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喉の痛み、肌荒れ、火の用心! マンションでの乾燥と換気対策

マンション 乾燥対策

1. マンションでは加湿し過ぎにも要注意

冬は乾燥が気になる季節です。空気が乾燥してくると、肌荒れや喉の痛みが起きたり、インフルエンザが流行したりなど、健康にも良くありませんし、火事も発生しやすくなります。一般的にマンションは防火設備が充実しているので、正しく使用していれば大きな火災になることはあまりありませんが、それでもボヤなど出さないよう火の用心に越したことはありません。

そんなことから、この季節は家の中でも何らかの乾燥対策をしたいものです。その一つに加湿器の使用を考えている方は多いと思いますが、マンションの部屋では過剰な加湿にも注意することが大切です。室内の気密性が高いマンションで加湿する場合は、意識的な換気を心掛けていないと湿気が溜まり、カビやダニの発生を招くこともあるからです。加湿器に頼るだけではなく、寒く乾燥する時期を快適に過ごすため、マンションでの乾燥対策を考えてみませんか?

2. 空気と暖房の関係を見直してみる

冬には暖房が欠かせませんが、暖房器具の選び方によっても乾燥の具合が違ってくることがあります。暖房は暖め方の種類によって室内を乾燥させやすいものとそうでないものがあるからです。現代の住宅で広く普及している暖房器具といえばエアコンですが、エアコンは温風を起こし対流させて暖めるという方式の暖房になります。これと同じタイプの暖房器具にはファンヒーターがあり、このように温風で暖める方式を「対流式暖房」といいます。

対流式暖房は温風を室内に循環させるので、長く運転を続けていると室内の空気がだんだんと乾燥してしまします。また、風によってハウスダストなどが舞うため、呼吸器の敏感な人やアレルギー体質の方には注意が必要です。

これに対し、風を発生させない方式の暖房もあります。「輻射式暖房」と「伝導式暖房」です。輻射式暖房は熱を放射(輻射)させて部屋を暖めます。この方式の代表的な暖房設備・器具が床暖房やオイルヒーター、パネルヒーターです。また、伝導式暖房は体に直接熱を伝えて暖めるもので、ホットカーペットや電気毛布がこれにあたります。

輻射式暖房と伝導式暖房は、いずれも室内の空気を直接加熱しないので、エアコンのように乾燥を進めるといったことはありません。ただし、発熱するカーボンヒーターやニクロム線電気ストーブは、石油ストーブよりも火災になりやすい暖房器具となっています。実はストーブ火災の原因は、8割を電気ストーブが占めています。寝具やカーテンが触れることで火災につながるので、つけっぱなしにしないなどの注意も必要です。

このように暖房のタイプによって室内の空気の状態が違ってくるので、エアコンを使用していて乾燥が気になるような場合は、一度暖房の方法を見直してみるのも良いのではないでしょうか。
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3. 冬でも換気はしなければいけないの?

一般的には、マンションではエアコンを利用している家庭の方が多いでしょう。冬になると、外の空気が入って寒いからと言って、換気扇を止めてしまっていませんか? 換気には、人の活動によって二酸化炭素濃度の高まった空気や、風邪を引いた家族がいる時に風邪のウイルスが増えてしまった空気、ファンヒーターを併用している部屋ではファンヒーターからの排気の混じった空気など、汚れてしまった空気を新鮮な空気と入れ替える役割を果たしています。これを止めてしまうということは、汚れた空気を室内に留め、新鮮な空気の取り込みをやめてしまうということになります。短時間であれば問題ありませんが、冬の間はずっと換気口を塞いでしまうというのはやめましょう。

通常のエアコンには、換気の機能はありません。換気機能の付いたものもありますが、そもそもエアコンは、室内の空気をエアコン本体と室外機で熱交換することで温めて、または冷やして部屋に戻す仕組みになった機器です。循環させているのはあくまでも室内の空気です。

一般的な住宅に必要とされる換気量は、0.5〜0.7回/時間以上と定められています。これは、住宅全体の空気が入れ替わるのに0.5〜2時間かかるということを意味しています。そのため、マンションには別途給気口と換気扇がついており、主に換気の機能をまかなうのはこれらの設備です。冬にエアコンと加湿器を同時に運転した場合、換気扇を止めてしまうと室内を加湿しすぎてしまうことも考えられます。また、エアコンでの暖房を続け過ぎると、空気の乾燥も進んでいまします。新鮮な空気を室内に送り込むために、換気は暖房と同じぐらい重要なものなのです。また、2003年の建築基準法改正により、住宅は24時間換気とすることが義務化されました。この法改正以降に建てられたマンションは24時間換気となっているので、給気口を塞いでしまうと24時間換気を維持できないことにもなります。この法改正は、シックハウス症候群の防止のため、住宅のホルムアルデヒドの排出を目的としたもので、アレルギー症状のある方がお住まいの場合には特に重要になります。肌荒れは、室内の乾燥だけでなくシックハウス症候群によるものもあります。

近年はエアコンも進化し、換気機能や加湿機能を備えた製品も販売されています。これらの付加された機能は、専用の換気扇や加湿器には劣る場合もありますので、こうしたエアコンの換気・加湿能力の程度と自宅マンションの換気システムとを組み合わせて、最適な方法を探るのが良いでしょう。少し難しい話にもなりますので、家電量販店のメーカーの方など住宅の空調設備に詳しい方にお話を聞いてみてもいいですね。
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4. リフォームをするなら、調湿機能のある内装材を

もし、マンションの内装リフォームをする予定があるなら、「調湿機能」のある内装材を取り入れてみてはいかがでしょうか? 調湿機能とは、湿度の高い時期は余計な湿気を吸収し、乾燥した時には吸収した湿気を放出して、室内の空気中の湿度を調節する機能のことです。調湿機能のある壁材や床材で内装を仕上げれば、一年を通して室内を最適な湿度に保つことができます。そして、そのような性質を持った壁材と床材には、次のようなものがあります。

<壁材>
・珪藻土、しっくい:左官で仕上げる塗り壁が基本だが、近年は壁紙タイプの製品も。左官仕上げでは、コテづかいやくし引きによって模様を出すこともできる。
・調湿ボード:調湿機能を持たせたボード状の壁材。建材メーカーにより名称が異なる。
・調湿タイプの壁紙(クロス):和紙や布、ケナフ(植物)製の壁紙、最近では調湿性を持たせたタイプのビニルクロスもある。
・天然木の羽目板(天井や壁に張る板)

<床材>
・天然木の無垢のフローリング材、畳

調湿機能のある内装材には天然素材のものが多いですね。天然素材を取り入れた室内空間は健康的で気持ちの良いものです。中でも特に左官仕上げの塗り壁、天然木の羽目板、畳は保温性も高いといわれています。

床暖房の設置やフローリング床への変更ということになると、マンションによっては制限されることもあるので、お住まいのマンションの管理規約などをよく確認してください。

加湿器を使うことはもちろん乾燥対策になりますが、そもそも乾燥しにくい空間とはどのようなものかを考えることも大切です。また、換気についてもきちんと考えたいものです。

以上、冬の乾燥の時期を健康で快適に暮らすための空間づくりの参考になれば幸いです。

《この記事のライター》
大塚 麻里絵
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター

(2019年12月27日記事更新)

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