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マンション駐輪場の不満を解決したい! 電動アシスト自転車の扱いはどうする?

マンション駐輪場

1. マンション駐輪場の不満、主な内容は?

マンションの共用施設の中でも、特に不満が多く寄せられるのが駐輪場です。

株式会社つなぐネットコミュニケーションズが運営する「マンション・ラボ」が2015年に行ったアンケート調査(※)では、マンションにある駐輪場への満足度は「やや不満」「とても不満」が合わせて50.1%を占め、半数以上の人が駐輪場への不満を抱えていることが分かります。
その原因については、「1台分のスペースが狭く出し入れしにくいから」(65.7%)「2段式のため出し入れしにくいから」(50.0%)の2点に特に多くの人が不満を感じており、「利用料がかかるから」(28.8%)「家族分の自転車を置くスペースがないから」(5.1%)と続きます。
(※ 出典:「およそ半数の方が不満を抱えるマンションの駐輪場!その理由に迫る!」(マンション・ラボ調べ))

「狭くて出し入れがしにくい」「台数が足りない」とスペースが足りないことに関する不満は以前からよく耳にしていましたが、最近は電動アシスト自転車が普及することで新たに「2段式ラックが使いにくい」という声が増えてきたようです。
古い2段式ラックは電動アシスト自転車の重さに耐えられず、ラックの故障が多くなったという話もあります。
マンション駐輪場

2. 電動アシスト自転車の普及で自転車が大型化

電動アシスト自転車は、モーターがペダルをこぐ力を補助し、力の弱い女性やお年寄りでも楽に自転車を運転することのできるすぐれた商品です。
2009年の法改正によって条件を満たせば自転車に子供を2人乗せて走ることが認められ、安全性の高いチャイルドシートと共に子育て世帯に広く普及しました。

電動アシスト自転車は電動モーターに加え大人1人、子供2人を乗せることのできる頑丈なつくりになっているため、車体自体にも重量があります。チャイルドシートを乗せると車幅も広くなり、こうした自転車が登場する前から使用されてきた2段式ラックとは、相性が良くありません。

電動アシスト自転車が普及した影響で、共通の部品で製造される通常のシティサイクルも大型化・重量化の傾向にあります。限られた敷地をルールに従って使うことが前提のマンション駐輪場ですが、自転車が大型化することで「スペースが狭い」「台数が足りない」「他の住民の自転車が邪魔である」と感じる人がより増えてきたのでしょう。

駐輪場への不満をそのままにしておくと、所定の場所以外への自転車の放置や住民同士のトラブルなど、新たな問題が発生する恐れがあります。
マンションの環境維持のためにささいな不満もできるだけ解消したいとした、管理組合による駐輪場改修の相談も増加しています。

3. 管理組合によるマンション駐輪場の問題解決事例

マンション駐輪場の不満を解決するには、原因となる問題のタイプに合わせてさまざまな方法があります。
例えば、電動アシスト自転車・子供用自転車・スポーツタイプの自転車など、自転車の種類ごとに駐輪スペースを分けることで、限られたスペースを効率良く使用できるようになります。自転車の大きさに合わせた幅のラックに交換すると、さらに効率がアップします。
電動アシスト自転車やチャイルドシート搭載車を平置きスペースへ移動するだけで、住民の不満が減ったという事例もあります。
駐輪場のスペースが足りない場合は、使っていない駐車場やバイク置き場などを有効利用できないか見直してみましょう。都心では自家用車を持たない住民も多く、駐車場より駐輪場の需要が高いマンションも珍しくありません。
古いマンションであれば、受水槽跡地や手入れされなくなった植栽スペースなどをつぶして白線を引き、駐輪場とするケースもあります。ただし、屋根を増設して駐輪場を増やす場合には、建築面積や延床面積が変更となる場合があり、これには確認申請が必要になります。施工会社や設計事務所、マンション管理士など、建築基準法に精通した専門家に相談すると良いでしょう。

「2段式ラックが重たく使いにくい」という不満が多い場合は、垂直2段式ラックへの改修工事もおすすめです。従来の2段式ラックに比べて少ない力で上げ下げできるので、女性やお年寄りも安心して使用できます。すぐに改修工事ができない場合は、ラックを洗浄して汚れを落としたり、ボルトの締め直しや摩耗したローラー部分の交換をしたりと、メンテナンスだけで使いにくさが解消されることもあるのでお試しください。

4. マンション駐輪場改修工事のステップ

駐輪場に対する住民の不満を解消するには、まずは正確な現状把握が必要です。
管理組合で駐輪場の問題解決に動く場合は、初めに住民へのアンケート調査や現地視察を行い、問題を洗い出すことから始めましょう。
調査によって判明した全体像から、必要な駐輪台数・自転車の種類・具体的な要望などを整理して抜き出し、工事会社にプランニングと見積を依頼します。
一般的な改修工事の場合、理事会の承認だけでなく総会での普通決議が必要です。総会で決議を取る場合の手続きについて、管理規約も確認しておきましょう。
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5. 各マンションの状況に合わせた解決策を

駐輪場の不満や問題点は、各マンションで似ているようで少しずつ違います。

都心のマンションと郊外のマンション、高齢者の多いマンションと子育て世帯の多いマンション、それぞれの特徴に沿った解決策を考えなければいけません。1つのマンションの中で、住民の年齢構成などの変化とともに、問題点も変化していきます。これらを解決するためには管理組合による現状把握と話し合い、合意形成が重要となります。

マンション住民の年齢構成やライフスタイルに合わせて柔軟に対応し、住み心地のよい環境を実現しましょう。


【アンケート調査結果 出典元】
マンション・ラボ(株式会社つなぐネットコミュニケーションズ運営)
https://mlab.ne.jp/


《この記事のライター》
大塚 麻里絵
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター

(2019年4月26日記事更新)

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