まれています。

ミッドプレイス仙台タワー

【あと施工アンカー工法による足場接合】

現場ならではの課題と、それを乗り越える工夫

〜柔軟な対応力が支える“住民第一”の現場運営〜
大規模修繕工事が始まって間もなく、一部の住民の方から「テレビの映りが悪くなった」とのご相談が寄せられました。共用部や各戸への足場設置などが進んでいたタイミングであったため、当初は工事との因果関係も疑われましたが、詳細調査を行った結果、原因はテレビアンテナのブースターおよび分配器の経年劣化によるものと判明しました。必要な改修工事について見積を提示したところ、管理組合が紹介していた他業者よりもコストパフォーマンスが良好であることが評価され、当社がそのまま施工を担当することとなりました。

ミッドプレイス仙台タワー

【屋上のテレビアンテナ】

また、住戸での生活が継続される中での工事であることを常に意識し、「お客様第一主義」を徹底しています。特に近年増えている在宅ワークに対応し、音の出る作業については事前に各戸へ通知を行った上で、リモート会議などの妨げとならないよう、時間帯の調整や工事エリアの変更を柔軟に行っています。
さらに、今回の現場では、敷地面積のわりに資材置場や休憩所スペースが限られているという課題も抱えていました。敷地内において荷下ろし可能なスペースが限定されていることから、資材搬入計画や作業導線の確保、そして居住者の動線との交錯を避けるための仮設計画の調整には、多大な時間と労力を要しました。現場では、建物の特性や立地条件を踏まえ、工区ごとに仮設計画・動線計画を再検討する作業が繰り返されました。たとえば、搬入車両の入場スケジュールを細かく管理し、休憩所については仮設プレハブを敷地内にコンパクトに設置。安全面と居住環境の双方を両立させる工夫が、現場全体の運営に大きく貢献しています。

ミッドプレイス仙台タワー

【エントランス廻りの作業状況】

本工事では、メーターボックス内に設置されている給湯機の排気システムが壁面塗装に及ぼす影響にも注視しています。排気が直接メーターボックス内壁に当たる構造となっているため、熱や湿気による塗膜の劣化が顕著に見られ、これまでの維持管理上でも課題とされてきました。現在、これに対する新たな改善策として、排気の当たりを軽減させるための受金物(熱気拡散板)を試作中です。シンプルかつ低コストで設置可能な構造としながらも、塗膜劣化の抑制効果を確認しております。このように、目に見えにくい部分にも手を抜かず、建物の長寿命化と美観維持を両立するための工夫を現場レベルで行っています。

ミッドプレイス仙台タワー

【給湯機の排気システム】

工事竣工までの意気込み

〜無事故・高品質の完遂を目指して〜
仙台市内中心部という交通量と人通りの多い立地、そして総戸数306戸という規模感は、東北支店の中でも今期を代表する案件となっており、施工体制の確立と現場運営には常に高い緊張感が伴っています。
まず、安全・品質管理の徹底という点においては、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」に完全対応。作業員の入退場を1カ所に集約し、そこにフェイスパス認証型の入退場管理カメラを設置することで、現場の出入りをリアルタイムに記録・管理しています。これにより、安全管理の高度化だけでなく、技能者の就労実績の可視化、将来のキャリア形成にもつながる環境整備を推進しています。
また、近年深刻化している猛暑対策にも積極的に取り組んでいます。現場内には冷水が常に確保できるウォータークーラーを設置し、休憩スペースも従来より広く確保。さらに、作業員の健康を守るために飲料自動販売機の設置も計画中です。特にゴンドラでの高所作業は一度乗り込むと簡単には降りられないため、作業中に休憩がとれるような工夫をゴンドラ内に施す試作も行っており、作業員の声を反映した細やかな対応が現場全体の士気向上にも寄与しています。
今回のプロジェクトにおいて、私たちは「安全第一・品質重視・住民満足」の三原則を何よりも大切にしています。高層建築における飛散物や落下物のリスク、作業中の騒音・振動への配慮、住民の動線や生活環境の維持など、工事を進める上で考慮すべき要素は数多くありますが、それら一つひとつに真摯に向き合いながら、最後まで事故ゼロでの完遂を目指しています。
この工事が竣工を迎えるその日まで、現場一丸となって取り組み、ミッドプレイス仙台タワー&レジデンスの住民の皆様に「頼んで良かった」「丁寧な仕事だった」と思っていただけるような結果を残したいと思っています。

ミッドプレイス仙台タワー

【レール式ゴンドラで作業中】

最後に

今回の取材を通じて感じたのは、現場の空気感そのものが「住民第一」の姿勢に満ちていたことでした。一つひとつの対応に真摯さがあり、細部にまで気配りが行き届いている。それは、ただ工事を“こなす”のではなく、“築き直す”という気持ちが根底にあるからこそだと感じました。この修繕工事を通じて、ミッドプレイス仙台タワー&レジデンスが今後も仙台市を代表するランドマークとして輝き続けることを、心より願っております。

■あわせてお読みください。
強風対策に加え工事中の見栄えにも配慮〜ザ・レジデンス一番町/宮城県仙台市 第1回大規模修繕工事〜
ゴンドラ台数削減でコストダウン提案 〜シティタワー仙台五橋/宮城県仙台市 第1回大規模修繕工事〜
居住者専用WEBで洗濯物情報をお知らせ! 〜パークハウス仙台五橋タワー/宮城県仙台市 大規模修繕工事〜


■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
職能能力開発総合大学校を卒業後、建築・マンション修繕の分野で40年の実務経験を重ねる。マンション管理士・一級建築施工管理技士・一級管施工管理技士・マンション維持修繕技術者として、数多くの大規模修繕計画や管理組合支援を担当し、実務に即した提案力に定評がある。一方で、「専門知識を住民の方にもわかりやすく伝えること」をモットーに、講演・執筆・現場でのアドバイスを通じて、区分所有者が安心して暮らせるマンション環境づくりに取り組んでいる。専門家としての厳密さを大切にしながらも、読者に寄り添い“暮らしに役立つ情報”を届けることを目指している。

(2025年10月20日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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