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マンションの駐輪場が足りない! 増設は難しい? 解決策は?

マンション 駐輪場
マンションの駐輪場は何かと問題になりやすい場所であることは、「マンション駐輪場の不満を解決したい! 電動アシスト自転車の扱いはどうする?」で紹介させて頂きました。
今回はマンションの駐輪場が足りない場合の対応方法について紹介します。

目次
1.まずは自転車の持ち主を確認する
2.放置自転車を防ぐ
3.駐輪場を増設したいけど、むずかしいときは
4.共用自転車という選択肢

1.まずは自転車の持ち主を確認する

「駐輪場が足りない!」となったとき、増設を考える前に確かめたいことがあります。それは、マンションの駐輪場にある放置自転車を洗い出して撤去することです。

放置自転車の撤去・処分の方法についてですが、歩道や公道に放置されている自転車は区市町村の役所に連絡することで、各自治体の条例に沿って対処してもらうことができますが、マンションの駐輪場は私有地であることから各自治体の条例の対象にはならず、管理組合が自ら対処する必要があります。さらに、管理組合であっても放置自転車を自由に撤去できるわけではなく、次のような手順で対応することが考えられます。

《放置自転車撤去までの手順》
【1】 撤去通知書の取り付け・撮影
放置自転車を洗い出すために、駐輪場にある全自転車のサドルなどに「○月○日までにこの通知書を外していない自転車は放置自転車とみなして処分します」といった内容の撤去通知書を取り付けます。
撤去通知書を取り付けている現場の写真も撮影し、保存しておきます。撤去通知書に記載する期間は2週間〜1ヵ月ほどが良いでしょう。

【2】回覧板や張り紙などで放置自転車の撤去を全住民に通知
回覧板や貼り紙、全戸へのポスティングなどで、マンション住民に放置自転車を撤去することを通知します。その際、住民が所有する自転車から【1】で取り付けた撤去通知書を必ず外してもらうように明記し、撤去期限を過ぎても撤去通知書が付いている自転車は放置自転車として処分する旨を通知します。

【3】放置自転車を撮影・記録
撤去期限を過ぎても撤去通知書が外されていない自転車は放置自転車とみなし、通知書を取り付けてある状態で再度撮影して記録を残しておきます。その際、自転車全体、防犯登録の番号も撮影・記録しておきます。

【4】警察へ連絡・相談
放置自転車については地元の警察に連絡し、今後の対応方法について相談します。放置自転車の防犯登録の番号を伝えて盗難自転車かどうかについても確認してもらいましょう。

【5】自転車の撤去
警察署へ相談した後は、警察からの指示に従って対応します。盗難自転車は警察が引き取り、それ以外の放置自転車については、一般的に管理組合で撤去するように指示されることが予想されます。その場合、撤去については管理組合が自ら対応することになります。

2.放置自転車を防ぐ

マンション 駐輪場
以上のように放置自転車の撤去や処分はわずらわしい作業が発生し、処分に掛る費用も管理組合で負担しなければなりません。ですから、そのようなことにならないように、普段からできるだけ放置自転車を防ぐ対策をとることが大切です。
おすすめの対策は駐輪する自転車を登録制にすることです。マンション住民が使用する自転車に管理組合が発行する駐輪ステッカーを貼ってもらい、登録した自転車ごとに駐輪場所も決めれば、駐輪場の整理整頓がしやすくなります。
防犯上、駐輪ステッカーには管理組合とマンション住民だけがわかる記号や番号などで管理するようにした方がいいでしょう。
自転車を登録制にしたあとは、駐輪場に放置自転車を防止するための警告看板なども設置しておきたいところです。

3.駐輪場を増設したいけど、むずかしいときは

マンション 駐輪場
放置自転車対策をしても駐輪場が足りなければ、増設が考えられますが、ここでポイントとなるのが建ぺい率と容積率です。建ぺい率は敷地の中で建物を建てられる割合、容積率は建物の床面積の敷地面積に対する割合のことで、用途地域ごとに法律で上限が決められています。上限いっぱいに建築されたマンションでは、増設がむずかしい場合があります。

そこで、検討したいのが二段式自転車ラックの設置です。すでに自転車ラックを設置しているマンションでも、古いタイプのラックには重量のある電動自転車に対応できないものもあり、そのため駐輪スペースが不足したり、乱雑になっているということはないでしょうか?
そのような場合は最新式のラックの導入、自転車の種類ごとに駐輪スペースを分ける、使用していない共用スペースを見直すなどの対応を行うことでスペースを有効利用できる場合もあります。

4.共用自転車という選択肢

マンション 駐輪場
他にも共用自転車という選択肢もあります。導入方法としては、管理組合で自転車を購入して使用の際のルールを決めて運用する方法と、事業者が提供しているサービスを導入する方法があります。

後者は、特定のエリア内に複数設けられた無人のサイクルポートで自由に貸出・返却ができる貸し自転車のシステムで、「自転車シェアリング」とも呼ばれています。必要なときだけ自転車を使える便利なシステムで、最近は、マンション向けにこのシステムを提供する事業者が増えています。住民同士で自転車を共用できるので、駐輪場の自転車の台数を抑制する効果が期待できます。
他にも、住戸ごとの自転車保有数を1戸あたり2台までにするなどのルールを決める方法もあります。

マンションの駐輪場は住民の生活を支える大切なインフラです。
マンション住民の年代やライフスタイル、家族構成の経年変化やその時々の状況によって駐輪場のニーズは変わりますので、その都度、見直しが必要です。とはいえ、駐輪場の改修について住民の意見を取りまとめるのは非常に骨が折れる作業です。したがって、大規模修繕などの機会がありましたら、駐輪場のあり方について改めて考えてみるのもよいかもしれません。


■あわせてお読みください。
1. マンション駐輪場の不満を解決したい! 電動アシスト自転車の扱いはどうする?
2. マンションの防犯や資産価値に影響する管理のポイント
3. マンションの防災力を高める 大規模修繕でプラスしたい施設・設備とは

《この記事のライター》
熊谷 皇
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
千葉県出身。鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境(温熱環境性能、住宅の省エネ性評価等)。住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構・日本建築センター・職業能力開発総合大学校等の講習会講師の経験を持つ技術者。ライター。

(2021年2月15日記事更新)

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