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石綿(アスベスト)の法改正 管理組合が行うべきポイントとは?

マンション 大規模修繕 石綿

石綿(アスベスト)含有建材に関して、法改正がなされ、施工者が石綿(アスベスト)含有に関して調査・取扱いについて厳格になってきました。一方で、大規模修繕工事の発注者の管理組合としてどうすれば良いのか、情報があまり無いのが実情です。今回は、主に管理組合として大規模修繕工事等に備え、どうすれば良いのかご説明します。

こんな方におすすめ
●マンション内の石綿(アスベスト)含有に興味のある方
●大規模修繕工事を準備されている方

目次
1. 石綿の歴史
2. 石綿の特徴
3. 石綿の危険性
4. 石綿の法改正
5. マンションの石綿含有物
6. 修繕業者が行わなければならない調査・処理等
7. 管理組合が行わなければならないこと
8. 最後に

1. 石綿の歴史

石綿は数多くのメリットを総合的に有していたことから、長い間、多岐にわたって利活用され、近代の我が国の発展に重要な役割を果たしてきました。その大半は建築物に使用されています。一方で、人体への影響が社会的に問題になったことから、労働者の健康障害を防止するため石綿の使用について、下記の通り規制が強化されてきました。

① 1975年、石綿5重量パーセントを超えて含有する吹付作業が原則禁止
② 1995年、石綿1重量パーセントを超えて含有する吹付作業が原則禁止
③ 2004年、石綿1重量パーセントを超えて含有する製品の製造・販売の禁止
④ 2005年、吹付作業の全面禁止
⑤ 2006年、石綿0.1重量パーセントを超えて含有する製品の製造・販売の禁止
⑥ 2012年、石綿製品の全面禁止
⑦ 2018年、石綿分析のための試料等の製造・輸入・使用の許可

しかしながら、禁止前からの継続利用されている石綿含有製品についてはその使用が禁止されておらず、現在の私たちの生活環境には、まだ相当な量の石綿含有建材などが存在しています。

2. 石綿の特徴

マンション 大規模修繕 石綿

石綿が産業界で盛んに使用されていた理由は、次のような優れた性質を一種類の物質が全てに兼ね備えたことにあります。

① 木綿や羊毛に匹敵するほどしなやかで糸や布に織れる(紡繊性)
② 引張に強い(抗張力)
③ 摩擦・摩耗に強い(耐摩耗性)
④ 燃えないで高熱に耐える(難燃性・耐熱性)
⑤ 熱や音を遮断する(断熱・防音性)
⑥ 薬品に強い(耐薬品性)
⑦ 電気を通しにくい(電気絶縁性)
⑧ 細菌・湿気に強い(耐腐食性)
⑨ 比表面積が大きく、他の物質との密着性に優れている(親和性)
⑩ 安価である(経済性)

石綿は色々な用途に合わせ、様々な建材に使用されてきました。石綿含有建材は、解体・改修工事等における飛散性の高低から現行の法規制などとの整合性も高い「レベル1〜3」の建材として便宜的に分類されています。
レベル1は最も飛散性の高い石綿含有建材であり、吹付石綿及びマンションでは石綿含有吹付バーミキュライト・パーライトなどがこのカテゴリーに含まれます。次いで飛散性が高いレベル2には石綿含有保温材・断熱材・耐火被覆材がこのカテゴリーに含まれます。レベル3はそれ以外の石綿含有建材と分類されますが、その製品は多岐にわたります。外壁材の塗料・下地調整材もアスベストが含有していたらレベル3相当になります。

3. 石綿の危険性

石綿を吸入して生じる疾患としては、石綿肺、肺がん、中皮腫、その他の胸膜疾患があります。これらを総称して石綿関連呼吸器疾患と呼ばれています。石綿関連呼吸器疾患のうち、中皮腫はほとんどの例が石綿ばく露によって生じた疾患と考えられます。石綿ばく露から中皮腫発症までの潜伏期間は30〜50年、平均40年弱で石綿肺がんの場合よりもやや長くなっています。また、ばく露を受ける年齢が若いほど発症のリスクは高くなると推測されます。石綿取扱者のうち、喫煙者は非喫煙者に比べて肺がんにり患する危険性が高いことが疫学調査で明らかになっていますが、肺がんとは異なり、中皮腫には喫煙の影響を直接には受けません。

建設業では2005年6月に石綿製品の製造工場(水道管)の従業員が肺がんや中皮腫で死亡したことや、近隣の住民や従業員の家族が中皮腫を発症して、死亡していたことが判明したことを契機として労災認定請求者が急増しました。

4. 石綿の法改正

建築物等の石綿の使用実態の調査は、安衛法及び石綿則に基づく調査の他にも、大防法や建築基準法等の関係法令に基づく調査義務の発生や、通常の建築物利用時における石綿含有建材使用実態調査を行う時に必要になります。

これまで規制の対象でなかった石綿含有建材(いわゆるレベル3建材)の不適切な除去により、石綿が飛散する事例等が確認されました。こうした状況を受けて、建築物の解体・改修工事等における石綿飛散防止対策の強化を図るため、2020年6月に「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が公布されました。特定建築材料は、吹付石綿、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材(石綿0.1重量パーセントを超えて含まれるもの)でありますが、今回の大気汚染防止法施行令の改正により「石綿含有成形板等」、「石綿含有仕上塗材」が追加されました。

建築物の解体・改修などの工事対象となる全ての材料について、石綿含有の有無を設計図書等の文書と目視で調査するとともに、その調査結果の記録を3年間保存する必要があります(2021年4月)。また、建築物の事前調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した者(建築物石綿含有建材調査者)等が行う必要があります(2023年10月)。

吹付石綿に加え石綿が含まれる保温材などの除去等の工事は14日前までに労働基準監督署に届け出る必要があります(2021年4月)。一定規模以上の建築物や特定の工作物の解体・改修工事は、事前調査の結果等を電子システム:gBizIDで届け出る必要があります(2022年4月)。

除去工事が終わって作業場の隔離を解く前に、資格者が石綿等の取り残しがないことを確認する必要があります(2021年4月)。

石綿が含まれているけい酸カルシウム板第1種を切断、破砕等する工事は、作業場を隔離する必要があります(2020年10月)。石綿が含まれている成形板等の除去工事は、原則切断、破砕等によらない方法で行う必要があります(2020年10月)。石綿が含まれている仕上塗材をディスクグラインダー等を用いて除去する工事では、作業場を隔離する必要があります(2021年4月)。

石綿が含まれている建築物、工作物又は船舶の解体・改修工事は、作業の実施状況を写真等で記録し、3年間保存する必要があります(2021年4月)。

5. マンションの石綿含有物

輸入された石綿の大半(約93%)はレベル3の石綿含有建材に用いられています。マンションの大規模修繕工事では内外装の塗料・下地調整材・隔板等、また、内装工事では、下記の内装材に石綿の含有が考えられます。多くはレベル3のカテゴリーに該当いたしますが、室内に吹付してある石綿含有吹付バーミキュライト・パーライトはレベル1に該当致しますので注意を要します。

安衛令における石綿等の対象含有率が現在の0.1重量パーセント越になったのは2006年9月であるため、石綿を含有する可能性のある建材については2006年9月以降の情報で示されている可能性もあります。

マンションでの石綿含有の可能性のある主な建材(主に内装材)等は、仕上塗材、下地調整材、スレートボード、せっこう板、セメント板、けい酸カルシウム板第1種、ロックウール吸音天井板、石膏ボード、パーライト板、壁紙、ビニル床タイル、ビニル床シート、ソフト巾木、窯業系サイディング、押出成形セメント板、スレート波板、化粧スレート、ルーフィング、発泡体、接着剤、シール材、エキスパンジョイントになります。

6. 修繕業者が行わなければならない調査・処理等

修繕業者は、書面等で確認された建材を、石綿含有建材、石綿無含有建材、石綿含有不明建材に分類します。内外部、部屋・区画ごとに、目視調査で確認や分析が必要な建材・塗料を整理し、試料採取を行い石綿含有の有無を判定します。

石綿則第3条第5項においては、石綿が使用されているとみなして対策を講じる場合、分析調査の必要がないとする、いわゆる「みなし石綿含有」として対処することで実施される場合もあります。
軽微な場合も含め、解体・改修工事に際しては、的確に石綿含有建材の使用状況などを調査し、含有していないことが確認された場合を除き、適切な飛散やばく露防止措置を講じ、発生する廃棄物を適切に処理することが求められています。

7. 管理組合が行わなければならないこと

アスベストに関し管理組合が行わなければならないことは、建築物の解体・改修を行う時は、施工者の調査に必要な情報(竣工年数・使用材料など)を開示し、適切に解体・改修工事が行われるように協力しなければなりません。また、法律上の保管義務は有りませんが、石綿飛散防止対策に責務を有していることから、解体・改修工事や石綿の除去等の工事が終了するまでではなく、施工者と同様に3年間保管することが望ましいです。

また、厚生労働省の解体・改修工事を発注する皆さまへと題した石綿パンフレットでは下記の記載があります。解体・改修工事を発注する場合、発注者として、施工業者に対し、以下の配慮を行うことが義務となります。【令和3年4月施行】

●建築物・工作物・船舶の解体・改修工事の前に施工業者に実施が義務づけられている石綿の有無の調査(事前調査)の結果、石綿が使用されていることが明らかになった場合は、石綿除去等の工事に必要な費用等を含めた以下の発注条件について、施工業者が法令を遵守して工事ができるよう配慮すること

・ 工事の費用(契約金額)、工期、 作業の方法
【注】石綿除去工事を行う場合は、通常より費用、工期がかかります

●工事を発注する建築物等の事前調査が適切に行われるよう、石綿の有無についての情報がある場合は、その情報を施工業者に提供するなどの配慮をすること

●石綿除去等の工事を行う場合に、施工業者に義務づけられる作業の実施状況についての写真等による記録が適切に行われるよう、写真の撮影を許可する等の配慮をすること

8. 最後に

先日、筆者は建築物石綿含有建材調査者の講習を受講し、終了試験に合格し、晴れて建築物石綿含有建材調査者となりました。建装工業では多くの工事従事者が同資格の保有に至りました。大規模修繕工事は、地球に・居住者に・作業員に優しくなければならず、しっかりと対応しなければならないことを再認識致しました。

■あわせてお読みください。
・マンション大規模修繕・リフォーム工事にも関係するアスベスト検査について


■この記事のライター
吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2023年5月22日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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