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マンションの便利な設備、宅配ボックスやストッカー。閉じ込め事故にご注意を!

宅配ボックス

留守中でも荷物の受け取りを可能にする宅配ボックスは、マンション住まいの人などに人気の便利な設備です。
宅配ボックスは再配達を減らし、労働力不足の解消や二酸化炭素削減に貢献する一方、子どもの閉じ込め事故を引き起こす可能性もあります。特に夏は気温が高く、短時間でも閉じ込められると命の危険があるため注意が必要です。
そこで、今回は宅配ボックスの必要性を解説しつつ、マンション設備の閉じ込め事故を防ぐための注意点などをご紹介します。

目次
1. 2024年問題・働き方改革 宅配ボックスの社会的な必要性
2. マンション住まいに便利な宅配ボックスやベランダストッカーの注意点
3. 子どもの閉じ込め事故 どのくらいの大きさ、高さから起きる?
4. もしもの前に! 内側から開ける方法の確認を

2024年問題・働き方改革 宅配ボックスの社会的な必要性

宅配ボックス

人手不足が続く物流業界で再配達問題が浮き彫りになる中、宅配ボックスの設置がもたらす効果に注目が集まっています。宅配便の取扱個数はネットショッピングの普及を背景に年々増加しており、物流は私たちの豊かな生活を支える重要な社会インフラとして不可欠なものとなっています。

ところが、長時間労働を見直す「働き方改革」や、2024年4月から労働時間に上限が設けられることで予想されるドライバー不足、いわゆる「2024年問題」が懸念されています。

届け先の不在や対面での受け取り拒否などによって、配達員が荷物を持ち帰って再度配達する「再配達」は、長時間労働や二酸化炭素排出の増加を加速させる要因の一つです。
2020年度の宅配便取扱個数と再配達率の数値をもとにした推計では、再配達で年間約25.4万トンの二酸化炭素排出が明らかになりました。これは東京23区の約1.7倍に相当するほどの杉が、一年で吸収する二酸化炭素と同じ量です。

過去の実証実験では宅配ボックスの導入で再配達率が大幅に減少し、労働時間の削減や二酸化炭素排出量の低減につながりました。

宅配ボックスのない集合住宅には積極的な導入が求められるだけでなく、設置済みでもデジタル技術の活用によってさらなる効率化が期待されています。

マンション住まいに便利な宅配ボックスやベランダストッカーの注意点

宅配ボックス

このように宅配ボックスはとても便利な設備といえるのですが、子どもの事故を引き起こす原因となる可能性があります。
2016年6月には東京都内で7歳の子どもが友人とかくれんぼをしていて、マンションのエントランス部分に設置された宅配ボックスの中に閉じ込められる事故が発生しました。同様の事故は2012年以降、東京消防庁の管内で他にも3件発生しています。

いずれのケースもかくれんぼなどの最中に子どもが宅配ボックスに入り込み、扉が開けられなくなったことが原因です。自動ロック機能を持った宅配ボックスの場合、意図せず扉がロックされてしまうことや、他の子が外から扉を閉めた場合、その子どもも開け方が分からない可能性もあります。

子どもの閉じ込め事故には、宅配ボックス以外にベランダストッカーや物置ユニットも挙げられます。子どもがよじ登れる高さにあるベランダストッカーや小型物置は、閉じ込め事故の危険性以外にも、ベランダからの転落事故につながる恐れがあるので一層注意が必要です。子どもが入り込まないようにしたり、足場として利用できないように設置場所を工夫するだけでなく、転落防止の器具や安全装置をベランダの柵に取り付けることも必要です。

また、子どもたちにこうした設備に関係する事故の危険性を教え、本来の用途と違う使い方をして遊ばないように繰り返し伝えることも大切です。

子どもの閉じ込め事故 どのくらいの大きさ、高さから起きる?

こうした事故は宅配ボックスだけで起きているわけではありません。ここでは過去の閉じ込め事故の事例を検証するとともに、子どもの閉じ込め事故について配慮すべきポイントを確認していきます。
宅配ボックスで発生した事故では、閉じ込められたボックスのスペースは高さ42cm×幅45cm×奥行49cmの大きさで、扉は床から42cmの高さにありました。また、ドラム式洗濯機に閉じ込められた事故では、床から40cmの高さに開口部があったそうです。
容量が50リットル以上で内寸の幅・高さ・奥行きの全てが150ミリ以上のものは、子どもが誤って閉じ込められる可能性を考慮する必要があるといわれています。

また、大きさだけでなく気密性と温度の問題も忘れてはなりません。
子どもは体温の調節機能が未発達なため、体に熱がこもって体温が上昇しやすい傾向があります。よって、仮に短時間でも、気密性が高く温度が上昇しやすい空間に閉じ込められると大変危険です。

日本自動車連盟(JAF)が夏の炎天下で実施したテストによると、エアコンで適温に保たれた車内でもエンジン停止の15分後には、熱中症指数が危険レベルに達したというデータもあります。宅配ボックスで起きた過去の閉じ込め事故は大事に至りませんでしたが、気温が高かったら重大事故になっていた可能性があります。
さらに、ドラム式洗濯機に閉じ込められた事故の例で見ると、ドラム内の酸素濃度は扉が閉まった状態で約23分に酸素欠乏症が発生する値まで低下しました。気密性が高いと中で叫んでも聞こえにくく、発見が遅れてしまう可能性もあります。

このような危険を防ぐためには宅配ボックスに入らないことが大前提ですが、万一閉じ込められてしまった場合は熱中症や酸素欠乏症になる前に、可能な限り早く脱出することが重要です。

もしもの前に! 内側から開ける方法の確認を

何よりも重要なのは宅配ボックスやベランダストッカーなどで遊ぶことや、覗き込みが危険な行為であることを日頃から繰り返し伝え、子どもが危険性を理解できるように促すことです。しかし、子どもは好奇心旺盛で新しいものには強い興味を示す傾向があり、特に設備の設置や引っ越しなどで環境が変わった直後は予期せぬ事故が起きる可能性が高まります。
宅配ボックスなどを設置する際は万が一の事態に備え、内部から緊急開錠できる製品を選ぶのがおすすめです。

内部のレバーに触れるだけで解錠されるものや、レバーを上げて解錠するものなど、製品によって違いがあります。ボックスの中に閉じ込められた場合、どのようにすれば内部から扉を開けられるのか、子どもと一緒に確認しておくべきでしょう。

再配達問題の解消に期待が集まり、二酸化炭素の削減にも有効な宅配ボックスは、マンションには積極的に導入したい設備のひとつです。
しかし、一方では子どもの閉じ込めなど事故のリスクも排除しなければなりません。住民一人ひとりが安全に関する意識を持つことはもちろん、内部から緊急開錠できるタイプを導入することも大切です。
マンションの宅配ボックスなどに見られる設備の利便性だけでなく、そのリスクも同時に理解することで閉じ込め事故を未然に防ぎ、メリットを最大限に活用した豊かなマンションライフを実現してください。

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■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者

(2024年11月11日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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