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居住者が負担する専有部分のオプション工事ってどんなもの?

専有 居住者

1. 大規模修繕のオプション工事とは

分譲マンションは、居住者全体で共有し管理する共用部分とそれぞれの居住者が区分所有する専有部分に分けられます。
マンションの建物や設備は年数とともに老朽化していくので、住宅としての性能や資産価値を維持するには、共用部分・専有部分ともに適切なメンテナンスや修繕が必要です。そこで、共用部分にはすべての居住者の負担によって、およそ10年から12年おきに大規模修繕工事を行うことが一般的です。

専有部分については、各区分所有者(居住者)の所有物ですから、それぞれの区分所有者が維持管理やリフォームを行うことになります。専有部分は基本的に各区分所有者がいつでも自由に変更できますが、大規模修繕のときに、個々の居住者の希望により、その居住者負担で専有部分にも工事をするケースがあります。これをオプション工事と言いますが、通常のリフォーム工事との違いや実際にどのようなことができるのか説明しましょう。

2. そもそも、専有部分って?

その前に、専有部分と共用部分の区別について確認しておきたいと思います。専有部分はコンクリートの躯体で仕切られた内側の住戸部分を指し、これ以外の部分はすべて共用部分になります。次に、専有部分と共有部分の境について見ていきましょう。

天井と壁、床を構成する躯体は共用部分になり、その躯体で囲まれた内側が各区分オーナーの所有する専有部分ですが、次のように少しまぎらわしい部分や設備があります。

・玄関ドア、インターフォン
・バルコニー(ベランダ、専用庭)
・サッシ及び窓ガラス
・パイプスペース(PS)
など

これらの部分・設備は専有部分に付随しているかのようにも思えますが、実は、共有の専用使用部分と呼ばれる共用部分です。
これに加え、外壁や屋上(屋根)、エレベーター、廊下、階段、駐車場、駐輪場、ゴミ置場などが共用部分にあたります。

3. オプション工事でこんなことができる

共用部分は、マンションの価値に大きく関わる、居住者みんなにとっての大切な資産といえる部分や設備と言えます。そのため、定期的な大規模修繕が必要とされるのです。オプション工事は、大規模修繕の工事を請け負った会社が、大規模修繕工事を施工しているときに平行して、居住者のうち希望する世帯に依頼を募り、主に共用部の専用使用している部分や区分所有者の所有物に対して施すものを言います。

その工事の内容はさまざまですが、居住者の希望のみで施工できるものと、管理組合の確認が必要なものに大別されます。なお、マンションによってはこれらの事項の区分について管理規約で定められている場合もありますので、工事を検討の際には、お住まいのマンションの管理規約を一度確認してみましょう。

<居住者の希望のみでできる工事>
・バルコニーや専用庭などに置かれた不用品の撤去・処分
・バルコニーなどに取り付けたBS・CSアンテナの脱着
・エアコン室外機の移動、ドレイン管の交換
・エアコンスリーブの部品交換
・窓サッシの補修(戸車、クレセント錠、ゴムパッキンなどの交換)
・網戸の取り替え、張り替え
・バルコニーの床置きタイルの撤去

<管理組合の確認が必要な工事>
・玄関ドアの補助錠設置、ドアスコープ、ドアクローザーなどの交換
・玄関ドア内側の塗り替え
・インターフォンの交換(個別タイプ)
・窓サッシの交換、断熱化(組合により可能な場合)
・窓ガラスの交換、断熱化(組合により可能な場合)
・バルコニーなどへの鳥よけネットの設置

給排水設備工事の大規模修繕工事を行う際は、水回りのリフォームを伴う内装工事をオプション工事として施工する場合もあります。

<専有部を含む給排水設備工事時に施工できるオプション工事>
・内装復旧に伴う仕上の種類及び範囲の変更
・住宅設備機器(キッチン・洗面台・トイレ・バス等)の交換
・その他専有部リフォーム工事

大規模修繕時のオプション工事として、以上のような工事内容が考えられますが、こちらはあくまで一例です。また、お気づきかもしれませんが、これらのうち、管理組合の確認が必要な工事は共用部分や共用部・専有部の境界に関わるものになります。

4. どうして大規模修繕のときにやるの?

こうしたオプション工事は大規模修繕を請け負った会社から提案されることが多いのですが、どうしてでしょうか?
それは、大規模修繕工事を施工する上で必要なオプション工事ももちろんありますが、大規模修繕時に同時に行う方が効率がよい場合が多いからです。

その理由の一つに「足場設置費用」があります。大規模修繕のときには、建物全体を取り囲むように足場を設置しますが、その費用は意外と高額です。そこで、この足場を使って各住戸の窓やバルコニーまわりの工事をすれば費用を抑えることができます。また、同様の工事を複数の世帯で同時に行うことで工事会社は材料費や人件費を抑えることができ、一戸あたりの費用負担を割安にすることが可能です。

費用節減効果が実感できる例として、専有部工事を伴う給排水設備工事の大規模修繕工事中のユニットバス交換工事があります。通常、給排水設備の交換に伴うユニットバスの撤去・復旧費用は大規模修繕工事範囲に含まれている場合が多く、区分所有者はオプション工事として新規のユニットバスの製品代と取り外した古いユニットバスの処分費を負担するだけで、ユニットバスを新しいものに交換することができます。一般的なユニットバス交換工事で必要になる撤去・取付け費用は個人負担ではなくなります。

その上、管理組合が協力して、多くの住戸が同時にオプション工事を申し込む場合などは、施工者に対してさらに割引交渉をしやすくなります。

このように、同時にまとめて行えることがオプション工事のメリットになりますが、通常は修繕委員会や理事会がその希望をまとめる役割をします。大規模修繕とあわせて効率よく工事を進めるには、修繕委員会や理事会は事前によく居住者と話しあって準備することが大切です。

専有 居住者

《この記事のライター》
大塚 麻里絵
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター

(2019年1月7日記事更新)

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