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マンションの屋上にソーラーパネルやドッグラン? 今注目の屋上活用法とは

ソーラーパネル

太陽光発電に必要なソーラーパネルの設置や屋上緑化、ドッグランの導入など、マンションの屋上スペースを活かしたさまざまな取り組みが注目を集めています。屋上を有効利用できれば、環境保全や居住者同士のコミュニティ形成、不動産価値の向上といったメリットが期待できますが、一方で費用対効果や維持管理といった課題もあります。今回は、マンションの屋上活用事例を紹介し、それに伴うメリットや課題について解説します。

目次
1. 太陽光発電だけじゃない! 今注目のマンション屋上活用事例をご紹介
2. マンションの屋上活用で省エネ 目指すは「環境にやさしいマンション」
3. マンションの屋上活用による費用対効果と維持管理に伴う課題

太陽光発電だけじゃない! 今注目のマンション屋上活用事例をご紹介

マンションの屋上は、太陽光発電、屋上庭園やドッグラン、共用テラスやラウンジの設置、バーベキューやヨガ教室などのイベント開催など、さまざまな用途に活用されています。
ここからは、実際にマンション屋上の活用に成功している事例をご紹介します。

福岡県北九州市にある「ニューガイア上石田」は、シャープ株式会社・九州電力株式会社・経済産業省の協力によって屋上にソーラーパネルを設置し、2005年2月に完成しました。国内で初めて太陽光発電設備を全戸に導入し、オール電化仕様としたことで、全居住者が光熱費削減や省エネの効果を実感しています。余剰電力は電力会社に売却するだけではなく、ライフスタイルの異なる世帯間で分け合い、マンション全体として効率的な電力利用を可能にしています。
※参考:ニューガイア上石田 太陽光発電を活用した環境マンション(国土交通省)

また、東京都調布市にある「深大寺レジデンス武蔵野テラス」では、住棟に囲まれた駐車場棟の上部にシラカシ、イロハモミジなどの多種多様な低木や草花を配置した屋上庭園を整備しました。周辺の環境との調和を考慮してつくられ、四季を感じられる空間として開放されているだけでなく、武蔵野の自然とともに暮らすマンションとして、新たな価値の創出にもつながっています。
※参考:平成27年 全国屋上・壁面緑化施工実績調査の結果報告(国土交通省)

そのほか、近年は屋上にドッグランを備えたマンションにも高いニーズがあります。様な側面から居住者の生活を豊かにするためのスペースとして活かされています。

マンションの屋上活用で省エネ 目指すは「環境にやさしいマンション」

屋上

マンションの屋上を有効利用できれば、環境保全やコミュニティ形成の促進、不動産価値の向上につながる可能性があります。

先ほどの「ニューガイア上石田」の事例では、全戸に太陽光発電設備を導入してオール電化を進め、電力を効率よく利用する仕組みを構築しました。
また、日中の在室時間が短く余剰電力が多く発生する世帯と、日中の在室時間が長く電力需要の多い世帯で電力を分け合うなど、マンション全体で安定的な発電と無駄のない電力利用を推進しています。

なお、一般的な家庭の毎月の光熱費は約16000円、オール電化住宅では約9000円といわれますが、このマンションでは余剰電力の売却分を考慮すると約4500円に抑えられています。光熱費を大幅に削減できるうえ、自ら初期投資することなく省エネを体感できるとあって、多くの入居希望者から注目を集めており、賃料を相場よりも1割高く設定しても稼働率は常に100%を維持しています。

一方、「深大寺レジデンス武蔵野テラス」のように屋上を緑化し庭園を設けたマンションでは、自然を身近に感じる心地よい暮らしを享受できるだけでなく、植物が日差しを遮るため暑さ対策にもなり、夏の冷房費削減にもつながります。都市部の気温が周辺地域よりも高くなる「ヒートアイランド現象」の緩和や、地球温暖化の抑制への貢献も期待できます。

このマンションのように、建物の屋上に庭園を設置する事例は全国的に増加傾向です。
国土交通省の資料によると、2000年には約13.5haだった屋上緑化の施工面積は、2020年には約564.6haと20年間で40倍以上にまで増えています。
※参考:全国屋上・壁面緑化施工実績調査(国土交通省)

将来に向けて「環境にやさしいマンション」を実現するには、ご紹介したマンションのように屋上にソーラーパネルを設置したり緑化を進めるなど、実効性のある取り組みが求められるでしょう。

マンションの屋上活用による費用対効果と維持管理に伴う課題

マンション

マンションの屋上を活用する際は、メリットだけでなく費用対効果や維持管理に伴う課題にも目を向ける必要があります。

分譲マンションにソーラーパネルを設置する場合、何らかの方法で初期費用や維持費を得なければなりません。管理費、修繕積立金などを高めに設定しても居住者の納得を得られるか、住民が負担する維持費や余剰電力の売却益で投資額を回収し安定的に運営できるのか、あらかじめ収支を綿密に計算しておくことが求められます。

事前に説明会を開き、具体的な計画内容や期待できる効果などを明らかにするとともに、ソーラーパネルの設置場所や予算などについて居住者の合意を得ておくと、導入がスムーズに進むでしょう。

また、屋上庭園は美しく居心地よい空間が保たれてこそ、人々の憩いの場としての機能を発揮するといえます。そのためには、日々の清掃や手入れをはじめ定期的なメンテナンスが欠かせません。維持管理のための費用負担を上回る満足度アップが望めるかどうか、十分に検証しておく必要があります。

マンションの屋上には、ソーラーパネルの設置や屋上庭園の整備などさまざまな活用方法があり、環境保全やコミュニティ形成、不動産価値の向上といったメリットが期待できます。一方、費用対効果や維持管理に伴う課題もあり、事前に住民の合意を得ておくことが重要です。
ご紹介したような具体的な事例を参考にしながら計画を進め、マンションで暮らす人たちの満足度をより高められる屋上の活用を実現させましょう。

■あわせてお読みください。
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■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者

(2025年6月23日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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