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マンション管理を見える化! 2つの新制度「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」の違い

マンション管理

2022年4月より、マンションの管理状態を評価する2つの制度が開始されることをご存知でしょうか?
一つは国土交通省による「管理計画認定制度」、もう一つは一般社団法人マンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」です。
どちらもマンションの管理が適切にできているのかを判断する制度ですが、これらがなぜ必要で、どのような評価・審査がされるのか気になるところだと思います。

そこで今回は、国の「管理計画認定制度」とマンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」、それぞれの概要や違いなどについて紹介していきます。

目次
1. マンションの資産価値を向上する評価・認定制度が開始
2.「管理計画認定制度」とは
3.「マンション管理適正評価制度」とは
4.「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」の違い
5. まとめ

1.マンションの資産価値を向上する評価・認定制度が開始

まず国内の分譲マンションの現状についてご紹介します。
国土交通省の調査によると、国内のマンションストック(中古物件)総数は、2020年末時点で約675.3万戸あり、中でも築40年超のマンションは103.3万戸とマンションストック総数の約15%を占めています。さらに、10年後には231.9万戸、20年後には404.6万戸にまで増える見込みとなっています。

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(出典:国土交通省「分譲マンションストック戸数」(令和2年末現在/令和3年6月21日更新)
「築後30、40、50年超の分譲マンション数」(令和2年末現在/令和3年6月21日更新))

このように中古マンションの数は増え続ける一方で、首都圏においては2016年頃から新築の販売戸数より、中古マンションの成約戸数の方が上回るなど、新築神話は崩れつつあります。ただし、人気が高いのは築浅物件で、築年数が古いほど成約率が低くなります。

築古マンションが敬遠されがちな理由として考えられる要素のひとつに、中古マンションの管理状態に関する判断基準がないことがあげられます。このままでは中古マンションが健全な状態で流通せず、マンションの老朽化や管理の質の低下、空き家問題などが深刻化していくことが予想されます。

これらの問題に対処するために、2022年4月よりマンションの管理状態を評価する2つの制度「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」が施行されることになりました。現状どちらの制度も任意で行うものなので、認定・評価を受けるかどうかは管理組合の判断になりますが、どのようなものか確認し、検討はしておきたいところです。

それでは、次からはそれぞれの制度についてご紹介していきます。

2.「管理計画認定制度」とは

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国土交通省の「管理計画認定制度」とは、2020年に公布されたマンション管理適正化法改正の一環として開始されるもので、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、地方公共団体からの認定を受けられる制度です。
マンション管理の水準の底上げや適正管理の誘導を目的としており、主な内容は「管理適正化推進計画の作成」「地方公共団体による認定」「管理適正化のための指導」の3つとなります。
審査は約16項目あり、国(マンション管理センター)が指定する講習を受けたマンション管理士が判定を行います。認定は5年ごとに更新をする必要があります。

主な審査項目は下記の通りです。
・管理組合の運営(管理者等および監事が定められているなど)
・管理規約(緊急時における専有部分の立入り、修繕等の履歴情報の保管など)
・管理組合の経理(管理費・修繕積立金の区分経理など)
・長期修繕計画の作成および見直しなど(長期修繕計画が7年以内に作成または見直しがされているなど)
・その他(都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであるなど)

●「管理計画認定制度」のメリット
・マンションの管理水準が向上する
以前よりマンション管理に対する取り組みが積極的になり、管理水準の向上につながります。

・マンション購入時の重要な指標となる
地方公共団体のお墨付きであれば、マンション購入する際の判断基準となり、物件価値の向上も期待できます。

3.「マンション管理適正評価制度」とは

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マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」とは、マンションの管理状態について全国共通の基準で評価を行うもので、実は「管理計画認定制度」よりも先に構想されていた制度でもあります。
評価項目は「管理体制」「管理組合収支」「建築・設備」「耐震診断」「生活関連」の5つのカテゴリーで約30項目あり、マンション管理業界の指定する講習を受けた管理業務主任者・マンション管理士が、☆0〜☆5の6段階評価を行います。評価は1年ごとに更新する必要があります。

主な審査項目は下記の通りです。
審査内容は、ソフト面とハード面の両方から5つのカテゴリーで、最高100ポイントを付与します。

・「管理体制関係」(20ポイント)
 管理者などの設置、総会の開催、規約の整備・運用など
・「組合会計収支関係」(40ポイント)
管理費や修繕積立金の収支、管理費の滞納状況など
・「建築・設備関係」(20ポイント)
  長期修繕計画書の有無、修繕履歴の保管、法定点検の実施状況など
・「耐震診断関係」(10ポイント)
  耐震診断実施の有無や結果、改修計画の有無など
「生活関係」 (10ポイント)」
  消防訓練の実施、防災マニュアルなどの整備状況、緊急時の対応など

●「マンション管理適正評価制度」のメリット
・居住者が安心して暮らせる
高評価を得ることで居住者が安心して暮らすことが可能です。マンション管理の信頼にもつながります。
・マンション管理の改善点が明確になる
マンション管理の各カテゴリーが数値で評価されるため、今後の改善点が明確になります。
・保険料の割引が期待できる(予想)
管理組合が加入する保険料の割引が検討されています。

4.「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」の違い

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2つの制度ですが、目的としてはどちらも良好なマンションストックの形成にあります。
それぞれの制度の大まかな違いについて、下記にまとめました。

●2つの制度の違い

制度名 管理計画認定制度 マンション管理適正評価制度
運営 地方公共団体 マンション管理業協会
制度内容 ・管理適正化推進計画を作成
・管理組合の運営、管理規約、管理組合の経理、長期修繕計画などを審査
・管理適正化のための指導・助言
・マンションの管理や管理組合の運営状況を評価
・評価情報をインターネットにて公開
審査項目 約16項目
・管理組合の運営
・管理規約
・管理組合の経理
・長期修繕計画
・その他 など
約30項目 ・管理組合体制
・管理組合収支
・建築・設備
・耐震診断
・生活関連 など
判定 認定か否か6段階評価(☆0〜☆5)
有効期間 5年間1年間
申し込み方法 マンション管理センターに認定申請を依頼し、マンション管理士による事前確認を受ける。事前確認適合通知を受けた管理組合は、認定申請について総会決議。その後管理計画と添付書類とともに地方公共団体に申請し、認定を受ける。評価者(管理会社等)に事前評価を依頼し、その結果を踏まえて総会で登録申請・情報開示の決議を行う。その後評価者に登録申請を依頼し、管理状態への評価を受け、結果をマンション管理業協会のHPに公開する。
金額 ・システム利用料:1万円
・事前確認審査料:長期修繕計画1件あたり1万円(2022年度は無料)
※地方公共団体への手数料が別途発生する場合があります。
・登録料5500円(税込)(2022年度は無料)
・評価・申請手数料(管理会社等または評価者ごとに費用が異なります)

注目ポイントは、どちらの制度にも修繕に関する審査・評価項目があり、修繕積立金が適正な状態で積立てられているかが評価されるほか、耐震改修がなされているかなどをチェックされる点です。
マンション老朽化が気になる築古マンションでは、これらの項目は注目点となりますので、制度を活用してマンションの資産価値を向上したい場合は、現状の見直し・改善をしておくことをおすすめします。

5.まとめ

今回は、マンション管理の2つの新制度、「管理計画認定制度」と「マンション管理適正評価制度」の違いについて解説しました。 建物の老朽化や管理費・修繕積立金の不足など、マンションの維持管理が困難になるケースが増えているなか、2つの新制度は、管理の見える化により、マンション管理の意識向上が期待されます。

「マンションは管理を買え」という言葉があるとおり、マンションの資産価値は管理体制の良し悪しで大きく変化します。築年数が古いマンションでも管理がしっかりしていれば2つの制度で認定・高い評価を得て、価値を向上することができるようになります。
管理組合の日頃の努力を審査・評価してもらうために両制度を活用し、改善点があれば対応して、マンションの資産価値向上を目指しましょう。

■あわせてお読みください。
・分譲マンションの管理規約って、どんなもの?
・マンションで自治会に入るメリットはあるの? 管理組合との関係は?
・今、何ができる? 管理組合のコロナウイルス感染防止対策 アルコール消毒の手荒れにも注意


■この記事のライター
吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2022年4月11日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合がありますので予めご了承下さい。

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