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親が住んでいるマンションの相続問題 知っておきたい相続と相続放棄の手続き

マンション 相続

ご両親が購入した分譲マンション。相続するときが来たらどうするか、ご家族で話し合われたことはありますか? 相続や相続放棄、どちらを選んでも限られたわずかな期間で様々な手続きを行わなければなりません。
避けられないからこそ知っておきたい相続までの流れと、相続放棄をする際の注意点などをまとめました。

目次
1. マンション相続は家族みんなで意志確認 相続後の活用法と相続放棄
2. 相続税はどうなるの? 今から知りたいマンション相続の流れとは
3. 相続放棄をしてもゼロにならない? 相続放棄の注意点

マンション相続は家族みんなで意志確認 相続後の活用法と相続放棄

相続が発生すると、相続か相続放棄するかを選べます。はじめに、相続した場合のマンションの活用法と注意点、そして相続放棄という2つの選択肢について解説します。

●相続する
相続したマンションは、主に「住む」「貸す」「売る」という3つの活用法があります。

・遺産分割し、マンションを相続した人が自分で住む
自分で住む場合は「売却や賃貸に比べて手間が少ない」「相続時に持ち家がない場合は住宅購入費を節約できる」などのメリットがあります。
ただし、相続時に持ち家を所持していた場合には、持ち家の処分と今後の活用法について検討しなければなりません。

・賃貸として貸し出す
賃貸として貸し出す場合、「継続的に家賃収入を得られる」というメリットがあります。
家賃収入を得られる一方で、固定資産税やリフォームといった維持するための費用や家賃滞納や空き家リスクが伴うことも覚えておきましょう。

・売却する
売却する際は「まとまった現金が手元に入る」「固定資産税や管理義務の負担から解放される」などのメリットが挙げられます。
現金化して遺産分割したい場合やマンションの収益性が見込めないケース、負債や残債がある場合にはマンションの売却は現実的な選択肢です。

しかし建物が古かったり、立地などのマイナス条件によっては買い手がつかない場合もあります。
いつまでも売れ残ってしまうと固定資産税や管理費など維持にかかる負担が増すばかりなので、相続後に売却の話が進まないことが見込まれる場合は、後述する相続放棄も検討してみましょう。

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●相続放棄する
賃貸や売却のための修繕や固定資産税・管理費、新しい住人が決まるまでの維持費用の支払いなど、相続のデメリットを避ける手段として、相続放棄という選択肢があります。
相続を放棄すると、先が見えないまま払い続ける維持・管理費から解放されるという点は大きなメリットといえます。

一方で、相続放棄はマンションだけ放棄できるわけではない点に注意が必要です。
預貯金や不動産、株式、高価な貴金属や芸術品など、ほかに財産がある場合はマンションと合わせてそれらの財産も全て相続放棄することになります。
マンションを相続放棄する際には、プラスの財産・マイナスの財産ともしっかりと調査をして財産目録を作成し、相続放棄が妥当かどうか慎重に検討しましょう。

相続税はどうなるの? 今から知りたいマンションの相続に必要な手続きの流れとは

マンション 相続

相続の際には、故人から相続人への名義変更手続きや相続税の申告など、各種手続きが必要です。マンションの相続に必要な手続きの流れを4つのステップで解説します。

1.事前準備
相続する際の事前準備として、以下の3点を押さえておきましょう。

・遺言書の確認
相続の際、まず遺言書の有無を確認します。もし自筆の遺言書が残されていた場合、原則として遺言書の内容に沿って遺産分割が進められるからです。
遺産分割協議が終了した後で遺言書が出てきた場合、再び相続手続きをやり直さなければならない可能性もあります。

・相続人調査と相続財産調査
故人が遺言書を作成していなかった場合は、相続人調査と相続財産調査を行います。
遺言書がない場合は調査内容をもとに、相続人全員でどのように遺産分割をするのかを協議します。

・土地や建物の評価額の調査を行う
相続税を計算する際の基準となる「相続税評価額(土地・建物)」の調査も必要です。マンションは相続税の課税対象財産に含まれるため、算出基準である相続税評価額はあらかじめ確認しておきましょう。

2.遺産分割協議書の作成
相続人全員と相続財産の分割について協議し、「遺産分割協議書」を作成します。
なお、遺産分割協議書は後述する相続登記や相続税申告時の提出書類であるため、相続開始から10か月以内に作成しましょう。

3.マンションの相続登記
マンションの相続が決まったら、法務局にて名義を移す「所有権移転登記(相続登記)」を行います。
故人名義では売却できないため、マンションの相続が発生したらまずは名義を故人から相続人へと変更する相続登記の手続きを行いましょう。

なお、相続登記は2024年4月から義務化され、相続発生から3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料が科されます。

4.相続税の申告
先述のとおり、マンションのような不動産は預貯金と同様に相続税の課税対象財産に分類されます。そのため、相続が発生したら10か月以内に申告および納税を行いましょう。

マンションを相続すると新しい所有者が納税義務者となり、以下のような税金を納めることになります。

・相続税
・登録免許税
・固定資産税

相続税には基礎控除や配偶者控除など相続税を大幅に節税できる控除や特例があるため、該当する制度がないか調べてみましょう。

マンションの相続放棄をしても責任はゼロにならない? 相続放棄の注意点

マンション 相続

マンションの相続放棄をしたからといって、責任が必ずしもゼロになるとは限りません。責任の所在とあわせて、相続放棄の注意点を3つ解説します。

●相続放棄は期限がある
相続放棄には期限があり、故人(被相続人)が亡くなったことを知ってから3か月以内に行わなければなりません。
ただし、期間をのばす「期間伸長の申立て」もできます。

●相続放棄しても認められなくなる場合がある
勝手に財産を処分すると相続を承認したとみなされる「法廷単純承認」に該当するため、相続放棄をしても認められなくなる場合があります。
高価なブランドバッグや時計など、交換価値のあるものは安易に形見分けしないように気をつけましょう。

●相続放棄後のマンション管理
ほかに相続人がいない場合や全員が相続を放棄した場合、相続放棄者は相続を放棄した後も引き続き管理を継続しなければなりません。
これは永遠に管理義務を負うわけではなく、家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てを行い、選ばれた相続財産管理人に管理を引き継ぐことで管理義務から解放されます。

マンションの相続は、相続と相続放棄のどちらを選んでも限られた期間内に様々な手続きを行わなければなりません。それぞれにメリット・デメリットがあり、相続後の活用法にも幅があります。
相続人が知らない財産や負の財産、また会ったことのない相続人の存在など事情はそれぞれ異なります。相続が発生する前に行う「終活」や「生前整理」の一環として、専門家の意見も交えながら、一度家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。

■あわせてお読みください。
・マンションの空き家問題 管理組合はどう対応すればいい?
・管理組合に聞く 住民主体による大規模修繕工事とコミュニティ活動でマンションを100年持たせる取り組み 〜労住まきのハイツの事例?(後編)


■この記事のライター
吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2024年4月22日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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