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マンション寿命を考える 2回目の大規模修繕は何を優先する?

マンション 寿命
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1. 大規模修繕は回を重ねるもの

どのようなマンションでも建物は年数とともに劣化していきます。劣化を抑えて資産価値を維持し、いつまでも快適に暮らせるようにするためには、日ごろからの小規模な修繕やメンテナンスと長期的な計画にもとづいたマンション大規模修繕が欠かせません。このうち、マンションの寿命にとって特に重要で、高額な費用がかかるのが大規模修繕です。

マンションの大規模修繕には、外壁塗装や屋上防水、給排水管や各種設備の更新などが含まれます。通常、マンションの大規模修繕は管理組合が作成した長期修繕計画にもとづき、平均して12年に1度のタイミングで行われます。例えば、12年に1度を例にした場合、建物の耐用年数の間12年周期で何度もその時期がめぐって来ることになります。

そのようにしてマンションの大規模修繕を重ねていくことになりますが、毎回同じ内容の工事をするわけではありません。それぞれの設備や建築仕上材の寿命は異なるからです。また、立地条件による劣化の進行や工事内容が異なると、かかる費用も変わってきます。

2. 2回目の大規模修繕は、どんな時期?

1回目のマンション大規模修繕は補修で済む部分や設備がほとんどですが、2回目には取替えの必要な設備や部材が出てきます。また、3回目には取替えになる設備が多くなり、住民の高齢化によるバリアフリー化などへのニーズも発生するでしょう。

こうしたことから、回を重ねるごとにマンションの大規模修繕の費用は違ってきます。一般的に1回目より2回目といったように費用は大きくなり、特に3回目は2回目の1.5倍程度になるともいわれます。3回目の大規模修繕を迎えるころには、住民の高齢化や住民数の減少などにより、増えていく修繕費用に対し修繕積立金が先細っていることも少なくありません。修繕積立金が不足すれば一時金の徴収などが考えられますが、そのような追加の負担はなるべく抑えたいものです。そこで、重要になるのが2回目のマンション大規模修繕で何を優先して行っておくかです。

設備や部材の多くは耐用年数が来ていても使えることがほとんどですが、だからといって取替工事を先送りするのは、3回目の修繕費用をさらに膨らませることや、突然の故障のリスクにつながります。したがって、まずは、2回目の大規模修繕とその前後で取替えや修繕のタイミングに来るものに関しては、先送りせずに工事を済ませてしまうことが大切です。参考までに、20年から25年で取替えが必要とされる設備等には次のようなものがあります。

・屋根:露出屋上防水の撤去・新設 24年
     傾斜屋根の撤去・葺替え 24年
・機械式駐車場:取替え 20年
・貯水槽:取替え 25年
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3. 資産価値と住民ニーズの見直しも

2度目のマンション大規模修繕の時期といえば、築20年が過ぎたころになります。この築年数になると住む上での基本的な性能面では問題はなくても、新築マンションと比較するとデザイン性や最新設備において見劣りするようになってきます。資産価値を維持できていれば、必然的にマンションの寿命も長くなります。そのためには、必要な修繕だけではなく、何らかの改良や改善を加えていくことが欠かせません。また、20年も経つと住民のライフスタイルも大きく変わりますがマンションに独特の個性が根付いてくる時期でもあります。

そのため、2回目のマンション大規模修繕はマンションの資産価値を改善する良い機会といえますが、住民のライフスタイルの変化にも対応したいものです。
例えば、エントランスホールはマンションの顔となる部分ですが、バリアフリー化も兼ねてデザイン性も高めれば、価値の向上につながります。一方、駐車場についていえば、20年のうちに仕事や子育てを終え自動車を手ばなす住民も出てきます。そこで、機械式を平置きにする、今後の修繕については利用者だけの負担にするなど、将来の費用負担も含めた選択が考えられます。

次世代に資産を引き継ぎ若い世代も暮らしたくなるような価値あるマンションへ改修していくことも大規模修繕の大事な役割と考えています。
とはいえ、以上はあくまで例にすぎません。マンションごとに実情は異なります。必要な修繕に加え、資産価値の維持・向上や住民ニーズの変化も見すえながら、何を優先させるかについて住民の積極的な取り組みと合意形成を図ることが重要です。


《この記事のライター》
舘林 匠
北海道出身 飛行機の整備士を目指し、日本航空学園千歳校を卒業後なぜか建築の道へ。
一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士、宅建士をはじめ25の資格を有し、
バイク、ダイビング、DIY、料理など多趣味でちょっと飽きやすい性格。
最近はドローンにはまりプライベート機を3機保有している。
KENSO Magazine編集長 兼 ライター

(2018年11月1日記事更新)

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