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マンション大規模修繕工事におけるリニューアルとリノベーションの違いとは

マンション大規模修繕

1. 大規模修繕工事とリニューアル、リノベーション

「マンションの外観をリニューアル」、「リノベーション済みマンション」といった言葉を耳にしたことはありませんか?
分譲マンションにおけるリニューアルやリノベーションは大規模修繕工事のときに行うことが多いですが、必ずしも行われるとは限りません。また、リニューアルとリノベーションは同様に思われがちですが、実際には意味が異なります。

今回は、マンションのリニューアルとリノベーションの違いについて考えます。

その前に、分譲マンションの大規模修繕工事について簡単に確認しておきましょう。マンション大規模修繕工事とは、建物の劣化を防ぎ住宅としての性能を維持するために、長期的かつ計画的に行う修繕工事のことです。何年周期で行うかはマンションによって異なりますが、12年に1度を目安に行われるのが一般的です。外観や共用部全般の修繕ですから、工期・費用ともに大がかりな工事になります。
また、マンション全体のリニューアルやリノベーションも大規模な工事となるので、大規模修繕工事のときにあわせて行うのが効率的です。

2. リニューアルを修繕との違いから考える

マンションのリニューアルとはどのようなものでしょうか。修繕とは違うのでしょうか。
「リニューアル(renewal)」の本来の意味は古くなったものを更新・再生することで、建物においては改修にあたります。ここで、マンションの「修繕」と「リニューアル(改修)」の違いを知る必要がありそうですね。
そもそも「修繕」は、経年やその他の原因で劣化した建物や設備の全体または一部を、新築時の性能まで回復させることを目標にし、建物・設備を支障なく使える状態にすることを言います。その大規模なものが大規模修繕工事です。

これに対し、「リニューアル(改修)」は建物や設備の性能をグレードアップさせることです。
どのようなマンションでも年数が経てば老朽化し不具合が発生しますが、その都度あるいは定期的に「修繕」をして住宅としての性能を維持していけばよいように思えます。しかしながら、時代によってライフスタイルは変わり、住宅に求められる性能や外観デザインも変わります。そのため、長い目で見ると、必要な「修繕」を行い新築時の性能まで回復させたとしても、時代遅れの性能や外観のマンションになってしまう恐れがあるのです。

つまり、規模の大小に関わらず「修繕」だけでは、住宅としての性能は維持できても資産価値を維持するのはむずかしいと言えるのです。そこで、現代の暮らしのニーズにあった性能を満たし、現代的なデザインの外観を整備して価値を維持していくためには、「修繕」プラス「リニューアル(改修)」の考え方が重要になります。具体的には、例えば、マンション大規模修繕工事で全住戸の窓のサッシを交換する場合、新築時と同等のサッシに交換するのであれば「修繕」に過ぎません。一方、これが省エネや防犯など、最新の性能を備えたサッシへの交換であれば「リニューアル(改修)」となります。
マンション大規模修繕

3. リノベーションでさらに価値をプラス

では、次に「リノベーション(renovation)」についてみていきましょう。言葉の意味としては、こちらも建物においては「改修」の一部ですが、「リニューアル」と比較すると革新や刷新という意味合いが強く、用途を変えずに既存の建物の性能やデザイン、価値を向上させる手法を指します。「リニューアル」と似ていますが、それにさらなる価値を加えるものと考えてよいでしょう。

具体的な事例としては、マンション大規模修繕工事のときにエントランスの内外装を現代風の材料を使って一新し、デザイン性も高めるといったケースが「リニューアル」にあたります。「リノベーション」では、さらに、宅配ボックスを設置したり、バリアフリーの仕様にしたりするなどして、利便性(性能)をより高めることで資産価値を向上させます。このように「リノベーション」とは、マンションの性能と価値を最大限まで向上させようとする手法なのです。

いつまでも、暮らしやすく資産価値の高いマンションにしていくためには、適切なタイミングでリニューアルやリノベーションを行うことが大きなポイントになります。ただし、リニューアルとリノベーションのどちらにするのか、何回目の大規模修繕工事で行うのかなどについては、管理組合の中でよく協議することが必要です。


《この記事のライター》
大塚 麻里絵
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター

(2019年4月26日記事更新)

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