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マンションの長期修繕計画 大規模修繕と計画見直しで行うマンション管理

マンション 長期修繕計画

マンションの区分所有者は管理組合に入らなければなりません。管理組合は長期修繕計画を立ててマンションを管理しますが、長期修繕計画自体は管理会社・プロの業者に任せる場合が多いため、計画の読み方や考え方をあまり理解していない方は多いのではないでしょうか。末永く快適に住み続けられるマンションにするためには、長期修繕計画をどのように読むべきなのかを把握することが大切です。マンションの長期修繕計画の読み方や考え方についてのポイントを解説します。

目次
1. マンションの長期修繕計画とは? 長期的視点でマンション管理
2. マンションの長期修繕計画にかかる費用に対する積立金のポイント
3. マンションの長期修繕計画でチェックするべき修繕部分とは?
4. なぜ見直しが必要? 大規模修繕ごとに行う見直しとは

マンションの長期修繕計画とは? 長期的視点でマンション管理

マンションの長期修繕計画とは、約30年の長期的視点で快適なマンションの状態を維持するための管理計画のことをいいます。最近では、2回の大規模修繕工事を含めた内容で作成することがガイドラインに示され、一般的になってきました。マンションは区分所有者が管理組合を組織し、共用部分の維持や修繕を行うことが定められていますが、長期修繕計画では文字通り長い期間、維持することを考えなければなりません。
マンションの維持には多額の費用がかかります。その費用を区分所有者から徴収するため、計画的に行わないと一時的に重い負担や借入が必要となってしまう可能性があります。また、工事内容によっては集めた資金では不足してしまい、必要な工事ができなくなりマンションの耐久性や快適性が維持できなくなってしまいます。

このような状態を回避するため、あらかじめ将来の修繕工事の内容や時期、予算などを計画したのが長期修繕計画です。マンションの長期修繕計画で検討・設定する主な項目を、あらかじめ把握しておきましょう。

長期修繕計画書に記載されている主な項目は、修繕内容と資金(予算)に関わるものです。

●修繕内容、修繕周期の設定
大規模修繕工事で行う修繕の内容や、定期点検の頻度など、マンション維持のため定期的に行っていく工事内容が記載されています。
外壁タイルや屋上防水など「建物」に関わるものや、配管、消防設備、エレベーターなど「設備」に関わるものと点検内容や修繕する内容は様々です。雨風にさらされたりして比較的劣化の早い鉄部の塗装などは5〜7年ごとといった短い周期で行われますが、長期的に行う修繕や設備の取替では材料の耐用年数から20年や30年といった長いスパンで検討することになります。これらをとりまとめて効率的に行うためにも、長期修繕計画は重要なのです。

●収支計画
多くの修繕を一度に行う大規模修繕以外にも、定期的な点検や小規模な修繕などで総額はかなり大きな金額になります。これを把握するため、長期修繕計画であらかじめ収支計画を考えておきます。費用は修繕積立金や修繕積立基金などの名称で、修繕や点検にかかる費用を区分所有者から徴収して積み立てるのが一般的です。各設備の修繕にかかるそれぞれの費用をリストアップし、収支に無理がないか、その予算を参考に収支計画を立てます。

マンションの長期修繕計画にかかる費用に対する積立金のポイント

マンション 長期修繕計画

長期修繕にかかる費用は、マンション区分所有者から徴収した積立金を使います。
積立金の徴収方法として、新築当初の積立金額を低く設定し、その後段階的に増額していく「段階増額方式」と、マンション新築時から将来どれくらいの修繕費がかかるのかを想定し、修繕工事にかかる費用の合計金額から按分して一定の金額を徴収していく「均等積立方式」の2種類があります。

※マンションの修繕積立金については下記記事も参照ください
マンション修繕積立金は「段階増額積立方式」と「均等積立方式」の2種類! それぞれのメリットとデメリットは?

どんな方式で、いくら徴収するかという資金計画と、修繕にかかる資金が適切であるか、予算に無理がないかなどをチェックし、定期的に長期修繕計画と修繕積立金計画を見直していきます。

●修繕積立金・修繕積立基金
修繕や点検のために積み立てる費用として「修繕積立金」と「修繕積立基金」があります。修繕積立金は、マンションの竣工から大規模修繕に備えて毎月区分所有者から積立金を徴収するものです。
一方、修繕積立基金は、一般的には新築マンションを買うときにかかる費用で、「修繕積立準備金」「修繕積立一時金」とも言われています。こちらも、マンションでは建物を長く快適な状態に保つため、大規模修繕工事の費用に充当するために、修繕積立金はこれに備えて積み立てておく費用で、新築マンションの場合は、毎月の修繕積立金の額を抑えるため、最初にまとまった額の修繕積立基金を集めるのが一般的です。

マンションの長期修繕計画でチェックするべき修繕部分とは?

マンション 長期修繕計画

マンションの長期修繕計画を作成する上で、チェックすべき点はどのようなものがあるのでしょうか。修繕を行う部分や時期や想定している予算が適切か、細かい部分まで考え計画することが大切です。

・塗装:外壁や屋上、廊下壁及び天井、玄関ドア枠、鉄骨階段など
・タイル:外壁や廊下壁、バルコニー壁など
・防水:屋上及び各階のバルコニー・開放廊下や外壁などの目地など
・駐車場設備:機械式駐車場、舗装や車止め、駐車スペースの区画など
・エレベーター:ゲージ、昇降設備、各種スイッチなど
・配管、ガス設備:給排水管や給湯管、ガス管など
・耐震改修や省エネ改修

エレベーターや機械式駐車場などでは定期的なメンテナンスに加え、耐用年数や部品供給期限もあるので、20年〜30年ほどでリニューアルの必要が出てきます。

長期修繕計画で確認すべきことは多岐にわたりますが、生活するうえで安全に関わることも多くあるため、不具合が起きる前に対処していくことが大切です。

なぜ見直しが必要? 大規模修繕ごとに行う見直しとは

実際にしっかりと修繕計画を立てていても、想定していた劣化の状況と実際の劣化の状況は異なります。そのため、建物診断(劣化診断)や大規模修繕工事施工後の経過観察、大規模修繕後の収支といった観点から長期修繕計画は常に見直しが必要です。

※マンションの長期修繕計画については下記記事も参照ください
マンションの長期修繕計画と劣化診断の関係を知っておこう

マンションや建築に関わる素材や資材、設備は、年々進歩しています。新たな素材の開発により耐久性が向上した設備に変更することで、当初計画していた長期修繕計画とは差異が生じるため、その場合は計画を見直すことになります。
また、物価の変動により長期修繕計画を立てた当初は十分と思われていた積立金額も、いざ工事をする段階で不足する場合も出てくるため、物価の上昇とともに修正していく必要があるでしょう。

大規模修繕ごとに見直す長期修繕計画の見直しポイントは、以下が挙げられます。

●内容
大規模修繕を行った後で工事内容と工事実施直後の修繕積立金の総額を確認し、国のガイドラインなどを確認した上で、現在の長期修繕計画の妥当性や見直しの必要性を検討します。
次の大規模修繕工事の際に必要となる工事内容を専門家に相談し、長期修繕計画の見直しを行うとよいでしょう。
長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント(国土交通省)
マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省)

●積立金
次の大規模修繕工事を建物の状態を見据えて、積立金の計画をします。技術革新やインフレなどにより建築資材が高騰する場合もあるので、工事費用が高くなることも含めて計画しましょう。

●駐車場の運用問題
少子高齢化により駐車場の契約が埋まらず駐車場収入が減少し、維持費削減のために機械式駐車場を平面駐車場に変更するといった事例も多く、駐車場が埋まらない場合のスペース活用法や、選ばれるマンションになるための工夫や対処なども考えていかなければなりません。

このように、修繕計画は長期的な視点でマンション管理を行わなければならないため、計画や見通し、見直しが甘いと共用部分の維持や修繕が思うようにいかず、居住者に負担をかけるばかりかマンションの資産価値を下げることにもなりかねません。
いつまでも快適に住み続けられるマンションづくりのため、長期修繕計画はプロに任せきりにするのではなく、計画の読み方を理解しながら、自分ごととして行っていくことが大切です。

■あわせてお読みください。
・マンションの長期修繕計画は見直すべき?
・マンション修繕積立金は「段階増額積立方式」と「均等積立方式」の2種類! それぞれのメリットとデメリットは?
・マンションの長期修繕計画と劣化診断の関係を知っておこう
・マンションでの防災対策。一年に一度の備蓄の日に日常備蓄をチェック!


■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2024年6月10日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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