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隣人が認知症? マンションでも他人事ではない認知症トラブル〜対応方法と相談窓口

認知症

超高齢社会となった日本では認知症患者数が年々増加し、マンションなどの集合住宅でもトラブル事例が発生するようになりました。近所づきあいが希薄になりがちな現代では、気付いたときには隣人が認知症で徘徊していた、なんてこともあり得ます。認知症は誰でも発症する可能性があるため、他人事ではありません。

そこで、今回は、マンションでの認知症のトラブル事例や認知症の方への対応方法の例をまとめ、自治会活動で認知症予防や高齢者の見守りをする方法と、認知症トラブルで困った際の相談先などについてもご紹介いたします。

目次
1. マンションでもトラブル事例が増加中
2. 認知症の方への対応方法の例
3. 管理組合や自治会で認知症予防・見守り
4. 困ったときの相談先は?

1. マンションでもトラブル事例が増加中

認知症

認知症になると、時間や場所・周囲の状況などを正しく認識できないといった記憶障害や判断力の低下などの症状があらわれます。そのため、通い慣れた買物の道順を忘れたり、今まではできていた家事などの手順や家電などの使い方がわからなくなったりします。認知症の患者数は増加傾向が続いていることから、高齢になったマンションの住人が認知症を発症し、その症状のためにトラブルとなってしまうケースも増えています。
例えば、オートロックの使い方や自分が乗るべきエレベーターがわからなくなることによるマンション内外での徘徊、ガスコンロなどの火の不始末によるボヤ、ゴミ出しのルールが守れない、自宅にゴミを溜め込むなどです。また、認知症のタイプによっては妄想や幻覚の症状もあり、「管理人や隣人が勝手に家に入ってきた」「隣家からの(実際には発生していない)音がうるさい」など、実際には何も起きていないのに苦情を言ったり、騒ぎ立てたりしてしまうこともあります。

このような行動は住人同士のトラブルになってしまいます。特に失火はマンションでは大きな被害につながりかねませんし、ゴミの放置などはマンションの衛生環境が悪くなり資産価値の低下も招きかねないので、認知症の住人による問題行動は、本人や家族はもちろんのことマンション全体にとっても悩ましい問題です。

2.認知症の方への対応方法の例

マンション内でこうしたトラブルがあったり、隣人に認知症の疑いがあったりした場合、どう対応すればいいのでしょうか? 認知症は当事者のプライバシーに関わるデリケートな問題です。本人はわざとトラブルを起こしているわけではないので、認知症の方に対して正面から否定したり叱ったりということは、本人のプライドを傷つけ今後の信頼関係を損なってしまう可能性があります。一方で、同居の家族が本人の認知症に気づいていなかったり、一人暮らしで家族と連絡が取れず、家族による迅速な対応が期待できなかったりするというケースもあります。

認知症の人には医療や福祉、介護のサポートが必要で、サポートを受けるための相談窓口となるのが地域包括支援センターです。認知症の相談や介護の手続きなどは家族が行うという認識が一般的ですが、実は、地域包括支援センターには家族でなくても相談ができます。
そこで、マンション内で認知症の人(もしくは認知症と疑われる人)によるトラブルがあった場合、連絡体制を管理組合で決めマンション住人で共有しておくとよいでしょう。例えば、認知症かもしれないという方がマンション内にいたら、管理組合に報告し、管理組合役員または管理会社から地域包括支援センターに相談するといったことです。

3.管理組合や自治会で認知症予防・見守り

認知症

認知症の人がマンション内外でトラブルになる場合、本人はトラブルを起こすつもりはないことがほとんどで、適切なサポートを受けていないか、サポートが足りていない可能性が考えられます。サポートが早いほどトラブルも大きくなりにくいといわれており、そのために重要になるのが、マンション内での見守りです。

外部の相談窓口への連絡体制に加え、住人どうしで異変に気づいたら管理組合や自治会に報告するといったことをマンション住人全体に周知しましょう。更に、認知症への理解や知識を深めることも大切ですから、自治会の主導で住人向けに認知症を知るための講座を開くなどするのも効果的です。例えば、認知症の初期には、いつも挨拶をかわしていたのに最近は声をかけても返事をしない、温厚だった人が怒りっぽくなった、といった変化があらわれることがあります。また、集合ポストが開けられなくなり郵便物が溜まったり、他のお部屋の集合ポストを開けてしまったりという事例は、マンションでは起こりがちな事例でもあります。このような異変に気づき、対応することは認知症予防にもつながります。

参考:家族がつくった「認知症」早期発見のめやす
(出典:公益社団法人 認知症の人と家族の会)

4. 困ったときの相談先は?

実際にマンション内での認知症トラブルがあった場合の相談先ですが、まずは管理組合や管理会社へ連絡しましょう。マンションを代表しての相談窓口としては地域包括支援センターがありますが、役所の福祉課や民生委員にも相談が可能です。こうした相談先の多くは電話でも相談できるので、地元自治体のHPや公報などで連絡先を調べられます。「社団法人認知症の人と家族の会」でも電話相談を受けつけています。

多くの自治体では住人どうしの見守り活動を推奨しており、市区町村によっては住民向けに認知症の人への対応についての資料を公開しているので、参考にするとよいでしょう。

※参考例:東京都港区「高齢者を見守るために」

認知症トラブルは、ご本人とそのご家族だけの問題と思われる方が多いかもしれませんが、マンションだからこそ、近隣の高齢者の少しの変化にも気づける場合もあります。何かトラブルが発生してしまう前に、管理組合内でも考えられる対策について一度議題に挙げてみてはいかがでしょうか。

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■この記事のライター
大塚 麻里絵
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築士・一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2022年2月21日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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