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マンションの給排水管の更新 給水管・排水管工事時期の目安とは

マンションの給水管・排水管は共用部分・専有部分にまたがり、見えない部分も多く、更新時期を見極めるのが困難です。給排水管の更新工事には外壁や屋根の工事とは異なる、克服すべきさまざまな問題があります。マンションの給水管・排水管の更新工事を上手く進めていくためのポイントなどを紹介します。
目次
1. 日常では見えにくいマンションの給水管・排水管の寿命と更新工事
2. においや詰まりは大きな問題に 給排水管を安心して使える快適なマンション
3. マンションの給水管・排水管 修繕を行う時期と目安
4. マンションの給水管・排水管工事を上手く行うために把握すべきポイント
日常では見えにくいマンションの給水管・排水管の寿命と更新工事

マンションは、適切に管理することで100年は住み続けられるともいわれるようになりました。しかし、住みよい環境を維持するには、普段あまり目にする機会はないものの、生活する上で欠かせない給排水管の寿命にも注意を払う必要があります。
給水管の寿命は一般的に20〜30年程度、排水管の寿命は10〜30年程度とされています。使用されている材料については、給水管では、鋼管(鋼鉄製の管)の内側を硬質塩化ビニルでコーティングした硬質塩化ビニルライニング鋼管や亜鉛メッキ鋼管などが主に用いられてきました。一方、排水管には、築年数の経過したマンションでよく使用されている鋳鉄管、亜鉛メッキ鋼管、硬質ポリ塩化ビニル管などがあり、それぞれに交換が推奨される年数があります。
●給水管
・亜鉛メッキ鋼管:約15年
・硬質塩化ビニルライニング鋼管:約15〜30年
●排水管
・亜鉛メッキ鋼管:約15〜20年
・鋳鉄管:約35〜40年
築年数が経ったマンションで多く使われている亜鉛メッキ鋼管はさびや腐食が起こりやすいといわれ、鋳鉄管はさびて詰まったり穴があいたりするリスクがあります。現在多くの排水管で使われている硬質ポリ塩化ビニル管はほかの素材よりも表面が滑らかで液体が流れやすく、腐食に強いだけでなく、軽量で扱いやすいというメリットがありますが支持金物類に多くの鉄が採用されており、錆によって破損することで勾配不良や排水障害を起こす場合があります。
なお、熱いお湯を流し続けると排水管の劣化スピードが加速すると考えられます。排水管の耐熱温度は、硬質ポリ塩化ビニル管が40℃程度、亜鉛メッキ鋼管が50℃程度となっています。
技術革新によって給排水管に使う素材も変化していますが、その一方で、築年数が経ったマンションに多く使われている給排水管の素材は、現在主流となっているものよりも耐久性が低いと想定され、そのぶん寿命が短い可能性があります。古いマンションほど点検や更新工事の重要性が高まるといえるでしょう。
においや詰まりは大きな問題に 給排水管を安心して使える快適なマンション

給排水管は生活に欠かせないもので、スムーズに水が流れるからこそ私たちは快適に暮らせているともいえます。しかし、使い続けていると給水管から出てくる水に不純物が混入したり、排水管のにおいや詰まりが気になったりすることもあります。特に排水管は、汚れが付着すると詰まりが進み、においが強くなっていきます。
そこで、給水管や排水管に異常が起こるとどのような変化が見られるかを知っておきましょう。
●給水管に問題がある状態
・赤さびの発生による赤水、朝に起こる白濁水、黄水など水の色の変化
・においを感じるようになった
・蛇口からの水量が減る、水が漏れる
●排水管に問題がある状態
・水が流れにくい
・異臭、水漏れ、害虫の発生など
なお、台所の排水管では食べ物のカスや油汚れ、浴室や洗面所では髪の毛、垢、石鹸カスの蓄積が詰まりの主な原因とされています。
マンションの給水管・排水管 修繕を行う時期と目安
マンションでは、水回りで事故が起こってしまうと下の階への影響など被害が大きくなりやすいため、給排水管が耐用年数を迎える前からメンテナンスを重視し、備えておくことが重要です。それでは、どのようなサインが更新工事を行う目安となるのでしょうか。
・漏水事故が増える
・水質が悪化し、色やにおいが気になる
・水道の水圧が弱まり、以前よりも水が出にくい
・蛇口をしめても水が止まりにくい
・排水が流れにくい
上記のような場合、給排水管の中で異常が発生している可能性が考えられます。
たとえこのような不具合がなくても、築30年以上経っている場合は放置せず、汚れを除去して詰まりを防ぐ給排水管の更新工事や延命工事の検討をおすすめします。
更新工事及び延命工事では、給水給湯を断水しての工事となります。
また、延命工事は10〜20年程度の延命にとどまるので、配管を交換するまでの一時的な対策であると心得ておきましょう。
マンションの給水管・排水管工事を上手く行うために把握すべきポイント
給排水管の更新工事には、一般的なマンションの大規模修繕工事とは異なるポイントがあります。トラブルを未然に防ぐには、しっかりとした準備が必要です。
●共用部と専有部の取り扱い
マンションの配管は、共用部分と住戸内の専有部分をまたいで設置されており、区分所有者に金銭的負担がかかると建物全体の給排水管の更新がスムーズに進まない可能性も考えられます。しかし現在は、一体的な工事として行う場合、管理規約の規定次第で修繕積立金を専有部分にも使えるようになっているため、まずは管理規約を改正するケースが増えています。
こうした規約の整備に加えて、区分所有者が専有部分の給排水管リフォームを実施済みである場合の取り扱いなどを決めておく必要もあるでしょう。
●各住戸への立ち入りが必要
給排水管は各戸に設置されており、専有部分へ立ち入らなければ工事を実施できません。居住者にスケジュール調整を依頼したり、室内の荷物を移動してもらう場合もあるため、事前に説明会を開いてすべての居住者から理解を得ておきましょう。
●断水への対応
給水管の更新工事の場合は一定の時間断水になるため、断水の日時をあらかじめ居住者に伝えておかなければなりません。また断水に数日を要したり、居住者がトイレを使いにくくなるといったケースも考慮して、仮設トイレの設置を検討したほうがよいかもしれません。
●排水規制への対応
排水立管の更新工事は、対象となる上下階全住戸の同日在宅が必要不可欠になります。在宅出来ない際の対応も検討したほうがよいかもしれません。
●内装の仕上げの復旧の内容
給排水管の工事は主に室内から行うため、原則として工事開始前に内装を撤去し、工事完了後に内装を復旧します。
そのため、内装の解体を最小限に抑えるのか、あるいは古いマンションであればこの機会に内装材をすべて新しくするのか、といった点も検討すべき事項となります。
このように、マンションの給水管・排水管工事を円滑に進めるには、工事に関する基礎知識を持ち、事前の準備をしっかり行うことが重要です。
なお、マンションの給排水管工事は建物内部での作業が中心となるため、屋内の配管更新工事であれば、大規模な足場の設置は基本的に不要です。
おわりに
給水管や排水管を良好な状態に保つことは、マンションの寿命を長くするためにとても重要です。また昨今では、経年劣化による漏水事故は保険の対象外となるケースも耳にします。
マンションでは、1戸に不具合が見つかればほかの住戸でも何らかの異常が発生している可能性があり、水漏れなどの事故が起こると複数の住戸に影響が出て、深刻な問題に発展しかねません。これといって不具合を感じていなくても、給排水管の寿命が近づいたら早めに更新工事を行い、マンションの快適性の維持や資産価値の向上につなげたいものです。
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■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら
(2025年7月7日新規掲載)
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