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タワーマンション大規模修繕に最適な周期は? 建物診断が重要!

タワーマンション大規模修繕

1. タワーマンションの大規模修繕は大変?

首都圏や関西圏を中心に増加しているタワーマンションは、ここ数年の間に大規模修繕の時期を迎える物件が多いとみられています。
とはいえ、さまざまな要因から、タワーマンションの大規模修繕は通常のマンションよりも大がかりになりがちで、むずかしいと言われています。また、12年に1度が一般的とされる大規模修繕工事の周期の目安も、タワーマンションにそのまま当てはまるとは限りません。

どのようなタイミングと内容で大規模修繕工事を行うかは、建築物や設備の劣化の進み具合によって異なります。タワーマンションの大規模修繕工事の最適な周期を見極めるには、建物診断を行い、劣化の度合いを正確に把握することが欠かせません。

そこで今回は、タワーマンションの建物診断の重要性についてお伝えします。

2. タワーマンションの大規模修繕工事が難しい理由

タワーマンションとは、通常20階建て以上の超高層マンションのことをいいます。その大規模修繕工事が、一般的な中高層マンションよりも難しいといわれるのは、どうしてでしょうか。
主な理由として次のようなことがあげられます。

・高層部分の工事を施工するためにゴンドラなどの特殊な足場が必要で、養生のための仮設工事も大がかりになる。

・インフラ設備であるエレベーターが超高層に合わせた特別仕様になっていること、駐車場も自走式よりも機械式のタワー型のものが多いことなど、設備に特殊性がある。

・内廊下のエアコンやプール、ラウンジなど付帯設備が充実しているマンションが多く、設備が充実している分だけ修繕費も重なる。

・高級な内外装材を使っている場合は、材料の確保が難しいことや、施工法が特殊になることがある。

以上はあくまでも一般的な例であり、詳細は個々の建物により異なりますが、主にこうした理由から、タワーマンションの大規模修繕工事は複雑で大がかりなものになりがちです。
それに伴い、通常のマンションに比べて修繕工事の施工期間も長くなり、費用も高額になってしまうことが多いのです。

3. 住民の合意形成も大変?

これに加え、タワーマンション大規模修繕工事では、住民の合意を取りつけるのも困難だといわれています。タワーマンションは一般的に戸数が多いため、住民数も多くなります。住民数が多いほど、高額な修繕費用に関する意見をまとめるのは難しいものです。

このようなことから、技術的な面でも、費用の面でも、費用と住民への心的負担に係る工期の面からも、タワーマンションの大規模修繕工事は複雑になりがちです。だからこそ、住民の合意をスムーズに形成するためにも、効率よく効果的な大規模修繕工事ができるよう、最適な工事の時期を見極めて計画を立てることが欠かせません。そこで、重要なカギとなるのが建物診断です。
タワーマンション大規模修繕

4. 建物診断で劣化の状態を正確に把握

建物診断とは、住宅などの建築物の状況を把握するための調査(診断)のことです。建築士をはじめとする各種の専門スタッフが現地調査を行い、建物や設備の劣化の程度や周辺環境を調べます。マンションの場合、建物診断の依頼先は、マンションの日常管理を行っている管理会社、マンションの大規模修繕工事の設計・監理業務を得意とする設計事務所、大規模修繕工事を請け負う施工会社、建物診断だけを専門で行う会社などがあります。

マンションの建物診断といえば、大規模修繕工事の前にセットで行うものという認識があるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。新築時からの保証期間が切れるタイミングや、老朽化が進行した築20年以降などにも実施するのが良いと考えられます。

大規模修繕工事の実施を前提としていても、建物診断の結果から想定よりも劣化が少ないことがわかれば、修繕工事を数年後に先送りできる可能性もあります。その場合、費用の負担も違ってくるでしょう。

客観的で中立性の高い調査となることを重視するのであれば、建物診断と大規模修繕工事は別々の会社に依頼するのがいいかもしれません。また、建物の状況を日常的に見ている管理会社に依頼したいという考え方もあります。

ただし、タワーマンションの大規模修繕工事や建物診断は、世間一般として通常のマンションと比較して施工実績は多くありません。さらにその中で、各社ともタワーマンションの調査実績をどれだけ積み上げられているのかにはばらつきもあります。一般論だけでは片づけられない部分が多くありますので、調査を頼みたい会社について主体的によく調べてから調査を依頼したいものです。

マンションの大規模修繕工事の周期は、長期修繕計画により設定されているのが一般的です。
しかし、材料・設備のクオリティ、気候の変化などにより、建物の劣化の進み方が想定とは違ってくることは多々あります。
特にタワーマンションでは、建物診断によって長期修繕計画を見直し、大規模修繕工事の適切な時期を見極めることが大切です。


《この記事のライター》
大塚 麻里絵
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター

(2019年6月3日記事更新)

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