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マンション修繕業者の選定基準 経審(経営事項審査)とは?

経審

マンションの建物や設備は時間の経過とともに劣化が進行していくことから、定期的なメンテナンスや大規模修繕などの工事が欠かせません。もしこれらの工事を品質の悪い業者に依頼してしまうと、後々不具合からトラブルが発生することも考えられます。

また、修繕工事中から保証期間満了まで工事会社の存続が不可欠なため、財務基盤の見極めについても重要となります。今回は管理組合による修繕業者の選定ポイントについて説明するとともに、選定基準のひとつである経審(経営事項審査)についてまとめます。

目次
1. 修繕業者選定の重要性について
2. 修繕業者の選定ポイントとは?
3. 経審(経営事項審査)とは?
4. 経審(経営事項審査)の解説

1.修繕業者選定の重要性について

マンションの修繕費用は、区分所有者から毎月徴収している修繕積立金などから支払うこととなります。特に大規模修繕工事はマンションをあげての一大イベントであり、費用も一般的に一戸あたり100〜125万円※1かかるといわれています。

※1 国土交通省令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査で最も比率が高い金額で、共通仮設費及び消費税は含まない施工金額。

このように、大きな予算をかけてマンションの資産価値に関わる修繕工事を実施していく以上、修繕業者の選定はより慎重に、かつ居住者に納得性のあるものにしなければなりません。したがいまして、修繕業者の選定は、管理組合として細心の注意を払って行う重要な業務といえます。

2.修繕業者の選定ポイントとは?

それでは、具体的にどのような修繕業者を選定すればよいのでしょうか?
以下に具体的な業者選定のポイントについて説明します。

●経営状態をみる
修繕業者の選定の際、まず経営状態を調査してみましょう。これは、修繕工事の期間中から保証期間の満了まで、会社が存続していることが必須だからです。
もし、経営状態が悪い施工業者に依頼して倒産するようなことになれば、将来的な保証やアフター対応の面で、大きな問題が生じる可能性が十分に考えられます。
経営状態を調査する際は、帝国データバンクなどの企業信用調査会社を活用すると、業歴や資産状況など項目ごとに評価されるため、この評点を見れば優良な業者であるか判断できるのですが、管理組合の特性上、情報を得るのは難しそうです。
そこで、後述する経審(経営事項審査)で評価をしてみては如何でしょうか?

●施工実績をみる
マンションの施工実績を確認しておくことも重要なポイントです。修繕工事は居住者が入居している状態で工事を実施するため、工事の進め方にノウハウがないと入居者との間でトラブルが生じる可能性があります。
施工実績については、施工業者選定のヒアリングで詳細に確認するほか、施工業者がホームページを開設している場合は、マンションの施工実績が豊富かどうか事前に確認しておきましょう。

●会社の規模をみる
施工業者の会社規模はもちろん大きいに越したことはありません。業者の財務基盤を見極めるうえで、会社の規模が大きいほど安心感が得られます。

●ヒアリングやプレゼンテーションで聞く
候補施工業者を複数選定して理事会や修繕委員会に出席してもらい、工事の進め方、取組み方や施工の留意点等を確認します。
特に工事の進め方では、仮設計画や安全対策などについて確認し、アピール面では例えば工事費用の合理化対策や社員及び作業員の教育を徹底しているなど、オリジナルな内容について確認します。

●現場管理者の現場対応力や人柄をみる
修繕工事を担当する現場管理者の対応力や人柄も、工事を無事に終わらせるための大きなキーポイントになります。工事の技術面はもちろん、特に居住者への配慮ができる現場管理者に担当してもらうことが重要です。
どんな工事にも騒音、振動、臭いなどの問題は避けられません。その際、現場管理者が居住者とコミュニケーションをしっかり取ることができればクレームやトラブルが少なくなり、工事をスムーズに進めることができるでしょう。

●保証・アフターフォローは確実か
保証やアフターフォローの内容は、工事後の維持管理コストを考えるうえでも非常に重要なポイントとなります。例えば、大規模修繕工事では、防水や塗装などに5〜10年の保証が付けられます。また防水工事の場合は、トップコートをやりかえることを条件に保証を付けるような場合もあります。

完成後にトラブルが発生するケースもあります。しかし、トラブル発生時にすぐに対応しなかったり、後回しにしたりする業者もおり、最悪のケースでは業者が倒産し、保証が機能せず泣き寝入りする場合もあります。
ヒアリングやプレゼンの際には、保証やアフターフォロー体制などのチェックは、くれぐれも忘れずに行うようにしましょう。

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3. 経審(経営事項審査)とは?

経審とは「経営事項審査」の略で、公共工事への入札に参加を希望する建設企業が受けなければならない審査のことをいいます。

●経審(経営事項審査)を実施する理由
経審は以下のような理由から実施されます。

・公共工事は税金で賄うため、慎重な発注が求められるため
・官公庁は多くの業者の中から規模や業種にあった工事を発注するので、客観的な評価が必要となるため
・経営状態が悪い業者が工事途中に倒産するリスクを回避するため
・技術不足や経験不足による施工不良をなくすため

4.経審(経営事項審査)の解説

経審結果通知書には、6つの数値が記載されています。最も大事な数値は総合評定値(P)の欄にある数値です。この総合評定値(P)は、一般には「経審の点数」とか「P点」と呼ばれています。

経審は建設業許可業種ごとに受けることができ、P点もその業種ごとに点数が付与される仕組みになっています。このP点は、入札参加登録においては客観点数として格付けのベースになったり、入札時に「入札できるのは○○点以上の業者のみ」という縛りを設けたりします。

●総合評点Pとは
経営事項審査では、建設業許可業種区分ごとに、総合評点Pで評価します。
総合評定値P点=0.25(X1)+0.15(X2)+0.20(Y)+0.25(Z)+0.15(W)
X1=完成工事高、X2=自己資本額及び平均利益額、Y=経営状況、Z=技術職員数及び元請完成工事高、W=その他審査項目(社会性等)となります。
高い数値になる方が、総合的に優れた会社になります。

●経営状況評点Yとは
経営状況評点(Y)は、経審(経営事項審査)のうち経営状況を審査する評点です。
「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」「絶対的力量」の4つについて、それぞれ2指標ずつ合計8指標から成り立っています。
高い数値になる方が、優れた財務体質の会社になります。

例えば、マンションや公共施設など大規模な工事を実施する場合に、経審の審査結果が業者選定の条件としてあげられる場合があります。

経審

修繕工事をスムーズに、また高い品質で実施していくために、できるだけ優秀な修繕業者を選定することは管理組合の重要な業務のひとつです。
それには「幅広い目」をもって、「経営状態」「施工実績」「会社規模」「現場対応力」「ヒアリング・プレゼンテーション」などで会社を判断します。そして、「保証・アフターフォロー」が確実かどうかを確認することが必要となります。

また、比較的大きい工事の場合の選定基準として、経審の結果も加えることができることも、これを機にぜひ覚えておきましょう。
この記事を参考に、優秀な業者の選定や、大切な修繕工事を最後まで円満に実施できれば幸いです。

■あわせてお読みください。
・マンション大規模修繕の業者選定方法とは? 相見積もりを読み解くポイント
・マンション大規模修繕、施工会社はどう選ぶ?
・マンション管理会社はどう選ぶ? その見きわめポイントは?


■この記事のライター
吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2024年1月22日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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