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マンションにコウモリが出現!? コウモリの駆除と予防はどうするべき?

アブラコウモリ

夕暮れ時の街中で、ひらひらと軽やかに宙を舞うコウモリ。都市部でも、身近にコウモリが生息していることをご存知でしょうか? コウモリは昔から縁起の良い生き物として親しまれ、「幸守り」「幸盛り」などの名前がつけられています。しかし、近年では、人に感染する病原菌やウイルスなどを媒介する可能性があることで注目されています。もし、あなたの住んでいるマンションでコウモリを発見した場合、どのように対処すればよいでしょうか?

今回は、日本でよく見られるコウモリの実態について、正しい対処方法や寄せ付けないための対策について説明します。

目次
1. 昨今のコウモリ事情。気になる生態と住み着きやすい場所
2. コウモリを安全に駆除したい 正しいフンの始末と駆除方法
3. マンションのコウモリ事情に合わせた対策とは

昨今のコウモリ事情。気になる生態と住み着きやすい場所

アブラコウモリ

アブラコウモリは、主に本州以南の住宅街でよく見かけられる種です。この種は家屋の隙間をねぐらにしており、「イエコウモリ」とも呼ばれています。体長は5cm前後で、体重は5〜10gほどあり、主に蚊や甲虫などの小さな虫を餌としています。

コウモリは哺乳類の中で唯一飛行できる生き物であり、その翼のように見える部分は実は前肢(まえあし)です。この前肢の5本の指の間に伸び縮みする膜である「被膜」が発達しており、これを使って飛行します。
都市部でも、夕暮れ時には、公園、農地、河川やため池など広い場所で、餌を探し求めて飛び回る姿を観察できます。コウモリは飛びながら、頭部から超音波を発し、餌の位置を特定し捕食します。

コウモリが一度に生む子どもは2〜4頭です。その繁殖は特殊で、交尾のあとに貯精したまま冬眠し、その冬眠明けに排卵・受精を経て初夏に出産します。子どもは1gに満たないほど小さく、母乳によって成長し、その年の秋には成体となります。

アブラコウモリは家族単位で集団をつくり、居住エリアを共有します。集団が大きい場合、被害も増加する懸念があるため、早めの対策が必要です。
アブラコウモリは寒さや雨風をしのげる隠れ家を求めて、戸袋や屋根瓦、換気口などの小さな隙間から入り込むことがあります。都市や市街地のような人間が作り出した環境には、コウモリにとって居心地の良い場所が多く存在するというのが、昨今のコウモリ事情といえます。

アブラコウモリはかつて本州以南に生息していましたが、近年では地球温暖化の影響を受けて北海道でも観察されるようになりました※1。また、最近では関西地域で、コウモリの餌となるカメムシが大発生したというニュースもありました。
生態系の変化は、気候だけでなく他の要因も影響しており、これが生息条件や繁殖成功率などに影響を与えています。これまでコウモリはあまり目にすることがなかったかもしれませんが、地球温暖化が進むことで、マンションにおけるコウモリ対策がますます重要となる日が来るかもしれません。
※1 参考:北海道コウモリマップ(道北コウモリ研究センター)

コウモリを安全に駆除したい 正しいフンの始末と駆除方法

日本に生息するコウモリは臆病でおとなしい性格で、吸血行為も行わないため、直接的な危害は心配されません。しかし、以下のような間接的な被害が起こる可能性があります。

・ コウモリの体に付着したダニやシラミの侵入
・ コウモリが媒介する病原菌の感染
・ コウモリの糞尿による悪臭の発生と家屋の劣化
・ 夜間の活動音や鳴き声による騒音の発生

ただし、コウモリの駆除に関しては、野生生物保護や衛生面の観点から慎重に行う必要があります。コウモリ被害に対処する場合に留意すべきポイントを以下にご紹介します。

●許可なくコウモリを捕獲しない
コウモリを含む野生生物の捕獲や殺傷は、鳥獣保護管理法により禁止されており、これに違反すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。特別な理由がある場合でも環境大臣又は都道府県知事の許可が必要となります。

●コウモリのフンの始末に注意
コウモリは決まった場所にフンをする傾向があり、その存在に気付くのは、フン害が発生したときです。フンは黒色で、長さ5〜10mm程の細長いもので、軒先やベランダに大量に存在する場合、それはコウモリのものである可能性が高いです。

コウモリのフンには病原菌が含まれているおそれがあるため、フンを始末するときは、マスクや手袋を着用し、吸い込んだり直接触れないように気を付ける必要があります。乾燥したフンは崩れやすく、病原菌が舞い上がることがあるため、掃除機の使用は避けるべきです。消毒液などをフンに吹きかけ、箒や雑巾などを使い掃除し、集めたフンはビニール袋などで密封し廃棄しましょう。使用済みの雑巾は病原菌に汚染されている可能性があるため、密閉して廃棄しましょう。掃除後はフンがあった場所の周辺を消毒することも忘れずに行いましょう。

●コウモリの駆除には侵入経路も考慮
コウモリを駆除するには、コウモリを追い出し、侵入経路を塞ぐ必要があります。屋根裏など比較的広い空間に棲みついているコウモリを駆除する場合は、くん煙剤を使って追い出すのが効果的です。戸袋や外壁の隙間などの空間に棲みついているコウモリに対しては、ハッカ油を主成分とした忌避スプレーの使用が有効です。

※ペットを飼っている場合は、くん煙剤はペットに害のないものを使い、ハッカ油のご使用はお控えください。

コウモリは1cmほどの小さな隙間からでも侵入できるため、駆除だけでなく侵入経路をしっかり塞ぐことが大切です。コウモリの駆除にはリスクがともなうため、コウモリの生態に詳しい専門業者に依頼することがおすすめです。
また、自治体によってはスズメバチの巣の駆除に助成金制度があることもありますが、コウモリの駆除には助成金制度があることは少ないようです。自治体によってはコウモリの駆除の業者を紹介している場合もあるため、お住まいの自治体のホームページを確認してみてください。

マンションのコウモリ事情に合わせた対策とは

アブラコウモリ

マンションのコウモリ事情は、建物の構造・築年数・管理の状態、周囲の環境などの影響を受けます。ベランダ・共用スペースの雨どい・壊れた天井など、ちょっとした隙間があればコウモリは入り込む可能性があります。ここではコウモリを寄せ付けない対策を紹介します。

●コウモリが苦手なもの
・ハッカの香り
コウモリは、ハッカの香りを嫌います。
ハッカの成分を含む忌避剤を使用すれば、効果的にコウモリを追い払うことができます。ただし、忌避剤の効果は一時的なものであるため、使用方法を確認し、定期的に取り換えることが重要です。

・超音波発生装置
超音波発生装置も一時的な効果があります。ただし、コウモリが適応能力を発揮して慣れてしまう可能性点に留意しましょう。

●コウモリの侵入経路
コウモリは1〜2cmの狭い隙間でも侵入可能です。玄関や窓、ベランダ、通気口やエアコンの配管、壁の亀裂などコウモリの侵入経路になりそうな場所を点検し、シーリング材や目の細かい金網を使って隙間をしっかり塞ぎましょう。
侵入口をふさいだ後に、ハッカの香りなどの忌避剤を利用するとさらに安心でしょう。

また、マンション周辺に水辺や草地など開けた場所がある場合、コウモリの餌となる虫が増えやすいため、コウモリにとって理想的な環境となります。ベランダの排水口や排水溝など、水たまりを防ぐために定期的な掃除をして、コウモリの餌となる蚊やカメムシの発生を予防する努力も大切です。

☆カメムシの対策については、こちらの記事もご覧ください。
大量発生するカメムシ。 刺激は厳禁! マンションにおけるカメムシ対策〜駆除と予防〜
カメムシがマンションで大量発生? カメムシの発生時期と産卵、いつ、どこに?

日本には37種類のコウモリが生息しており、そのうち18種が絶滅危惧種で、7つの集団が絶滅のおそれがあるとして、環境省レッドリスト※2に掲載されています。
※2 参考:【哺乳類】レッドリスト2020環境省

アブラコウモリは害獣とみなされることもありますが、コウモリ類には希少な種も多く存在します。
コウモリによる被害は、コウモリそのものよりも、人の生活環境に近づきすぎることが原因といえるかもしれません。コウモリとの共存を考え、適切な防除対策を実施し、マンションライフを安心で快適なものにしましょう。

■あわせてお読みください。
・ベランダを片付ける! やっかいな鳥のフン対策と掃除方法
・ワカケホンセイインコが野生化して都心で大量発生! マンションでの鳴き声・フン害対策
・ムクドリは益鳥? 害鳥? マンションでできるベランダのフン害・鳴き声対策
・鳩のフンは病気の原因に! フン害を防ぐためのベランダ鳩対策
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■この記事のライター
熊谷 皇
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境工学(温熱環境、省エネ等)。国土交通省 住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校等の講習会講師、日本建築ドローン協会(JADA)のWG等の委員を歴任。

(2024年2月5日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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