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マンションの機械式駐車場の空きが増えたら、管理組合がするべき対策は

機械式駐車場

若者の車離れや高齢者の免許証の返納などが話題になっている昨今、マンションに付属する機械式駐車場も空きが増加傾向にあるようです。マンションの付属駐車場の賃料はマンション管理組合の収入源です。駐車場の空きが増え続ければ、マンション管理や大規模修繕などの費用が不足するといった問題にもつながりかねません。今回は、機械式駐車場の空き問題解消のポイントを紹介します。

目次
1. まずは居住者の車の利用状況を把握する
2. 対策例〜マンション付属以外の駐車場を借りている居住者がいる場合
3. 対策例〜車の所有者が減った場合

1. まずは居住者の車の利用状況を把握する

機械式駐車場

機械式駐車場の空き問題への対策をするにあたって、まず空きが増加している原因を調べる必要があります。例えば、車を持たない若い世代や、高齢になったなどの理由で車を手放す居住者が増えてきたことなどが考えられます。また、駐車料金が高い、車のサイズの問題でマンション付属の駐車場が利用できないなどの理由で、外部の月極駐車場を利用している居住者もいるかもしれません。
機械式駐車場の空きが増えている原因によって対策が異なるので、まず、マンション居住者に向けにアンケート調査を実施して、しっかりと現状を把握することをおすすめします。
以下に具体的なアンケート項目の例を紹介します。

《アンケート項目》
・車の所有状況。
⇒所有している場合:台数、車の大きさ(長さ・幅・高さ)、車の重さ。
⇒所有していない場合:今後、車を所有する予定。
・マンション付属駐車場以外の駐車場を利用状況。
⇒利用している場合:その理由について。

2. 対策例〜マンション付属以外の駐車場を借りている居住者がいる場合

機械式駐車場

マンション付属の駐車場を使っていない居住者がいる場合、その理由によって対策が異なります。
例えば、マンション付属駐車場以外の駐車場を利用している理由に、「マンション付属駐車場の料金が高いから」という回答が多い場合は、駐車料金の値下げを検討することになるでしょう。近隣駐車場の賃料相場に対して値ごろ感のある料金に設定すれば、利用率が高まり、収入が増加するかもしれません。ただし、値下げにより、全体の賃料収入が下がり、管理やメンテナンスなどの経費を引くと赤字になってしまっては意味がありません。したがって、値下げをする場合は、収支をしっかり試算する必要があります。

また、マンション付属の駐車場に入庫できないRVなどの大型の乗用車が増えてきたことから、外部の駐車場を借りているという事例があるかもしれません。その場合は、大型の車も停められるよう駐車場を改修する、もしくは駐車場の一部か全体を平置きに変更するといった対策が考えられます。ただし、駐車場の改修や変更のためのイニシャル費用が掛かるので、駐車場の維持管理費用も含めて、収支のバランスの試算が大切なポイントになります。

他にも、車を複数台所持している居住者がいるのに、管理規約でマンション付属駐車場は1住戸1台までといった規定をしている場合は、管理規約や使用細則の見直しをすることで、駐車場空き問題の改善につながることもあります。

3. 対策例〜車の所有者が減った場合

機械式駐車場

アンケート調査の結果、マンション全体で車の所有台数が駐車場の区画数を大きく下回り、これからも増える見込みがなければ、駐車場の空き問題を改善するのは困難です。
その場合の対策としては主に下記のものが考えられます。

1)平置き駐車場に変更する
2)居住者以外の外部の方に貸し出す

それぞれの内容についてご紹介します。

1)平置き駐車場に変更する

メリット
・車庫入れが楽で、車高の制限がなく、大きな車も停めやすい。
・メンテナンス費用が不要。

デメリット
・駐車区画が少なくなる。

変更による利便性の面と金銭的な収支面(変更のための工事費[イニシャルコスト]、今後の維持管理費[ランニングコスト]・変更後の収入等)を総合的に考慮して、判断する必要があります。尚、特に注意しなければならないことは、自治体によってはマンションに最低限必要な駐車場の設置率を定めている場合(駐車場の附置義務)が、あるということです。その場合は、駐車台数を削減すると基準に抵触することになりますので原則として台数を減らすことはできません。したがって、検討初期段階で駐車場を減らすことが可能かどうか、事前に自治体の窓口に確認しましょう。

2)居住者以外の外部の方に貸し出す
マンション付属駐車場の空きスペースを外部の方に貸し出すのも一つの選択肢です。
国税庁が平成24年2月に公表した「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について」により、一定の条件を満たせば区分所有者以外への貸し出し分のみが課税対象になるとの見解が示されたため、税金についても検討する必要があります。

メリット
・駐車場の空き増による収益減の補填になる。

デメリット
・区分所有者以外の第三者から得た収益は課税対象となる。
・外部(当該マンションに居住している以外の人)が関与することによるセキュリティ面の問題。

事例としてご紹介した、「平置き駐車場に変更する」の場合も「居住者以外の外部の方に貸し出す」の場合のいずれもマンション総会の決議を経る必要があり、管理規約の変更等も必要になる可能性があるため、実際に実行するまでには手間と時間がかかります。
ですから、もしマンションの機械式駐車場の空き問題が顕在化してきたら、できるだけ早い段階でマンションの居住者への車の利用状況を調査することをお勧めします。

■あわせてお読みください。
・マンション駐輪場の不満を解決したい! 電動アシスト自転車の扱いはどうする?
・分譲マンションの管理規約って、どんなもの?


《この記事のライター》
熊谷 皇
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
千葉県出身。鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境(温熱環境性能、住宅の省エネ性評価等)。住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構・日本建築センター・職業能力開発総合大学校等の講習会講師の経験を持つ技術者。ライター。

(2021年4月12日記事更新)

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