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マンションのベランダにも大きな巣をつくるキイロスズメバチ。凶暴で攻撃型のスズメバチは落ち着いて対応

キイロスズメバチ

蜂が活動する季節といって思い浮かぶのは暑い夏でしょうか。
しかし蜂の活動サイクルは、女王蜂が越冬から目覚めて巣作りを開始する春先、蜂の数が増え、巣が最大化となる秋からは新女王蜂の羽化、巣別れや越冬の準備、冬には隠れた場所での冬眠と、注意が必要なのは夏から秋の間だけではありません。
かつては自然の中で生息していた獰猛な蜂が住宅街にも順応し、最近ではマンションのベランダや高層ビルでも見かけるようになって被害が広がっています。蜂の怖さといえば、なんといっても刺されたときに起こるアナフィラキシーショック。厚生労働省の調査によると、日本では蜂に刺されたことによるアナフィラキシーショックで年間20人ほどが亡くなっています。

命にかかわる危険性のある蜂……。今回は、市街地でも見かける蜂の特徴と、そのなかでも危険とされるスズメバチの生態、マンションで巣をつくられやすい場所や予防策をご紹介します。

目次
1. 蜂のいろいろ。種類と見分け方
2. 蜂で怖いのはアナフィラキシーショック
3. キイロスズメバチの生態と巣
4. キイロスズメバチの巣を見つけたら
5. ベランダに巣を作らせないための2つの予防策

蜂のいろいろ。種類と見分け方

蜂の社会は1匹の「女王蜂」とメスの「働き蜂」、「オス蜂」で構成されています。日本に生息している蜂の仲間は4000種以上ともいわれますが、都市部でも生息し、人を刺す可能性がある蜂は下記の3種類です。

キイロスズメバチ

ミツバチ アシナガバチ スズメバチ
蜂蜜でおなじみ、体長12〜20mmでずんぐり体型。
基本は穏やかで、刺激しなければ攻撃性は低い。
体長12〜26mmの細身の蜂で長い後ろ脚を垂らしゆっくりと飛ぶ。
気性は荒くないが巣に近づくと攻撃してくる。
大きいもので45mmもあるオオスズメバチと住宅地や都市部で増加し被害数の多いキイロスズメバチが有名。
攻撃性が高く凶暴で、強い毒を持っている獰猛な種類。

今回は、都市部で最も被害を出しているスズメバチであるキイロスズメバチについてご紹介します。

蜂刺されで怖いのはアナフィラキシーショック

蜂に刺されたときに最も怖いのは、やはりアナフィラキシーショックです。食物アレルギーでニュースにもなるアナフィラキシーショックは蜂毒へのアレルギー症状としても発症します。アナフィラキシーとは、アレルギーの原因となる物質である「アレルゲン」に触れたときに全身の蕁麻疹が出るなど、過剰に反応する急性アレルギー反応のことで、そのなかでも意識障害、呼吸困難、血圧低下などを急激に起こす重篤なものが、アナフィラキシーショックです。
アレルギー体質の人や、過去に蜂に刺されたことがある場合に特に注意が必要です。

もしキイロスズメバチに刺された場合は、流水で洗い流した後、刺された部分に針が残っていれば毛抜きなどで針を抜き、傷口から毒を絞り出します。抗ヒスタミン軟膏があれば塗って冷やし、できるだけ早く医療機関で受診することをおすすめします。特にアナフィラキシーの症状が発症した場合は、救急車を要請し早急に医療機関を受診しましょう。

キイロスズメバチの生態と巣

キイロスズメバチ

キイロスズメバチの体長は22〜30mmで、何度も刺せる針と強力な毒を持っています。外見は黄色とこげ茶色の縞模様ですが飛行中はこげ茶色の部分が隠れて黄色一色に見えるため黄色い蜂を見かけたらほぼこのキイロスズメバチです。

飛んでいる蜂を見かけるのは気温が高くなる夏ですが、女王蜂が巣を作り始めるのは春先。女王蜂が1匹で小さな巣を作って産卵し、5月頃から働き蜂が羽化すると、小さかった巣も夏にはどんどんと大きくなっていきます。

キイロスズメバチ

マーブル模様の巣

キイロスズメバチの巣はマーブル模様の丸い形で大きくなると徐々に長い卵型になり、なんと1mを超えることも。大きい巣から出入りする7〜10月頃のキイロスズメバチは、数が増えたり、新女王蜂が誕生したりすることで神経質になり、元来の凶暴さがさらに増すことからとても危険です。ホバリング、細かい羽音、カチカチとしたアゴの音は威嚇行動ですので、そのような行為をする蜂を見かけたら、刺激せずゆっくりと避難しましょう。

キイロスズメバチ

大きくなると卵型になる巣

《マンションで作られる蜂の巣》
縁起物といわれる蜂の巣。一般的なイメージは一軒家の軒下でしょうか。

実はスズメバチの巣の初期段階は、私たちの日常生活の近く、隠れた狭い場所に作られます。マンションも例外ではありません。女王蜂が朽ち木や土の中などで越冬して目覚めた後、ベランダ、エアコンの室外機、壁の隙間やプランターの陰など雨風や外敵から身を守りながら小さな巣を作って産卵し、7月頃になると軒下など広いところに引越しを行うのです。なかでも都市部に順応しているキイロスズメバチの巣は、住宅の閉鎖的な空間に多く作られるケースが増えています。そのため春先になったら初期の巣をつくられないようベランダをチェックし、必要のないものは片付けて整理整頓しておきたいものです。

キイロスズメバチの巣を見つけたら

キイロスズメバチの巣を見つけたら、刺激しないことが重要です。近寄ったりつついたりは厳禁。素早い動きと濃い色のものに反応するので落ち着いてゆっくりと離れることをおすすめします。キイロスズメバチの巣は蜂の巣の中でも特に危険性が高く、近寄らずにまずは距離をとり、安全な場所へ離れることが大切です。
巣を見つけたとき、特に注意が必要なのは洗濯物。柔軟剤などの香りを好むため、巣の近くの洗濯物に止まっていることがあります。洗濯物を取り込む際にキイロスズメバチを家の中に入れないように気をつけましょう。もし洗濯物にキイロスズメバチが止まっていても慌てて追い払おうとするのは絶対にNGです。

《駆除は専門業者に依頼が安全》
巣が小さいうちでも自分で駆除するのは危険です。キイロスズメバチは少しの刺激で興奮して凶暴化するので、まずは自治体へ相談し、できるだけ専門業者に依頼することをおすすめします。

ベランダに巣を作らせないための2つの予防策

このようにとても危険なキイロスズメバチの巣。やはり、つくられてしまう前に予防することが大切です。

●4月までにはベランダをチェック!
エアコンの室外機、プランター、壁との隙間など陰になる部分の掃除をして、巣ができる隙間をなくしておきましょう。網目の小さい防虫用のネットをかけるとより効果的。

キイロスズメバチ

●ニオイで対策
蜂は一般的にニオイに敏感。キイロスズメバチも同様です。蜂が嫌いな臭いを撒いて予防しましょう。いずれの方法も洗濯物にニオイ移りすることがありますので、使用している間は室内干しにするなどの対応が必要です。

・木酢液…燻した臭いの水溶液で、希釈して使用します。ホームセンターなどで購入でき、園芸の土壌づくりなどにも使用することができます。

・ハッカ油…ドラッグストアなどで手に入るハッカ油は様々なものに使えますが、猫がいるご家庭では避けた方が良いでしょう。

・市販の忌避(きひ)剤…忌避剤を使う場合はキイロスズメバチに効く商品であることを確認して散布しましょう。熱帯魚や昆虫などを飼っているご家庭では使用に注意が必要です。

巣をつくられてしまったら、大変危険なキイロスズメバチ。まずは予防することが大切です。
夏から秋に巣を見つけてあわてないよう、事前の対策をおすすめします。

■あわせてお読みください。
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■この記事のライター
熊谷 皇
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
千葉県出身。鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境(温熱環境性能、住宅の省エネ性評価等)。住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構・日本建築センター・職業能力開発総合大学校等の講習会講師の経験を持つ技術者。ライター。
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2022年11月21日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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