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マンション管理の3つの形態とは? それぞれのメリットとデメリットについて

マンション管理

マンションは集合住宅ですので、戸建て住宅とは異なり共用して使用する部分が多くあります。集まって住むためには、ルール作りとそれに従ったマンションの運営が必要です。こうしたマンション運営は、区分所有者によって構成される管理組合が自ら行わなければなりません。しかしながら、マンション管理の業務内容が広範囲にわたることや、マンション管理に関する法律、設備なども含めた建築に関する専門知識が必要となることから、実際には管理会社にその一部もしくは全てを業務委託する事例が多く見られます。

この記事を読まれている方で、分譲マンションにお住まいの方は、ご自身のマンションがどのような方法で管理・運営されているかご存じでしょうか。もしご存じ無い場合や、これからマンションを購入しようとお考えの方に向けて、今回はマンション管理の3つの形態である「全部委託」「一部委託」「自主管理」の内容と、それぞれのメリット・デメリットについてまとめます。

目次
1. マンション管理の3形態
2. 全部委託のメリット・デメリット
3. 一部委託のメリット・デメリット
4. 自主管理のメリット・デメリット
5. まとめ

マンション管理の3形態

マンションの管理は大きく3つに分類されます。管理会社に管理委託する場合は、委託する側の管理組合と受託する側の管理会社との間で契約を交わし、管理会社が業務をサポートします。まずは管理組合と管理会社の関係について見ていきましょう。

●管理組合と管理会社の関係
管理組合は、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)に基づき区分所有者によって構成される団体で、マンションの建物や敷地、附属施設の維持管理などの業務をおこないます。しかし、その業務は多岐にわたり専門知識も必要となるので、管理会社に業務委託しているのが一般的です。
ただし、管理の主体はあくまで管理組合です。そこで、管理会社はプロの立場から管理組合に支援とアドバイスをおこなう役割を担うこととなります。

●全部委託/一部委託/自主管理
マンション管理は、管理組合が管理会社に業務委託する「全部委託」と「一部委託」の2つと、管理組合が自ら全ての管理をおこなう「自主管理」の3つの形態に分類されます。

・全部委託
文字どおり、全ての管理業務(事務管理業務、管理員業務、清掃業務、建物・設備管理業務)を管理会社に委託する形態をいいます。新築マンションでは、分譲会社の関連会社が管理会社になっていることが多いため、管理サービスもセットになっている傾向があります。
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」(以下、マンション総合調査)によれば、マンション全体の74.1%が全部委託となっており、約4分の3のマンションが全部委託を採用していることがわかります。
国土交通省 平成30年度マンション総合調査結果

・一部委託
業務の一部を管理会社に委託して、その他の業務は管理組合が直接おこなう形態をいいます。例えば、事務管理業務(管理費や修繕積立金などの収納、出納などの会計業務や長期修繕計画の作成など)は管理組合がおこない、その他の業務、例えば、管理員業務、清掃員業務、設備メンテナンス業務などは管理会社に委託するような形態です。
マンション総合調査によれば、マンション全体の13.3%となっています。

・自主管理
管理組合が全ての業務を直接おこなう形態で、比較的古い公団住宅や地方住宅供給公社によるマンションに見られます。
上記調査によれば、マンション全体の6.8%となっています。(全部委託、一部委託、自主管理の合計が100%にならないのは、不明等の回答があるため)

マンション管理

全部委託のメリット・デメリット

メリット
・業務を全面的に管理会社に委託できるため、管理組合の負担を大幅に軽くすることができます。
・設備の故障や事故発生などの緊急時には、管理会社が迅速に対応してくれます。
・管理会社から、様々なアドバイスや新しいサービスの提案を受けることができます。

デメリット
・管理会社の手数料が上乗せされるので、その他の方式と比較すると、どうしても委託費用の部分が大きくなります。
・全ての業務を管理会社に委託していると、管理組合や組合員個々の管理に対する意識が希薄となる傾向があります。

一部委託のメリット・デメリット

メリット
・管理会社等から相見積もりをとって比較検討し、費用が安い会社に業務の一部を発注することで委託費用を節約することができます。
・全てを管理会社に任せるのではなく、業務の一部を自分たちが考えて管理していくので、管理に対する意識が高まり、資産価値を向上させる取組みにもつながりやすいことがあげられます。

デメリット
・一部の業務を自分たちでおこなうため、どうしても管理組合の労力が増えることになります。このことから、理事を積極的にやろうとする人が減って、業務の引き継ぎも困難になってしまいます。
・理事の個人的な能力への依存度が高まることから、他の人へ交代ができないことにもつながります。さらには、理事と業者との間で癒着が生まれてしまう可能性もあります。また、癒着などとは全く無縁で理事会の運営に長年尽力してきた方でも、体制を一見しただけでは癒着は無いという実態が分かりにくい場合があります。

自主管理のメリット・デメリット

自主管理のメリットとデメリットは、基本的には一部委託と同じ内容になります。ただし、管理組合の労力は一部委託よりもさらに増え、難易度も高まることになります。このことから、理事への個人的な能力への依存度は、いっそう高まることになるでしょう。自主管理の場合は、時間をかけて管理全体の仕組みを確立しないと、永年にわたって継続していくことは、かなり困難であるといえるでしょう。自主管理を続けられているマンションは、管理組合運営が非常にしっかりして安心な場合もある反面、そうした管理体制をいつまで続けられるのかは不透明という面もあります。

マンション管理

まとめ

マンション管理の3つの管理形態には、それぞれにメリットとデメリットがありますので、管理組合として最もニーズに合っている管理形態を選択することが重要となるでしょう。しかし、管理形態は新築マンションの入居時に既に決まっており、何か問題が起きて初めて別の形態に変更した、というマンションが多いのが実情のようです。特に、規模の大きなマンションほど、様々な意見が集まりやすく、マンション管理方法の根幹である管理形態を変更することは非常に難しいものです。

昨今、マンションは、居住者の高齢化をはじめ、建物の高経年化によるマンションの建て替えなど数多くの問題を抱えています。また、最近のマンションは、高層化、大規模化が進んでいることから、今後のマンション管理は、ますます高度化、複雑化していく傾向があります。
このような状況を背景に、今、注目されつつあるのが「第三者管理方式」です。これにつきましては、また別の機会にご紹介させていただきます。
時代の変化とともにマンションを取り巻く環境も大きく変わりつつあり、それに伴い、マンションの管理形態も少しずつ変化が生じてきているのが現状です。
時代の移り変わりはありますが、何よりも「自分たちの財産は自分たちで守る」という強い意識をもつことこそがマンション管理の基本であり、一番重要なポイントであるといえるでしょう。

■あわせてお読みください。
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■この記事のライター
大塚 麻里絵
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築士・一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2022年12月26日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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