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マンション管理組合が取り組むべき水害対策とは

水害 対策

近年では、戸建住宅に比べて水害に強いとされるマンションでも、水害の被害が報告されるようになりました。
地下に電気室やポンプ室を備えたマンションでは、浸水によって停電になり、エレベーターや水道が使えなくなった事例も報告されています。

今回はマンションを浸水から守るために日ごろから行っておきたい対策や、水害の被害がせまった場合に管理組合が取るべき対応策などについて紹介します。

マンションの水害対策に関しては、下記の記事もご参照ください。
マンション共用部の悩み 雨水の水はけ問題とは
うちのマンションは大丈夫? 建物電気設備の浸水対策ガイドラインが示されました

目次
1. 日ごろから行っておきたい水害対策
2. 水害のリスクに備えて
3. マンションの水害対策をマニュアル化する

1. 日ごろから行っておきたい水害対策

マンションの外廊下、外階段、エントランス、アプローチなどの共用部分には、雨水を排水させるための排水口や溝、雨どいといった設備があります。
そこに枯れ葉などのゴミや土砂などが溜まることで詰まりが生じると、大雨や台風のときに雨水がスムーズに排出されず、浸水や冠水が起きやすくなります。
そこで、重要になるのが共用部分の排水口や溝、雨どいの定期的な掃除と点検です。
共用部の管理責任は、管理組合を代表とするすべての区分所有者にありますが、日常的な掃除や点検は管理会社に委託しているのが一般的です。
したがって、作業の頻度、点検時の管理組合における役員の立ち会い、台風後の点検や、土砂などが入っている場合の掃除など、管理会社の実施内容については、できるだけ詳しく具体的に取り決めをしておくことをおすすめします。
また、地下ピットなどの排水ポンプも、いざというときに正常に作動するよう定期点検を欠かさないようにし、耐用年数への配慮も必要です。
さらに、各住戸につながるベランダの排水口や溝の日常的な管理は、マンションの住民が各々で行うことになるので、こまめな掃除をして頂けるようにすべてのマンションの住民に周知しておきましょう。

2. 水害のリスクに備えて

水害 対策

日頃からの対策に加え、台風などで地下や低層階への浸水の危険性が高まったときに、被害をできるだけ抑えるための備えもしておきたいものです。

《浸水のリスクを抑えるために備えておきたいこと》
・浸水を抑えるための備え。
・止水板や土のうを用意しておく。
・エントランスドアに止水版を設置できるようにする。
・地下に電気室などがある場合は防水扉を設置する。
・電気室等が浸水した場合の情報伝達のための備え。
 電気室が浸水した場合に備えて、関係者の連絡先を示した連絡体制図(会社名、担当者名、連絡先)を整備し、関係者全員が把握しておく。
・電気室等の浸水による停電を回避するための備え。
 エレベーターやオートロックなどのために、非常用電源の供給ルートの確保や法定以上の非常用電源等を導入する。
※詳しい内容は、国から浸水対策に対するガイドラインが公表されていますので参照してください。
「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」

昨今は、気象予報の精度は向上しています。マンションのある地域に台風や豪雨の予報が出た場合は、管理組合で早めに次のような備えを行いましょう。

《台風や豪雨の予報発信時に備えておきたいこと》
・あらためて、共用部分の排水口や溝を点検し、必要に応じて掃除する。
・あらためて、排水ポンプや非常用電源が作動するか確認する。
・共用部分にある強風で飛ばされたり、雨水で流されるおそれがあるものは、固定または移動させる。
・必要に応じて、止水板や土のうをエントランスなど浸水の恐れがある場所に設置するための準備を行う。
・地下もしくは周辺よりも低い場所に駐車場がある場合は、マンションの住民に車の移動を呼びかける。
・掲示や回覧によって、マンションのすべての住民に防災行動を呼びかける(※)。

<マンションの住民に呼びかける防災行動の例>
・ベランダの排水口や溝の掃除。
・ベランダに置いたプランターなどは室内への移動。
・窓からの水の侵入を防ぐために必ずサッシを閉める。
・スマートフォンやラジオなどは充電しておく。
・家族分の飲料水の確保。

3. マンションの水害対策をマニュアル化する

水害 対策

水害への対策や防災行動の詳しい内容については、マンションの立地などの条件により異なります。
いざというとき適切に対応するためには、平時のうちに、日ごろの点検に加え緊急事に必要とされるものや行動についてリストアップし、住民にも周知しておくことが大切です。
また、速やかに防災行動できるようにするためにも、例えば、洪水警報が出れば駐車場から車を移動させるなど、防災行動をマニュアル化しマンションの住民と共有することをおすすめします。
マニュアルづくりは管理組合が主導し、気象庁(※1)や水害対策に力を入れている自治体(※2)のホームページ、マンションがある自治体の防災情報・ハザードマップなどを参考にしつつ、防災委員会や管理会社、自治体の防災課などと連携しながら進めましょう。

(※1)参考:気象庁「防災気象情報と警戒レベルの対応について」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/alertlevel.html
(※2)参考:荒川区「水害時の備えとは?」
https://www.city.arakawa.tokyo.jp/a013/bousai/suigainisonaete/suigaijinosonae.html

■あわせてお読みください。
・マンション防災 自主防災組織はあったほうがいい?
・災害発生時に必要となる住人の自助と共助。あなたのマンションは大丈夫ですか?
・マンション共用部の悩み 雨水の水はけ問題とは
・台風の季節到来!マンションでの対策は大丈夫?
・うちのマンションは大丈夫? 建物電気設備の浸水対策ガイドラインが示されました
・災害に備えてマンションの防災力を強化!


《この記事のライター》
熊谷 皇
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
千葉県出身。鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境(温熱環境性能、住宅の省エネ性評価等)。住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構・日本建築センター・職業能力開発総合大学校等の講習会講師の経験を持つ技術者。ライター。

(2021年4月19日記事更新)

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