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マンション修繕費用の積み立て 管理組合の創意工夫とは

マンション 修繕 費用

1. とても大切な修繕積立金

マンションの建物の耐用年数は物理的には90〜100年程度もつと言われています。しかしこれだけの期間、建物の価値と状態の良好を維持するためには適切な管理や修繕をしていかなければなりません。その上で特に重要になるのが大規模修繕です。
マンションの大規模修繕はおおむね12年に1度を目安に行われますが、かなりの高額になるので、多くのマンションでは費用の積立をしています。これは修繕積立金と呼ばれ、各区分オーナーが毎月マンションの管理組合に納入するものです。
大規模修繕には、外壁や敷地の修理、屋上の防水工事、給排水管やエレベーターなどの共用設備の修繕や交換などが含まれます。このように大規模修繕は、マンションの暮らしに欠かせない、まさにインフラを支える重要なものですが、近年、非常に気になる現象があります。大規模修繕の貴重な資金である修繕積立金が足りなくなるマンションが増えているのです。
マンション 修繕 費用

2. 積立金が足りなくなる?

マンションの修繕積立金は、25〜30年くらいの長期修繕計画に基づいて必要な額を算定し、月割りで各区分オーナーから徴収します。修繕積立金が不足する理由としてよくあるのが、長い計画年数の内に社会情勢が変わり建築資材や工事費などが高騰し、工事の費用が当初の予定よりも膨らむといったケースです。また、タワーマンション等で顕著になっているケースで新築分譲時の修繕積立金が低めとなっている場合もあるようです。
次に修繕積立金の滞納者が増加してきた場合などが考えられます。
これは今後少子化と人口の都心部集中等の影響で空き住戸の増加が懸念されていることから注意が必要です。滞納率が一定の基準を超えると金融機関からの借り入れ等も出来なくなり、修繕自体が実施できなくなる可能性もあります。

修繕積立金が不足した場合、積立金の値上げや一時金の徴収による充当が考えられますが、年数が経ったマンションでは住民の高齢化もあり、そのような方法をとることも難しくなっていくことでしょう。修繕積立金が不足すると、適切な修繕やメンテナンスができなくなり、住民の生活の質や資産価値の低下にもつながります。
これは、管理組合をはじめマンション住民としては、なんとしても避けたい事態ですが、工夫しだいで、一時金など新たな負担を増やさずに積立金を補うことも可能になります。その方法について考えてみましょう。

3. 管理費の見直しも

管理費は修繕積立金とともに毎月、各区分オーナーが管理組合に納入するものです。こちらは、マンションの共有部や敷地・設備などを、日々維持管理するための費用になりますが、その項目は、共有部の清掃や光熱費・管理人業務・損害保険料・理事会や管理組合の運営に関する事務や通信費など、非常に多岐にわたります。
マンションの管理は管理会社に委託することが一般的ですが、これらの費用の各項目について、ムダはないか削減できるものはないかなど、管理会社と相談してみることが大切です。
少しでも削減できれば、その分を修繕費用にまわせます。

4. 助成金も調べてみよう

また、各地、自治体によっては、マンションの修繕や維持管理に掛かる費用を助成しているケースもあります。助成できる工事の内容や要件などは自治体により様々なので、地元役所の建築課などに問い合わせてみてください。

5. 修繕積立金を運用する

修繕積立金は元本割れが許されないため、多くの管理組合では預金口座に預けっぱなしにしていますが、修繕積立金を運用する方法もあります。
例えば住宅金融支援機構等のマンションすまい・る債の2018年度の募集利率は0.143%です。一方、2018年度4月募集の10年満期の新規国債の利回りが0.05%なので、国債よりも利息は高いため「運用」という方法も一考です。

6. マンション自体が「稼ぐ」方法も

さらに、修繕にあてるための費用をマンションに「稼いで」もらう事例も増えています。例えば、屋上や敷地内に広告看板を設置したり、携帯等基地局を設置し収入を得ている場合があります。敷地や駐車場の使われていないスペースなどに自動販売機を設置したり、コインパーキングを運営する業者に貸し出すなどの有効利用をしているマンションもあります。また、電柱を敷地内に設置して借用費用を得ていたり、敷地をテレビドラマのロケ地に貸し出したり、屋上にソーラーパネルを設置して「売電」を行っているケースもあります。
中にはクリーニングの取次を行い手数料を得ている事例もあります。

これらの方法を実行するには、総会による住民の同意が必要であるなどのハードルもありますが、このように収入を得ることができれば、住民の減少や高齢化があっても修繕積立金を確保していくことができます。

以上のことから、マンションの修繕費用をまかなうには、様々な方法があることがわかります。管理組合だけでなく、住民全体で知恵を出しあっていくことも大切です。
但し、マンション管理組合員以外の外部からの収益事業による収入があるときは法人税の申告と納税義務が生じるので注意が必要です。


《この記事のライター》
舘林 匠
北海道出身 飛行機の整備士を目指し、日本航空学園千歳校を卒業後なぜか建築の道へ。
一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士、宅建士をはじめ25の資格を有し、
バイク、ダイビング、DIY、料理など多趣味でちょっと飽きやすい性格。
最近はドローンにはまりプライベート機を3機保有している。
KENSO Magazine編集長 兼 ライター

(2018年11月1日記事更新)

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