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マンションの防災力を高める 大規模修繕でプラスしたい施設・設備とは

マンション 防災

1. マンションに求められる防災力とは

日本は自然災害の多い国です。近年では災害の大規模化傾向もあり、防災力をどう高めるかが課題になっているマンションも多いのではないでしょうか。
マンションの防災といえば、まず居住者の生命を守るために、建物の倒壊や崩壊を防ぐことが基本になりますが、昨今の災害事情を考えると、それだけで十分とはいいきれないようです。大規模な災害では、マンションが被災してもすぐに公的な救助や支援が届かないことも考えられるので、マンションの共用設備などには被災後の数日間を住民全員が無事に過ごすための備えも求められます。

今回は、マンションの災害対策として、具体的にどのような施設・設備を設ければ良いのかについて考えます。

2. こんなところにも耐震補強を

地震大国でもある我が国で、マンション防災に最も必要とされるのが耐震性でしょう。
1981年(昭和56年)6月以降に建築確認(建築基準法等の関係法令に即した建築物であることを行政が確認すること)を受けたマンションは、現行の耐震基準を満たしています。しかし、それ以前に建築確認を受けたマンションで、今も耐震補強が行われていない場合は、早急に現行基準に合わせた補強をすることが望まれます。
法令上でも、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」において、各都道府県は「都道府県耐震改修促進計画」を定めるものとされており、例えば東京都では、「特定緊急輸送道路沿道建築物」を定めて耐震診断を実施することを義務付けています。これは、災害時に重要な輸送経路となる道路に面した建物に対して耐震診断を義務化しているという内容で、耐震補強工事の実施までを義務付けるものではありません。しかし、耐震工事を行った方が望ましいのは明らかです。

また、建物本体に加えて、一定規模以上の受水槽や水道ポンプなどの付帯設備にも耐震補強をしておきたいものです。特に、高架水槽を含め受水槽は、被災時に水を確保するための重要な設備であることから、水槽本体の強度が重要になります。大規模修繕の際には水槽の点検を欠かさず、破損などがあれば交換することはもちろん、地震の揺れによる水のうねりを抑えて破壊を防止する装置の導入なども検討しましょう。

⇒地震による水のうねり「スロッシング現象」の事例
『災害に備えてマンションの防災力を強化!』

3. 浸水被害から優先的に守りたいもの

マンション 防災
地震には津波がともなうことがありますし、近年では台風やゲリラ豪雨による浸水被害も発生したことは記憶に新しいでしょう。
マンションの設備の中で水害から最も守りたいもののひとつは電源ではないでしょうか。電気設備は地階もしくは1階に設置されていることが多く、マンション暮らしに欠かせないインフラです。こうした設備が浸水してしまうと、各住戸で電気が使えなくなるだけでなく、マンション全体が断水やエレベーターを使えないといった状態に陥ってしまいます。

マンションの規模が大きいほど、インフラ停止による被害も大きくなるので、このような事態を防ぐためには、電気設備を浸水から守ることが必要です。その具体的な対策のひとつとして受電・変電設備を屋上などに移設することが考えられます。
とはいえ、移設工事には大きな費用もかかり困難というマンションも多いでしょう。移設が難しい場合は浸水の経路を確認し、外部からの出入口に止水板を設置したり、受電・変電室の出入口に水密防水扉を設置し、二重ドアにしたりするなどして浸水を遮断する方法があります。もし浸水が始まってしまった時のために、排水ポンプを設置する方法も有効です。
マンション 防災
また、マンションの管理事務室も浸水から守るべき場所です。管理事務室は緊急時の防災拠点となり、マンションによっては防災グッズの保管場所でもある大切な場所ですが、この管理事務室も受付業務を兼ねることから1階にあるのが一般的です。そこで、管理事務室の出入口も防水扉にすることをおすすめします。

4. 「電気が来ない!」事態に備える

マンションの電気設備が無事でも、災害の規模や場所によっては地域レベルでの送電がストップしてしまうこともあります。そうした事態に備えて、最近では非常用の電気設備(自家発電機)を設置するマンションが増えてきました。
とはいえ、発電機があっても非常時に使える電力量は限られます。特に高層マンションなどでは、電気が十分に使えない状態でケガ人を搬送することに加え、水や食料、支援物資の荷揚げも考えておきたいものです。これらの対策としては階段を使って人力で人を搬送するための階段避難車や、荷物を上げるためのホイストクレーン、ポータブル発電機などの機材を準備するという方法があります。
また、いざ被災した時にすぐに使えるように、普段から居住者全体が訓練に参加し使用方法や使用時のルールを理解しておくことも欠かせません。

5. ご自分のマンションに合った防災対策を

建物の規模や構造、住民の構成など、マンションごとの条件によって、防災に必要とされる設備の内容は異なります。災害を乗り切るために、自分たちのマンションにどのような備えをすべきなのかについて、普段から理事会や防災委員会を中心に住民間で話し合っておきましょう。また、具体的な設備や機材の選定にあたっては、マンション管理士や管理会社、大規模修繕工事を施工する会社に相談してみてください。

防災に関する具体的な取り組みは、他のマンションでの事例を調べてみても参考になります。集合住宅ならではの共感できる悩みを抱えながらも、工夫しながら運営を続けている様子を知ることが出来ます。

⇒「管理組合に聞く タワーマンションにおける防災と大規模修繕への取り組み 〜ライオンズタワー仙台広瀬〜」

専門家の力を借りたり、実際の事例を見たりしながら、お住まいのマンションに最適な防災対策を立てていってください。

《この記事のライター》
大塚 麻里絵
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築士・一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター

(2020年4月20日記事更新)

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